2005年12月31日(土)「しんぶん赤旗」
イラク 選挙めぐり混乱続く
国際監視団が現地調査へ
【カイロ=小泉大介】十五日に実施されたイラク国民議会選挙の中間結果発表をめぐり、不正があったとして結果の見直しや再選挙を要求しているイスラム教スンニ派、世俗派勢力と、これに反対するイスラム教シーア派、クルド人勢力との対立が続いています。選挙の最終結果発表と正式政府樹立の見通しは依然として立っていません。不正告発にもとづき国際イラク選挙監視団(IMIE)が二十九日、調査団を派遣することを決定しました。
イラク選挙管理委員会が十九日から二十日にかけて発表した中間結果で、移行政府与党のシーア派政党連合の「統一イラク同盟」は地盤の南部での圧倒的優勢に加え、首都バグダッドでも約六割を獲得。クルド人政党連合の「クルド同盟」も北部で多数を得票し、全体でも二位を確保する勢いです。
野党であるスンニ派、世俗派両勢力は、選挙で千五百件にのぼる不正があったと反発し、全国各地で数千人規模のデモを断続的に行いました。現地で選挙支援する国連高官が二十八日、選挙はおおむね公平だったとし、「再選挙要求に正当性は見られない」と表明して以降も反発はおさまっていません。
このような状況で、カナダ、英国、インドネシアなど七カ国を中心に組織するIMIEは二十九日、アラブ連盟代表、カナダの議会人、欧州の研究者からなる調査団を派遣し、実態調査にあたることを決定。イラク選管から招待があり次第現地入りする予定です。
一方、「統一イラク同盟」の中心組織、イラク・イスラム革命最高評議会の指導者ハキム師は二十七日以降、北部地域を訪問しクルド人指導者と相次ぎ会談。同師は二十九日にタラバニ大統領(クルド人)と会談した後、「新政府に他勢力を加える可能性について協議した」と語りました。
タラバニ大統領らは、混乱収拾のため、スンニ派、世俗派勢力と大連立政府樹立のための話し合いを行うことも呼びかけています。しかし、選挙の不正を主張する勢力は現在のところ、選挙結果の調査と見直しを連立協議の前提とする立場を崩していません。
世俗派政党連合「イラク国民リスト」を率いるアラウィ前首相は、二十九日付アラブ紙で「国民統一政府」樹立に向けた話し合いの用意はあるものの、いまは国連のアナン事務総長や安保理常任理事国あてに送った異議申し立てにたいする返答を待っている段階だとのべました。
スンニ派政党連合「イラク合意戦線」の幹部、アルアーニ氏も二十九日、「不正に関する調査結果が明確になるまで新政府樹立に関する協議に参加することはない」と強調。同じくスンニ派政党連合「イラク国民対話戦線」幹部のムトラク氏は「各派代表による暫定的な『救国政府』をつくり、混乱を沈静化したうえで六カ月以内に国民議会選挙を再実施する」と提案しています。

