2006年1月8日(日)「しんぶん赤旗」
ヤミ金融巧妙手口で再び増
弁護士ら「警察対応の改善必要」
脅迫行為のような不法で悪質な取り立てをするヤミ金融業者。被害者や弁護士などでつくる全国ヤミ金融対策会議による警察への告発件数は、再び増加傾向に転じています。同会議がヤミ金業者根絶のため強く求めるのは「警察の徹底した摘発と被害者への対応の改善」です。
■執よう脅迫、年利7449%にも
「殺す」「放火する」――。埼玉県内の男性被害者(36)の周辺に昨年十―十一月、こんな脅迫文がばらまかれました。住んでいたアパートの玄関に張られたほか、近所のポストに投かんされました。勤め先や離婚した元妻の実家にもファクスで送りつけられ、元妻を暴行するという内容もありました。男性は二万円借りて十日後、四万五千円の返済を迫られました。二万円が利息、五千円は手数料といいます。年利3650%。十日で一割の利息をつける「トイチ」などはるかに超える十日で十割の利息です。ヤミ金融の業者は、深夜にも、アパートを訪れ大声を出すなどしました。男性はアパートで生活できなくなり、違う場所に避難しています。
別の女性は、七千円を借りたところ一週間で二万円の返済を迫られました。年利7449%という超高金利。これだけで出資法違反ですが、ヤミ金業者は女性の夫の会社に、「いやがらせ電話」を一日に二十回ほどかけてきたといいます。
十二月十四日に全国ヤミ金融対策会議が行ったヤミ金業者の一斉集団告発は、全国でのべ四千六百件超。二〇〇三年十一月の告発以降、ヤミ金融対策法が施行されるなどのなか、減少してきた告発件数は増加に転じました。
■姿を隠し営業
同会議代表幹事の宇都宮健児弁護士は、「対策法ができいったん減ったように見えたが、根絶されなかった」と指摘。(1)特定の事務所を持たない(2)「即日融資」「自己破産者OK」などの文句と携帯電話の番号を書いたチラシをガードレールや電柱などに張って宣伝する(3)返済には他人名義の口座を使用する――などの手口で姿を隠し営業しているといいます。
ヤミ金融の根絶を求める被害者や弁護士から、依然として聞かれるのは警察の対応の問題です。
十二月二十九日午後一時ごろ。ヤミ金被害者でつくる「夜明けの会」(埼玉県)の事務所に警察に被害届を出そうとした女性からの電話が鳴りました。「(警察に)『返済していないんでしょ。どうにもならないなあ』と言われた」。電話を受けた同会の吉田豊樹事務局次長は、女性に応対した警察官を電話口に呼び出しました。「出資法違反です。被害者に『お金払え』なんていってないですよね」とクギを刺します。
「ヤミ金業者が支出した金は貸金に名を借りた違法行為の手段にすぎない」。ヤミ金業者に対しては元本を含め返済不要という判決も今年二月に札幌高裁で出ています。
吉田さんは「返済したお金はまた、不法な行為に使われます。ヤミ金業者には絶対に返済してはいけない」と強調します。
■「返さないと」
夜明けの会によると、ヤミ金業者が自宅で騒いだため被害者が通報すると、駆けつけた警察官が「借りたんでしょ。返さないと」と話し、和解書を交わすよう促されたこともあるといいます。冒頭の男性被害者は警察に被害届を出しに行くと「人的な被害がないから、対応できない」と言われました。同じ埼玉県内でも、「管轄署によって対応が違う」のが現実です。
宇都宮弁護士は「私たちは直接逮捕できない。警察の徹底した摘発と被害者への対応が大切になってくる」と改善を求めました。

