2005年12月28日(水)「しんぶん赤旗」

ニュース配布が犯罪か

選挙の自由求める支援全国で

大分・公選法弾圧事件

来月に地裁判決


 議員がいつも通りに支持者らに後援会ニュースを配ったことが、なぜ罪に問われるのか――。大分県豊後高田市で公職選挙法違反とされ不当に逮捕・起訴された日本共産党の大石忠昭市議は、「長年続けてきた政治活動が犯罪として逮捕・起訴されたのは、どうしても納得できない」と裁判をたたかっています。裁判は十月十四日に結審し、来年一月十二日に大分地裁で判決が言い渡されます。(井上歩、大星史路)


 事件は、二〇〇三年の豊後高田市議選の告示前、日ごろから後援会ニュースを読んでいた支持者らに後援会ニュースを配った大石市議を、警察・検察が公選法違反(戸別訪問、文書違反、事前運動)として選挙直後に逮捕・起訴したものです。

 大石市議は九期三十四年間務め、一九七五年からは毎週かかさず地域新聞「みんなの高田」を発行。市民に市政を伝えており、この日も「みんなの高田」と「大分民報」号外を配りながら、支持者と見ていた人に選挙への奮起を訴える後援会ニュースを配っただけでした。

 逮捕・起訴がいかに不当であったかは、公判で、警察・検察の捜査手法からすぐに明らかになりました。

■署員全員動員

 豊後高田署の警察官は、ビラを配布する大石市議を確認しながら警告せずに監視。内勤や派出所を除いて勤務中だった十四人の署員全員を動員し、配布先全戸にローラー作戦を展開しました。捜査には県警警備課から五人が応援に入り、異常に集中的な捜査態勢をとりました。

 検察は、起訴前の取り調べで「罪を認め、議員を辞めろ」などと大石市議に執拗(しつよう)に迫り、日本共産党の議席をはく奪する狙いを露骨に示しました。

■住民怒りの声

 不当な逮捕・起訴に、地元は強く反発しました。大石市議の逮捕に、住民は「買収こそ取り締まれ」「大石議員を釈放せよ」と怒りの声を上げました。

 同市の選挙では、保守系議員らによる買収、供応などが横行しており、公判でも「一票一万くらいということも聞きました」(元市議会議長)、「(候補者が現金を持ってきたのは)二回ほどあった。そんなもんいらんと断った」(地元農家)、「投票前々日の夜、危ない、どうも落ちそうだと…一万円入っていました」(元中学校校長)などの証言が相次ぎました。

 大石さんは金権選挙とは無縁。それどころか、市議会で「取って代わるような人は、まず出ない」(元校長)、「大石さんが議席を失えば、高田の議会は、もう議会なしでいいことになる」(農家)と評価される議員でした。

 「大石さんがいなくなったら、豊後高田市は大変ですよ。今の執行部は、議員をほとんど抱え込んで一口も質問させません。ただ、大石さんが代表で質問する」。公判でこう証言したのは、自民党豊後高田支部総務の元市議会議長です。同議長ははっきり証言しました。

 「『みんなの高田』、豊後高田のことを一番いいことを書いてある。こういう人がおらな、だめじゃ、今の議員はでたらめじゃと私は言うたんです。(『みんなの高田』や街頭宣伝は)非常にいいことで、市民もそれを聞いて、ああ大石さんがいなけりゃだめだ、と言っています」

■牧師らが証言

 公判では、市民の思いも証言されました。「戦争、平和の問題を小さな過疎の町で一生懸命、街宣で訴える。ただ情報提供だけじゃなく、議会であること、市でしていること、チェック機能もしている。本当にそういうことを(ほかの)だれもしてくれない」(牧師)。「普通の議員は一週間の運動で終わり。一週間で、四年間食う。非常に評判が悪い。それを払しょくしたのが大石君。議員としての見本を見せてくれたということで、本当にほかの議員には目の上のたんこぶだと思うんです」(元校長)――。

 二〇〇三年の市議選で、大石市議がトップ当選して獲得したのは九百十二票。逮捕後、大石市議の釈放を求める署名は、短期間に有権者の22%にあたる三千四百人分も集まりました。

 大石市議は裁判をたたかうなかで「逆に、公選法を被告にした、原告になる」と決意します。「だれでもやっている」(市議会議長)という戸別訪問だけでなく、ビラ配布や宣伝活動などまで事細かに禁止し、“べからず”選挙をさせる日本の公選法――。公判では元国連人権規約委員が、日本の国内裁判で初めて証言し、その異常さを明らかにしました。

 証言したのは、世界銀行行政裁判所副所長も務めるエリザベス・エバット氏(オーストラリア在住)。「政治的な活動のための訪問は、非常に重要な政治的意見に関する表現の自由にかかわるもので、それを制限しなければならない妥当性は理解できない。選挙民に、選挙に関して十分な情報を与えなければならない、(選挙民は)受け取ることができる権利も有している」

 「自分の支持を訴えるために、支持を求めるパンフレットを配布したことを理由に制裁を科すことは、人権規約に照らして正当化できない。戸別訪問、選挙文書の配布などの規制は規約に適合しない、制裁を科すことは人権規約に違反すると考える」

 選挙の自由を求める大石市議への支援は、全国に広がっています。「選挙の自由をひろげ大石市議を守る会」は十七府県で結成され、無罪を求める署名は九万人分を超えています。

 大石さんは「裁判になんとしても勝利したい。市民のために働き続けたい。表現の自由を抑圧する公選法を変えるきっかけにしたい。国家公務員法弾圧・堀越事件など、一連の言論弾圧に勝利する突破口にしたい」と決意を語ります。来年早々の判決に注目が集まっています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp