2006年1月16日(月)「しんぶん赤旗」

2006世界の表情

米国

核不拡散問題

二重基準に批判新た


 ブッシュ米政権は昨年、自国の核軍縮義務は棚上げして核攻撃能力の向上を図る一方で、核不拡散のキャンペーンを強めました。といっても、六カ国協議が行われている北朝鮮問題を除くと、米国が中心的に非難したのはイランのみ。核保有国のイスラエル、パキスタン、インドは不問です。それどころかインドには七月、原発など核エネルギー協力を約束しています。(小玉純一)


 「イスラエルの核の容認、激励は米国の恥ずべき二重基準の実践だ。特にイラク侵略を正当化した大量破壊兵器の存在証明に失敗したあとだけに、なおさら恥ずべきものだ」―エジプト紙アル・アハラム社説は昨秋、こう米国を批判しました。中東で唯一の核兵器保有国イスラエルを援助する一方で、イラクには証拠もない大量破壊兵器所有を理由に侵略するのは道理がない―。中東の人々の気持ちです。

■戦略的重要国に

 パキスタンとインドも、米国が問題にしない核兵器保有国です。

 米国が敵視するイランに核兵器開発の関連物資が渡ったのは、パキスタンの核兵器開発に従事したカーン博士の関係だと指摘されています。しかし米国はパキスタンを追及していません。一九九八年にはパキスタンの核実験を非難しました。ところが、二〇〇一年のアフガニスタン戦争で同国を戦略的重要国として以後は、その核兵器保有を事実上容認してきました。

 インドは九八年、パキスタンに先んじて核実験をし、核兵器保有を宣言しました。米国はインドの核実験を非難してみたものの、その後は大国インドとの関係を重視し批判を控えただけでなく、逆に協力関係を追求しました。

 〇五年七月には、核不拡散条約(NPT)非加盟のインドを「先端核技術をもつ責任ある国」と呼び、核兵器保有国として公的に認知。原発など核エネルギー分野の協力を合意しました。これは、NPTで核保有国と公認された米ロ英仏中五カ国に次ぎ、インドを六番目の「核クラブ」メンバーとして扱い、NPT体制を骨抜きにする動きでした。

 これは直ちに国際舞台で問題となりました。軍縮問題を討議する国連第一委員会(十月開催)で、メキシコ代表は米印両国を名指しし、「NPTの目的を考慮していない」と批判しました。

■元政府高官から

 米国の対印核協力については、米国内でも「イランに核開発をやめさせるのが困難になる」(元政府高官)など批判の声が出ています。対印協力にはNPT非加盟国への協力を禁じた米国内法の改定が必要ですが、議会でも、この改定への反対意見があります。

 核兵器国が核兵器に国家安全保障上の意味があるとするなら、非核兵器国が核兵器を保有するのを禁じる道理がありません。インドのサラン外務次官でさえ「核不拡散の最も効果的手段は、信頼性があり期間を区切った核兵器を廃絶する約束だ」と述べています。

(このシリーズは今回で終わります)

▼核不拡散条約(NPT) 米ソ英三カ国が一九六八年に調印し七〇年に発効した条約で、二〇〇五年の再検討会議時で百八十八カ国が加盟。非加盟はイスラエル、インド、パキスタン。北朝鮮が脱退表明しています。米ロ英仏中五カ国を核兵器国と認める一方で、その他の国は非核兵器国として核兵器保有を禁じた差別的条約。核兵器国に核軍縮を求め、その他の国には原子力の平和利用の権利を認めています。


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