2006年1月16日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

「人間らしい労働」を青年に

44000人に「権利手帳」

道・県知事への要請さらに


 北海道、東北の高校教職員組合(高教組)が昨年十月から十二月にかけて、「高校生・青年の雇用、働くルールの確立に向けて」緊急対策を講じるよう各知事に要請するなどのキャラバン行動に取り組みました。このキャラバンを担当した伊藤英敏・道高教組委員長と、山下正浩・同中央執行委員=高校生・大学生・青年の就職難を考える連絡会(北海道就職連絡会)事務局長=に聞きました。(北海道・土田浩一)


■要請行動した高教組

■北海道、東北地方で

 ―キャラバンは、どうでしたか。

 伊藤 各地の労働者の声を聞くことに力をいれました。「休みがなく長時間過密労働など会社いいなりになっている」「仕事があるだけましだ」などの深刻な状況が出されました。

 不況対策の「スタートワーキングサポート事業」が打ち切られ、上乗せしていた自治体も補助を打ちきるところが出てきています。キャラバンでは、国が打ちきっても継続してほしいと道、県に申し入れをしてきました。

 ―今年度は全国的に雇用状況は回復傾向にあるといわれていますが、北海道ではいかがですか。

 伊藤 道外からの求人数は増えていますが(昨年十一月末現在、対前年比27・6%増)、道内では例年なみ(同3・9%増)です。

 若者の雇用は、数年前から不安定雇用が増えています。私たちは各企業などに対し、正規の雇用を増やすよう求めていますが、北海道労働局では、正規だけでなく、パートや派遣労働もあると変わってきています。

 ―道内での高校新規卒業者の就職内定状況は。

 山下 道内の昨年春の就職内定状況は、就職者数七千六百六十四人、就職率91・8%(道労働局四月末調査)で、六百八十一人が希望しながら就職できませんでした。一昨年九月段階では、一万九百九十二人が就職を希望しています。この間、二千六百四十七人が就職をあきらめていて、この数字を含めると内定率は69・7%まで落ち込みます。「進学も就職も希望しない(できない)」まま卒業し、その多くが「フリーター」になっています。

 昨年九月末で、求職者数一万六百六十五人に対し、求人数七千四百八十一人、求人倍率0・70倍となっていて、今年度もきびしい状況が続いています。

 伊藤 高卒者は離職率が高く、三年以内にやめる割合が高くなっています。どうしてやめるのかというと、本来働きたいと思っていたところで働いていないということもあると思います。問題意識としてもっているのは、若者が社会に対するあきらめというのがあると思っています。

 企業が高卒者に望むことと、生徒が就職するにあたって望むこととのギャップが大きすぎると思っています。会社はあいさつができる、服装がきちんとしている、上司の言うことは聞くということなどを求めています。学校生活で自由にものを言っていて、学校からは学力を評価されている生徒でも、上から押しつけられ、自由にものが言えなくなればいやになります。このギャップをいかに埋めるかです。

 ―高教組として高校生の雇用問題でとりくんでいることは。

 山下 二〇〇三年七月、道高教組、道労連などの呼びかけで、高校生・大学生・青年の就職難を考える連絡会(略称・就職連絡会)が結成され、シンポジウムや学習会、「高校生の就職110番」、署名・宣伝行動、東北・北海道知事要請キャラバンなどを取り組んできました。

 連絡会で作製したパンフ「ディーセントワーク(人間らしい労働)」(社会人になるあなたへ贈る権利手帳)を、道内の全高校の校長あてに卒業生分を送っています。三年目になり、これまで約四万四千人に渡ったことになります。多くの学校から、ホームルームや授業で活用しているという報告があります。

 ―今後、どのような取り組みをすすめていきますか。

 伊藤 大企業の横暴が目にあまるなか、「働くとは何か」の学校での教育が必要ではないかと思います。人から言われるのではなく、自分は労働者の尊厳を持っていて、憲法や労働法で保障されているということを身につけてもらうことです。それがILOが言っている「ディーセントワーク・働きがいのある人間的な仕事」です。これを身につけてもらうのが教育の根幹ではないかと思います。

図

■就職難打開へ共産党

 日本共産党は各地で、深刻な青年の就職難打開のため活動しています。

 徳島県委員会は「若者の雇用を確保するためのアンケート」で寄せられた声をもとに活動。岩手県委員会は県知事へ、二〇〇六年度予算要望のなかで「青年の雇用対策」として▽新規採用を抑制している大企業へ青年を正社員に採用するよう働きかける▽三十人学級(当面小学校一、二年)にして教員を増やす―などを申し入れました。

 島根県出雲市では市議会で、二十五歳の大国陽介議員が党青年支部、民青同盟と取り組んだ雇用問題を取り上げ、「若年者就業支援センター」設置に貢献しています。


■高校の実態は

■日高教、全国私教連が調査

 日本高等学校教職員組合(日高教)と全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)が、昨年十二月に「二〇〇五年度高校生の就職実態調査のまとめ」を発表しました。そのなかで記している学校現場の声のいくつかを紹介します。

■求人少なく専門生かせず

■請負、派遣、パチンコ目立つ

 <神奈川> インターネット(高卒就職Webサービス)を利用して、新規の求人を開拓した生徒がいる。

 進路担当は、授業軽減はあるものの、学部・学校行事などの参加により、職場開拓ができないことが多い。専任制を考えたいが、教員数に無理がある。教員増が望まれる。

 <富山> 農業科で、農業関係の求人が少なく、やむをえず、関連でない製造業に就職した生徒がいた。

 <長野> 就職難を背景に、(家族の職業、女子に「彼氏がいるか」など)面接での不適切な質問の事例がみられた。

 学んだ専門性を生かせない。とくに建築科の求人が少ない。

 <愛知> 契約社員、派遣社員、業務請負が急増しており、就職を希望する生徒にとって展望は明るくない。

 求人数は増加しているが、男子に対する求人が多く、女子は少ない。男女雇用機会均等法があるが、実際は難しい。

 <滋賀> 女子生徒の希望する事務職や販売職の求人がほとんどない。アミューズメント業界(パチンコ、スロットなど)や請負、派遣の求人が目立って増えている。

 <山口> 女子の事務系職種がほとんどない状態。女子は相変わらず就職難。

 <長崎> 求人数は増えているが、請負業やパチンコ店が多く、事務や販売が少ない。希望に合う求人がなく、応募していない生徒もいる。


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