2006年1月10日(火)「しんぶん赤旗」

沖縄・名護市長選の大争点

米軍新基地「ノー」を

政府言明とも矛盾 最悪の計画


 目前に迫った沖縄県名護市長選(15日告示、22日投票)。最大の争点は、米軍キャンプ・シュワブ沿岸部への海兵隊新基地建設計画にきっぱりと「ノー」の審判を下せるかどうかです。今回の計画(沿岸案)は、昨年10月に日米両政府が合意した在日米軍再編の共同文書に盛り込まれたもの。これまでの日本政府の言明とも矛盾する最悪の計画です。


■住宅地接近 事故・爆音も

 建設位置は、かつての辺野古沖案より住宅地に接近。このため、墜落など事故の危険や爆音被害の増大は必至です。

 稲嶺恵一沖縄県知事は、辺野古沖案の建設位置を決める際、「航空機騒音等の生活環境の保全を図る観点から、リーフ(サンゴ礁の浅瀬)内は厳しい」と主張。

 これを受けた政府は、建設位置を「地元の意向を踏まえたリーフ上」(尾身幸次沖縄担当相=当時)に決定しました。このため、辺野古の住宅地から新基地の滑走路までは約二・二キロ離れていました。

 それでも、名護市の岸本建男市長は「地元のみなさんはできるだけ遠いところにという意見が圧倒的で、地元の意向に沿えなかった」(〇一年十二月二十七日の会見)と述べていました。

 ところが今度の沿岸案では、防衛庁のイメージ図で試算すると、住宅地との距離は約一・二キロしかありません。「地元の意向」にますます逆らう計画です。

 防衛施設庁は〇一年三月、辺野古沖で米軍ヘリを実際に飛ばしての騒音を測定しています。沿岸案とほぼ同じ約一・一キロと約一・四キロ離れた飛行コースでは、生活環境保全や健康の上で望ましいとされる環境省の基準(住宅地の昼間で五十五デシベル)をはるかに超える八十三デシベルもの爆音でした。

 しかも、周辺の住宅の真上が、基地を離着陸する米軍機の飛行コースになるため、政府は住民の集団移転を検討していると報じられています(沖縄タイムス、七日付)。

■ジュゴンのえさ場を壊す

 キャンプ・シュワブ周辺は、国の天然記念物ジュゴンが生息するなど、豊かな自然に恵まれています。

 防衛庁の守屋武昌事務次官は、辺野古沖案が破たんに追い込まれたことについて「きれいな海を壊さないでほしいという根強い抵抗にあった。サンゴ礁のあるところ、ジュゴンの生息地である場所に飛行場をつくるのは難しい」(昨年十月二十四日の記者会見)と述べていました。

 ところが沿岸案は、ジュゴンのえさ場であり、魚の産卵・生育場所である藻場を直撃します。

 キャンプ・シュワブ内の建設予定地では、大又(ウフマタ)遺跡など約千五百―二千年前とみられる遺跡も見つかっています。基地が建設されれば、貴重な文化財まで壊されることになります。

 名護市は、沿岸案の建設位置を沖側に八百メートル移す案を政府に提示したとも報じられています(琉球新報七日付夕刊)。これでは、基地を丸ごと海上に建設することになり、いっそう大きな環境破壊をもたらすことになります。基地の位置を多少変えたとしても、問題は何も変わりません。

■15年どころか 恒久化に

 稲嶺知事と岸本市長は、辺野古沖案を受け入れた際、その条件に「十五年使用期限」をあげました。

 稲嶺知事は「十五年使用期限」を求める理由について「基地の固定化を避け、基地の整理縮小を求める県民感情」と説明。政府は「使用期限問題の背景に、平和を願う沖縄県民の切なるお気持ちがあり、…重く受け止める」(川口順子外相=当時)「平和を願う県民のお気持ちに少しでも応えられるよう、全力を尽くす」(中谷元防衛庁長官=当時)と述べていました。

 ところが、沿岸案を決めた日米両政府の合意文書は、沖縄の海兵隊について「決定的に重要な同盟の能力」と位置付け、「定期的な訓練、演習及び作戦」のために、普天間基地に代わる新基地は「沖縄県内に設けられなければならない」と明記しました。

 このため政府は、今回の沿岸案には「十五年」どころか、撤去期限を設定する考え方そのものが含まれていないと明言しています(別項)。

 これは、永久に基地を沖縄に縛り付けておこうというもの。“基地のない平和な島を”という「県民の総意」に真っ向から逆らう計画です。

■衆院イラク特別委員会、2005年10月28日より

日本共産党の赤嶺政賢衆院議員 (沿岸案には)期限がくれば撤去するという考え方は入っているか。

防衛庁の大古和雄防衛局長 今回の日米合意に、そのような考えは含まれておりません。

図

■きっぱり反対 むねひろさん

 日本共産党、社会大衆党、社民党、民主党が推薦し、幅広い市民団体、労働組合が擁立する我喜屋(がきや)むねひろ候補(59)(元市議会議長)は「名護市に新しい基地建設を受け入れる余地はない」と主張し、米軍新基地建設への反対をきっぱり表明。「生命と尊厳を守るため『島ぐるみ』で日米両政府に向き合う」と、県民の団結を重視する立場から“島ぐるみ”のたたかいを訴えています。

 一方、岸本建男市長の後継候補の島袋吉和候補(59)は、沿岸案を押しつけようとしている政府・自民党がバックアップ。政府と岸本市長との協議の「推移を見て進める」(琉球新報、昨年十二月四日付)と述べ、受け入れに含みを残しています。

 ▼シュワブ沿岸部への新基地建設計画 米海兵隊の普天間基地に代わる最新鋭航空基地を、シュワブ兵舎地区を中心に、大浦湾と辺野古沖の浅瀬側に突き出すL字型で建設するというもの。全長は護岸を除き1800メートル。総面積は、東京ドーム21個分にあたる約100ヘクタールに及びます。

 1999年に日本政府は、名護市辺野古沖への建設計画を決定したものの、県民・市民の根強い反対を受け、計画は破たん。ところが日米両政府は昨年10月、在日米軍再編についての協議において、シュワブ沿岸案で合意。沖縄県と名護市に、計画の受け入れを迫っています。


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