2005年12月3日(土)「しんぶん赤旗」

輸入牛肉再開問題

安全性に疑問・時機尚早


 いま、日本が、アメリカ産の牛肉、内臓を、輸入再開すべきかどうかが、大きな問題となっています。二〇〇三年、アメリカ・カナダでBSE感染牛が発見され、それ以来、日本への輸入は禁止されています。ところが、その直後から、アメリカは、日本政府に対し、強く輸入再開圧力をかけ続けてきました。

 そして、二〇〇五年五月、日本政府は、輸入再開を進めるために、食品安全委員会に、米国・カナダ産の安全について諮問をしました。諮問の内容は、アメリカ・カナダが、日本向けに輸出する牛肉について、安全とされる条件を守った場合、日本の牛肉と安全性は変わらないかどうかということです。

 委員会は、プリオン専門調査会での審議を経て、十一月二日、「米国・カナダ産牛肉等の食品健康影響評価(答申案)」をまとめました。ここでは、その評価案について考えてみたいと思います。

■専門委の中でも疑問残る評価案

 評価案は、結論として「(1)科学的同等性を厳密に評価するのは困難 (2)輸出プログラムが遵守されたと仮定した場合、米国・カナダ産牛肉等と国内産牛肉等のリスクの差は非常に小さい (3)輸入が再開された場合、管理機関による輸出プログラムの実効性・遵守状況の検証が必要」としています。そして、科学的同等性を厳密に評価するのが困難な理由に「米国・カナダに関するデータの質・量ともに不明点が多く、かつ、管理措置の遵守を前提に評価しなければならなかった」ことをあげています。

 つまり、この評価案は、限られた条件の下で、現状での科学的な評価は困難であるとしながら、一方、輸出プログラムが順守されれば、リスクは非常に小さいとしています。が、その輸出プログラムの順守についても、本当に順守されるかどうか不確かなので、管理機関の検証が必要としています。結論的に、この評価案は、安全性について評価できるといっているのかできないといっているのか、すっきりしないという意見が、消費者から出されています。

 この点について、評価案をまとめた吉川泰弘プリオン専門調査会座長は、十一月二十二日の「米国・カナダ産牛肉等に係る食品健康影響評価案に関する意見交換会」(東京)で、「あのような条件の下で、科学的リスクの同等性を出すのには無理があったと思う。丸ごとの仮定の上で、結論が成り立ち得るのかどうか、専門委員のなかでも疑問が残った」と、述べています。

 結局、現状では、委員会として、安全性が確保されるかどうかを科学的に評価することは、不可能だと結論づけたと考えるのがごく自然だといえます。

 さらに、評価案は付帯事項で、アメリカ・カナダ産に対し、「脊髄(せきずい)などの特定危険部位がきちんと除去されているかどうかの監視の強化が必要」「健康と畜牛を含む十分なサーベイランスが必要」「飼料への牛の危険部位の利用禁止の徹底」「輸出プログラム遵守のためのシステム構築の確立と確認」を求めています。

■危険部位の除去現状では不十分

 つまり、現状では、米国・カナダでは、危険部位の除去が不十分であること。BSE牛の検査については、「米国では健康と畜牛の検査は殆(ほとん)ど行っておらず、健康と畜牛に存在するBSE陽性牛は発見できない」(よろけ牛のみで、検査率は全頭の1%程度といわれる)こと。米国では、豚、鶏用の餌に危険部位を含んだ肉骨粉をいまだに利用しているので、BSE汚染牛発症の危険が高いということを指摘しているのです。

 しかも、輸入を再開したとしても、「例えば出生月齢の証明ができない場合」「危険部位の除去が不十分な場合」「処理・分別過程で、肉や内臓等が二十カ月齢以上のものと混合され得る場合」など、「人へのリスクを否定することができない重大な事態となれば、一旦輸入を停止することも必要である」と、米国・カナダが、輸出プログラムを順守しなかった場合には、輸入を停止するよう求めています。

 現在、アメリカでは、日本では全頭に実施されている出生、月齢確認のための耳標をつける制度がありません。そのため、肉の色や、骨化で判断するという「二十一カ月齢以上の牛を完全には排除しない可能性がある」方法をとっているのです。

 以上、食品安全委員会としては、現状のままでは、安全評価は不可能であり、確信を持てないということをくりかえし強調しているのです。このような食品安全委員会の評価案を、日本政府が、都合のいいように解釈して、輸入再開を強行するなどということは、決してあってはならないことです。アメリカ・カナダが、BSE汚染の排除を、「仮に」ではなく、「現実に、きちんと守れる」と、証明できるまで、輸入再開は絶対にすべきではありません。

 新聞の世論調査(十月)では、国民の67%が米国産牛肉の輸入再開に反対しています。BSEには、何グラム以下なら食べても大丈夫という安全域がありません。消費者が、アメリカ言いなりの政治の犠牲になることは、絶対にあってはならないことです。

 (日本共産党市民・住民運動局長 岩佐恵美)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp