2005年12月5日(月)「しんぶん赤旗」

麻生外相 止まらない 侵略正当化

就任わずか1カ月…

日本外交のゆきづまりに拍車


 就任わずか一カ月あまりで、日本の過去の侵略戦争を肯定する麻生太郎外相の発言が内外の批判を浴びています。訪米後は九日からマレーシアで開かれる東南アジア諸国連合と日中韓(ASEANプラス3)外相会議などに出席します。麻生外相の発言は、アジア近隣諸国とのまともな関係もおぼつかない日本外交のゆきづまりに、さらに拍車をかけています。(小林俊哉)


 「首相の基本的姿勢はまったく間違っていない」(十一月二十一日、米通信社のインタビュー)

 麻生外相は就任後も、小泉純一郎首相の五年連続となった靖国神社参拝をくりかえし擁護してきました。さらに「首相も簡単に譲れる話ではない」(十一月十三日、鳥取県内での講演)とも。首相の靖国参拝が国策として固定化されるのではないかとの懸念に開き直っています。

■遊就館の展示擁護

 とくに中国、韓国などの強い反発を呼んだのが、靖国神社の戦争博物館「遊就館」展示の擁護発言です。遊就館が、日本の過去の戦争を「自存自衛」「アジア解放」の「正しい戦争」だったと宣伝し、侵略戦争を正当化していることについて、「美化している感じではなく、その時はそうだったという事実を述べているにすぎない」(十一月二十一日、米通信社のインタビュー)とのべました。

 日本共産党の緒方靖夫参院議員が国会で追及(十一月二十四日)すると、「見解の相違」「一宗教法人の見解をどうのこうのという立場に、政府はない」と居直りました。靖国神社の戦争観、歴史観を「支持していない」と言明する小泉首相の認識とも食い違っています。

 麻生発言には、「重要な歴史さえ否定するのであれば、彼はあの時期の歴史に正しく対応する勇気がないことを物語るだけだ」(十一月二十二日、中国外務省報道官)ときびしい批判の声があがっています。中国側からは外相会談さえ拒否されています。

■批判にも反省なし

 ところが、麻生外相は反省するどころか、「『大変だ、大変だ』と言って靖国の話をするのは基本的に中国と韓国、世界百九十一カ国で二カ国だけだ」(十一月二十六日、金沢市内での講演)と挑発的な発言までしています。アジアでの日本の孤立ぶりについても、「日本は孤立しているとか、どうでもいいことは気にしなくていい」(同)とまで言い切りました。外相として無責任であるとともに、日本が侵略によってアジア諸国に被害を与えたことへの“痛み”がまるでありません。

 首相の靖国神社参拝、過去の侵略を美化する靖国神社流の歴史観にたいするアメリカ側の懸念や批判にも、麻生外相は「たたかった相手の米側としては自国の正義を貫かないと具合が悪い立場だ」「こちら側の言い分があって当然」(十一月二十四日、参院拉致問題特別委員会)とのべ、反省はありません。

 知日派として知られるコロンビア大学のジェラルド・カーティス教授は米上院外交委員会で、小泉首相が靖国神社への参拝を中止することが「(日中)両国関係の改善を可能にする必要条件ではある。日中両国が政治的関係を改善する方法を見いだすよう働きかけることは、わが国(米国)の国益にかなっている」(九月二十九日)とのべています。

 麻生外相が、戦前の政府・軍部の言い分をそのままに是認し、侵略戦争を正当化する発言を繰り返せば繰り返すほど、アジアで孤立を深めるだけでなく、日米外交にさえ「障害」を持ち込むことになりかねません。


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