2005年12月3日(土)「しんぶん赤旗」

主張

自衛隊基地と米軍

住民を痛め先制攻撃力強める


 日本政府は、日米同盟再編にかんする「中間報告」(十月)で合意した、自衛隊と米軍の基地の共同使用方針の具体化を急いでいます。とくに、米軍機が駐留する基地、訓練のために使用する基地の周辺自治体への説得に力を入れています。

 「中間報告」の共同使用方針は、現在の限定的な形での米軍使用とはまったく異なり、事実上、自衛隊基地を米軍に新規提供する内容となっています。

■保障ない「負担軽減」

 「中間報告」は、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の空中給油機KC130を海上自衛隊鹿屋基地(鹿児島県)に移駐、「緊急時」の航空自衛隊新田原基地(宮崎県)、築城基地(福岡県)の使用を明示。また、どこの基地も米軍機の「訓練の移転」の対象にしています。

 日米地位協定(第二条四項b)にもとづく自衛隊基地の共同使用は、演習場を中心に一九八〇年代以降急増しました。新たな基地づくりが難しく、節約の必要もあって米軍が共同使用を促進したからです。

 航空自衛隊の新田原、千歳(北海道)、三沢(青森)、小松(石川県)、築城、百里(茨城県)各基地も共同使用です。しかし、使用目的は日米共同訓練など、使用期間は年四回、一回約二週間以内、年間約四週間などと限定されています。こうした限定があるのは、米軍専用基地と区別するためだけでなく、「日本防衛」を建前とする自衛隊基地を、海外で作戦する米軍に丸ごと使用させるわけにはいかなかったからです。

 「中間報告」がいう米軍機の常駐や「緊急時」使用、訓練の移転は、恒常的使用を前提にしているとみられます。米政府は、米軍の使用を制約している共同使用のあり方を変えて、航空自衛隊基地を米軍が自由に使用できる基地に変えることをねらっています。

 日米地位協定や従来の日本政府の見解と違った新しい問題なのに、そのことを自治体や住民に説明せず、共同使用の受け入れを一方的に押し付けるのは重大です。

 政府は、「沖縄の負担の軽減」を、本土の自衛隊基地の共同使用を正当化する口実にしていますが、沖縄県民が受けている苦痛を全国に広げるだけです。共同使用を行っても、沖縄には、ひきつづき海兵隊戦闘部隊も空軍の戦闘機部隊もいすわりつづけます。新しい基地を建設し、機能を強化しようとしています。沖縄県民の苦痛が「軽減」される保障はどこにもありません。だから「中間報告」以降、沖縄県民の間で、基地撤去の声が強まっているのです。

 共同使用の対象とされている基地の関係自治体・住民は、「なぜ米軍に協力しなければならないのか」と反発しています。爆音の増加、墜落の危険だけでなく、イラク戦争などの直接の足場として利用される危険を感じ取っているからです。道理のない戦争で、何の罪もない人々を殺している米軍を素直に受け入れることはできません。

■憲法九条と両立しない

 在日米軍は、アメリカが先制攻撃戦争を始めれば、ただちに世界のどこにでも出撃し、攻撃作戦を実施するのが任務です。そのため米軍基地を再編し、機能を一段と強化しようとしています。自衛隊基地の共同使用もその一環です。

 米軍に自衛隊基地を使わせ攻撃能力を強化させることは、憲法九条と両立しません。憲法の平和原則に立ち返ってこそ、平和で市民生活を守る日本へと進むことができます。


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