2005年12月10日(土)「しんぶん赤旗」

「ブッシュだけが米国ではない」

温暖化防止の会議

もう一つの存在アピール

各州、都市で独自の取り組み


 【モントリオール(カナダ)=鎌塚由美】米国のブッシュ政権は、温暖化防止のための国際交渉に一貫して背を向け続けていますが、温暖化防止のためのモントリオール会議のサイドイベントでは、もう一つの米国が存在感を示しています。温暖化防止の独自の取り組みを進める各州、市長らが、「ブッシュ政権だけが米国だと思わないでほしい」とアピールしています。


■生活が危機に

 温暖化対策で先進的なカリフォルニア州は五日、州環境長官が温室効果ガス削減の取り組みを記者会見で披露しました。

 同州は、独自の自動車排ガス規制をし、日本や欧州の自動車会社が厳しすぎる規制に反対し裁判を起こしているほどだといいます。ロイド環境長官は、カリフォルニア経済が排出ガスを削減しながら成長していると述べ、「経済成長と排出ガス削減は矛盾しない」と強調しました。

 北東部ニューイングランド地方の各州も独自の取り組みで温室効果ガス排出規制を進めています。ブッシュ政権が京都議定書から離脱を宣言した二〇〇一年、ニューイングランド六州の知事と隣接するカナダ東部の州知事が地域の温暖化防止協定を策定。二〇一〇年までに一九九〇年の排出量にまで削減することを決めました。

 コネティカット州のマッカーシー環境保護局委員は、「温暖化問題とは第一にエネルギー問題です」と指摘。省エネとエネルギー効率への投資を州、地方が進めると、連邦政府も重い腰を上げざるをえないだろうと述べました。

 ニューヨーク州では、州政府が排出量規制に従わない企業や地方自治体を訴えているといいます。州司法長官事務所のレーナー氏は、新しい法をつくるのではなく、既存の環境保護法を活用することが重要だと強調しました。

 六日には、米国の環境保護団体とともに北西部ワシントン州シアトル市のニッケルズ市長が記者会見しました。水力発電源や飲み水となる同市近郊の山々への積雪が温暖化に伴い減少し、昨年は史上最も乾燥した冬になったといいます。

 同市長は「日常生活が危機にさらされている。政府の行動を待ってはいられない」と発言。京都議定書が発効した今年二月十六日、同市は議定書の温室効果ガス削減目標に取り組むよう全米の市長に呼びかけました。これまでに三十八州の百九十二市長が賛同。全米五十の大都市の半数近くが加わり、総人口は四千万人を超えます。

■米議会も動く

 地方の取り組みを受け、米議会も動きを見せています。二十四人の米上院議員はモントリオール会議中の五日に、温暖化防止の国際交渉を妨害するなと要請する書簡をブッシュ大統領に送付しました。

 同書簡にも署名したビンガマン議員は六日、現地入り。二酸化炭素の排出量規制の法案を近く上院に提出すると表明しました。

 同議員は、議会で新たな動きを進める理由として、(1)地球温暖化の科学的根拠がいっそう明らかになっている(2)温暖化への人々の懸念が高まっている(3)各州・地域が人々の懸念の高まりを受け独自の取り組みを進めている(4)産業界が地域主導の規制と摩擦が起こる可能性を懸念し国際基準の取り組みが必要だと考え始めている(5)産業界が排出量規制は避けられないと考えるようになっている―を挙げました。


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