2005年12月2日(金)「しんぶん赤旗」

日米市街戦訓練

“本当の戦場で一緒に”

米軍再編の狙い示す


 米兵「敵が見えたら撃て。撃ち続けるんだ」

 陸上自衛隊員「敵二名射殺」

 陸自富士学校の「普通科教導連隊」が米陸軍第一軍団の基地フォート・ルイスで行った市街戦訓練の一場面です。テレビ朝日系の番組「報道ステーション」が、米兵の指示を受けて陸自隊員が敵のいる建物に突入する模様を放送しました(十一月十五日)。

■“敵”を殺す訓練

 番組では訓練を行った部隊の具体名は報じていませんが、一面所報のように、米側からはイラクで市街戦を繰り広げてきた「ストライカー旅団」の部隊が参加しました。

 イラクで罪のない民間人を多数殺害している米陸軍の“殴り込み”部隊の教えを受け、自衛隊は「敵」を殺す訓練まで行っているのです。

 フォート・ルイス発行の資料によると、訓練に参加した米側部隊の一つ、「第三歩兵連隊第二大隊」が所属する「ストライカー旅団」(正式名称・第二歩兵師団第三ストライカー旅団戦闘チーム)は二〇〇三年十二月から〇四年十一月までイラクに展開していました。

 また、「ストライカー旅団」への再編を進めている「第二機甲連隊」は〇三年三月からのイラク戦争でバグダッド侵攻作戦に参加。その後、一年三カ月にわたって駐留を続けました。

 こうした「経験豊富な米軍」(防衛庁)から、全国の陸自隊員に訓練を行う富士学校の「教導連隊」が、イラク市街戦の「ノウハウ」を学び、しかも、日本に帰ってそれを他の部隊や隊員に教えるための実地訓練をするというのです。

■先制攻撃に動員

 今回の訓練は、日米が合意(十月末)した在日米軍再編の「中間報告」で打ち出された、キャンプ座間(神奈川県)での米陸軍と陸自の新司令部創設の狙いを示すものでもあります。

 米国は現在、イラク戦争のような先制攻撃の戦争を行うため、米軍を世界のどこにでもいっそう迅速に展開できる機動的な軍隊にするとともに、同盟国を動員する態勢づくりを進めています。

 そうした下で「中間報告」は、キャンプ座間に米陸軍第一軍団司令部を改編した新たな司令部(UEX)を創設することを盛り込みました。新司令部は、今回の訓練に参加した「ストライカー旅団」の指揮をより本格的に行うことになります。

 同時に「中間報告」は、陸自の海外派兵の計画・訓練・指揮を一元的に実施することになる「中央即応集団」司令部をキャンプ座間に設置することも盛り込みました。狙いは、日米両軍が一体になって海外の紛争に介入できる態勢の確立です。

 前出の「報道ステーション」は、今回の訓練で米兵が陸自隊員に次のように語りかけている場面を放送しました。

 「一緒に訓練できて光栄です。将来、本当の戦場で一緒にたたかえることを楽しみにしています」

 小泉純一郎首相は「六十年間、日本はどの国とも戦争をしていない。…海外に人道支援、復興支援に行った自衛隊の諸君も一発のピストルも撃っていない。一人の人間も殺していない」と述べています(十一月十九日)。

 しかし、在日米軍の再編で日米両軍が「本当の戦場で一緒にたたかえる」態勢づくりが狙われ、その下で自衛隊は“人を殺す”訓練を始めているのです。

(榎本好孝)


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