2005年12月9日(金)「しんぶん赤旗」

12・8 太平洋戦争開始64年 戦後60年

歴史を正しく認識する

理性の声をいまこそ


 日本の過去の侵略戦争を正当化する異常な政治を許すのかどうか――戦後60年の節目の年、小泉純一郎首相の靖国神社参拝をめぐって鋭く問われました。今年1年、この問題を通じて、日本の何が明らかになったのでしょうか。


■靖国史観のおかしさ知り始めた

 「靖国問題について、一生懸命勉強しようという人が増えているのではないか。書店でも、靖国関係の本は批判的なものを含めてよく売れている」。ある経済誌デスクはこう指摘します。

 全国紙の論説委員の一人も、「この一年で変わったことといえば、国民が靖国神社のおかしさを知り始めたことだろう。根っこにある歴史観が問題だと知れば、(首相の靖国参拝も)いまのようにはいかない」と語ります。

 いまでこそ、小泉首相の靖国参拝の際にとりあげられるようになった靖国神社の歴史観。それを、まとまった形で明らかにし、戦後国際社会の原点をくつがえすものだと問題提起したのは、五月十二日の日本共産党・不破哲三議長の時局講演会(「日本外交のゆきづまりをどう打開するか」)でした。同講演会以後、日本共産党は「しんぶん赤旗」紙上で相次いで論文を発表。靖国神社の軍事博物館・遊就館に代表される歴史観(靖国史観)を、アメリカとの関係や、政府見解との矛盾など、さまざまな角度から明らかにしてきました。

 前出の経済誌デスクは、「不破さんの提起は、過去の話だけではなく、未来の問題まで提起したことが的確だった。近隣諸国との友好にたいして、国民自身が理性的に対処しなければならないという傾向が強まったのではないか。右傾化に危機感を抱いていた人たちへの後押しにもなった」といいます。

 その後、新聞界での大きな変化は、かつて首相公式参拝を後押ししていた「読売」が六月四日付社説で「(A級戦犯を)“犯罪人”として認識しているのであれば、『A級戦犯』が合祀(ごうし)されている靖国神社に、参拝すべきではない」と主張したことでした。「朝日」は「在京6紙でいま、はっきりと首相の靖国参拝を評価しているのは産経だけ」(十月十九日付夕刊)と総括しています。

 自民党内では、河野洋平衆院議長ら総理・総裁経験者が小泉首相に慎重姿勢を求めたり、加藤紘一元幹事長や野田毅元自治相らが靖国参拝に批判的な勉強会を立ち上げるなど、首相包囲網も強まりました。


■小泉首相の暴走 “戦後体制への挑戦”

 小泉首相は十月十七日、就任後五度目となる靖国参拝を強行。十月末の内閣改造では安倍晋三、麻生太郎といった靖国参拝推進のタカ派を主要閣僚にすえるなど、内外の批判にさからって、国策として靖国参拝を定着させる方向さえ示しました。

 加藤元幹事長は十一月に刊行した新著『新しき日本のかたち』で、首相の靖国参拝について「単に戦争被害国の問題だけでなく、講和条約を含む戦後体制全体に対する重大な挑戦になる」と指摘。「対戦国であったアメリカをはじめとした連合国に対しても、背信行為となる。煎(せん)じ詰めれば、日米間の問題となる」と警告し、「すでにそのことにはアメリカも気づきだしている」としています。

 森前首相、小泉首相と二代にわたって首相補佐官を務めた岡本行夫氏も「当初、過激な反日デモの中国に批判的だった欧米の論調も今では日本の戦争認識を問題視している」と指摘し、「参拝が公的色彩を帯びることには日本人として若干の違和感を覚える」とのべています。そして、「日本人の戦争史観は一九四一―四五年の太平洋戦争を中心に成立しており…三一年に始まった中国との戦争への意識は薄い。日本が加害者で中国が被害者だという心の深淵を理解しなければ中国と対話できない」と提言しています。(「日経」十一月十四日付インタビュー)

 ところが、小泉首相は「靖国は外交のカードにはならない」(十二月五日)と開き直りました。麻生外相にいたっては遊就館の展示を「戦争を美化するという感じではなく、その当時をありのままに伝えているだけの話だ」(十一月二十一日)と肯定、「靖国の話をするのは中国と韓国だけ」(同月二十六日)などと語り、「ならず者の言動」(朝鮮日報)と批判をあびています。

 靖国参拝に固執し、侵略戦争正当化の逆流を大きくする小泉政治は、八方ふさがりです。十二日のASEAN(東南アジア諸国連合)プラス日中韓首脳会議の際に予定されていた日本、中国、韓国の首脳会談、外相会談は事実上拒否され、中国とは外相会談さえ設定できない事態に陥っています。十一月の日米首脳会談、外相会談でも、米側から対中関係を懸念する質問さえ出される始末です。


■侵略肯定する政治 大本から転換を

 小泉首相の靖国参拝にたいし、全国紙は社説(十月十八日付)で次のように論じました。

 「遊就館に代表される歴史観は、海外にも紹介されるようになった。あの戦争を『自存自衛のための戦い』とし、今もそうした過去を正当化している」「(そんな)神社に、首相が反対をものともせずに公然と参拝する。…『歴史を反省しない国』というイメージが再生産されていく」(「朝日」)

 「靖国神社は…『大東亜戦争肯定論』の立場をとっている。国を代表する首相がこうした神社を参拝すれば、あの悲惨な敗戦のけじめがあいまいになり、諸外国との信頼関係を大きく損なうことになる」(「日経」)

 戦後六十年の節目の年に明らかになったのは、「歴史を反省しない国」日本ではなく、歴史を正しく認識する理性の声だった―そう総括できるようにするためにも、侵略戦争を肯定する異常な政治を大本から転換することが求められています。


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