2005年12月2日(金)「しんぶん赤旗」

主張

医療「改革」政府案

負担増強いる脅しとごまかし


 政府・与党が、来年の通常国会に法案を提出する予定の医療制度「改革」の大綱を決めました。

 いまは会社員の扶養家族で保険料を負担していない高齢者からも新たに保険料をとりたて、しかも年金天引き方式ですべての高齢者から医療保険料を徴収する。高齢者の窓口負担を現行の一―二割から二―三割に引き上げる。療養病床に入院している高齢者の食費・居住費を全額自己負担にする。医療費が高額になったさいの自己負担の上限を引き上げる―。大綱に盛り込んだ負担増は、国民の命と健康に重大な影響を与えるものばかりです。

■医療費は過大ではない

 大綱は、高齢者への負担増を正当化するために、「老人医療費を中心とする医療費の増大」と「現役世代と高齢者世代の負担の不公平」を抑制、是正するものであるようにいっています。“高齢者の通院・入院が増えているから、医療保険が破たんする”かのように印象づけ、世代間の対立をあおりつつ、負担増の強行をはかっています。

 しかし、日本の医療費は、経済水準に比して、けっして過大ではありません。GDP(国内総生産)にたいする総医療費の割合は、日本は7・9%で、OECD(経済協力開発機構)加盟三十カ国のうち十七位。一位のアメリカ(GDP比14・6%)の約半分です。一方、日本は平均寿命だけでなく、健康ですごせる人生の長さを表す健康寿命でも世界で一位(世界保健機関の調査)です。多くない医療費で国民の健康を保持している事実があるのに、医療費を過大だとして、負担増を押し付けるのは間違っています。

 政府は、現役世代と高齢者世代の負担が不公平だから、「新たな高齢者医療制度」を創設して、高齢者世代と現役世代の負担を明確にするといいます。しかし、新しい高齢者医療制度の眼目の一つは、収入がないか低いために、現役世代の扶養を受けている高齢者からも保険料を徴収することです。この人たちに負担を課せば、結局、現役世代が肩代わりすることになります。

 「世代間の不公平」の是正といいますが、格差を拡大してきたのは、政府です。サラリーマン本人の窓口負担を一九八四年に一割に、九七年には二割に、二〇〇三年には三割に引き上げてきました。高齢者の窓口負担は、一九八三年に有料になり、一割負担の徹底は二〇〇二年十月です。現役世代の負担増を先導し、格差を意図的につくり、今度は高齢者に、現役並みの負担を押し付ける。こんなやり方にごまかされないようにしましょう。

 高齢者が必要以上に病院に通っている事実はありません。高齢者の場合、若者に比べ、医者にかかる人の割合が高いために、一人当たりの医療費が高くなりますが、ごく当たり前のことです。

■入院で居住費も負担

 大綱は、「公的保険給付の内容・範囲の見直し」をかかげています。療養病床に入院している高齢者の食費と居住費を保険外にし、全額自己負担にする内容を盛り込みました。介護施設の利用者に負担を求めるさいには、施設と在宅との“公平”をあげましたが、今度は介護療養施設との“公平”が口実です。入院の場合、自宅の居住費との二重払いとなるので、在宅との公平という、ごまかしは通用しません。

 事実を偽って国民を分断し、国民の命と健康を切り縮めていく。こんな医療「改革」を許すわけにはいきません。


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