2006年1月7日(土)「しんぶん赤旗」
主張
女性殺害事件
米軍人の悪逆無道に抗議する
米空母「キティホーク」乗組員による日本人女性殺害事件は、日本国民に衝撃を与えています。昨年十二月、同空母の女性乗組員がワゴン車を運転中、三人の児童をひいてそのまま逃げるという悪質なひき逃げ事件をおこしたばかりです。米軍への怒りは全国に広がっています。
一連の米兵による凶悪犯罪は、米軍こそ日本人の安全を脅かす元凶だということを示しています。米軍を日本に駐留させつづけていいのか、根本から問い直すときです。
■残忍な手口
殺害現場は、米海軍横須賀基地(神奈川県)からそう遠くない京浜急行横須賀中央駅近くの商店街の裏通りです。被害者は、朝六時半ごろ通勤途中で、米兵から雑居ビルのなかに引き込まれ、暴行をうけました。頭や顔から血を流し、肝臓が破裂したため死亡しました。着衣も乱れていたといいます。バッグも奪われました。米兵は、早朝で人通りがないことを見定め、待ち伏せしたうえで襲ったことは間違いありません。きわめて残忍な手口の犯行です。在日米海軍司令部は、女性殺害に関与した米兵を拘束している事実を認めています。
商店街を利用する周辺の人たちは、「恐ろしさと怒りを感じる」「仕事が終わるのは深夜零時過ぎ。歩くのも怖い」と語っています。市民の切実な声をうけとめるべきです。
沖縄県民は、毎日、米軍の恐怖と隣り合わせの生活を強いられています。米軍機の墜落や騒音、環境被害、犯罪の多発で筆舌につくしがたい苦しみを受けています。米軍犯罪は日常茶飯事です。同時に、本土の基地あるところも深刻です。
一九九〇年から二〇〇三年の十四年間の米軍人による刑法犯は、総数千四百八十件、うち沖縄は六百五十六件です。凶悪犯(殺人、強盗、放火、婦女暴行)は、百七件、うち沖縄は五十一件です。
米軍は、米兵の犯罪に日本国民が反発をしたときには、「遺憾」「自粛」を連発しますが、犯罪はなくなっていません。米兵たちが戦闘訓練ですさんだ気持ちのはけ口として日本を見ているからです。今回の事件も、「キティホーク」が十一月の日米共同演習を終え、横須賀港に入港したあとのことです。
さらに、日本政府・警察がいまだに、米軍にたいして、米軍被疑者を日本側に引き渡すよう要求もしていないことは重大です。日米地位協定が、「被疑者の拘禁は、…日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行う」(第一七条)と規定しているため「自粛」しているのです。
しかし、刑事裁判権に関する日米合同委員会合意では、「日本国の当局が特に当該被疑者の身柄を確保する必要があると認めて要請した場合には、その者の身柄は日本国の当局に引き渡される」と明記しています。今回の女性殺害事件は、「特に身柄を確保する必要がある」場合であり、日本政府が、米軍につよく要請すべきものです。
日米同盟を優先させ、日本国民の安全確保を二の次にするような態度をとるべきではありません。
■米軍撤退こそ安全策
日本国民が日本国内で安心して歩くこともできないこと自体が異常です。小泉政権は、米軍のおかげで日本の平和が保たれているかのようにいいますが、米軍こそ日本の平和を脅かし、国民の安心・安全を奪う元凶となっているのが実際です。
日米安保条約を廃棄し、米軍撤退をめざすことが安全への道です。