2005年12月30日(金)「しんぶん赤旗」

米兵なぜ釈放

3児ひき逃げ

親ら「特別扱いだ」


 東京都八王子市で米兵が道路を横断中の児童三人をひき逃げし、その後、日米地位協定にもとづいて釈放された問題で、事故を目撃した住民などの証言から米兵が信号を無視していた疑いが浮上してきました。被害にあった児童の親は見舞いに訪れた日本共産党の八王子市議に「地位協定によって米兵が特別扱いされるのはひっかかる」と語るなど大きな怒りが広がっています。日本共産党は二十九日、米軍厚木基地に容疑者の釈放に抗議するとともに身柄を日本側に引き渡すよう強く申し入れました。

■信号無視か

 東京都八王子市で小学三年の男児三人が米兵にひき逃げされた事件で、日本共産党の狩野宏子八王子市議は二十九日、重傷を負った男児の母親と面談。お見舞いを述べて事故の状況や男児の様子を聞きました。

 男児は鎖骨骨折などで入院し、二十八日に退院しました。狩野市議が「大変でしたね。ひき逃げなんてとんでもないことです。ショックだったでしょう」と述べると、母親は「命が助かってほっとしています。犯人が逃げたことは許せない」と話しました。

 男児は外出できるまでに回復していますが、事故現場は怖くて通れず、違う道を使っているといいます。母親は、相手が米兵なので今後どう対応すればよいかよくわからず不安だと語りました。

 狩野市議は「公務中の米兵だから、日本が裁判できないという許しがたいことになっていますが、きちんと補償をさせなければなりません。お母さんの気持ちを伝えます。いつでも相談してください」と話しました。

 一方、軽傷を負った男児の父親は本紙の取材に対し、「米兵だということで地位協定によって特別扱いされるのはひっかかる」とのべました。

 父親は「現場は交通が激しいので子どもは赤信号で渡るようなことはしない」「事故を起こしてしまったら、どこの国の人だろうと相手を助けるのが当然なのに、逃げてしまった。その間に軍に連絡をとっていたのではないか。だとしたらとんでもないことです」と語り、「補償も日本の政府がおこなうと聞きました。責任がうやむやにされてしまうのではないか」と不信感を示しました。

■日本側へ渡せ 共産党、米基地に抗議

 日本共産党の大森猛元衆院議員、吉田信夫、清水ひで子両都議、党東京都委員会、神奈川県委員会は二十九日、容疑者の釈放に抗議し、身柄を日本側に引き渡すよう米海軍厚木基地(神奈川県)に申し入れました。

 申し入れには、和田雅光・緒方靖夫参院議員秘書、畑野君枝元参院議員の代理の竹原宣紘・党国会議員団神奈川県事務所長、八王子、大和、綾瀬各市議団の代表、大和市平和委員会の宮応勝幸会長も参加しました。

 大森氏らは「ひき逃げという重罪を犯しながら、『公務中』の証明書だけで釈放されたのは納得できない。小学生が青信号を横断中だったという目撃証言もあり、米兵の取った態度は二重三重に許されない」と批判。身柄引き渡しとともに、容疑者の所属や「公務」の内容など事実関係を明らかにするよう求めました。

 応対した同基地の当直将校らは「(容疑者の)水兵は空母キティホークの乗員で、厚木基地所属ではなく、公務の内容も厚木基地では把握していない。事故を起こした時、すぐに現場に戻ったと聞いている。被害者宅にも行くなど、すべきことはしている」と答えました。

 大森氏らは、重傷を負った児童の母親が「(容疑者が)子どもをひいて逃げたのは許せない」と語っていたこと、容疑者が現場に戻っていないという目撃証言もあることを示し、身柄引き渡しなどを重ねて要求しました。

 大森氏は申し入れ後、「明確な罪を犯しながら、事実と異なることを語っていることに、改めて怒りがわいた。(公務中の米軍人の犯罪は米軍が裁判の優先権を持つとした)日米地位協定の改定などが必要だ」と話していました。

■笠井衆院議員が外務省申し入れ

 日本共産党の笠井亮衆院議員は同日、外務省北米局にたいして、今回の重大な事件について説明を求めるとともに、日本政府が国民の生命と安全を守る立場から、米側に厳格な姿勢で臨むよう強く申し入れました。調査・検討の結果をすみやかに報告するよう要求しました。


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