2005年12月1日(木)「しんぶん赤旗」

主張

建築の「規制緩和」

「官から民へ」の危うさ


 不十分な検査で危険なマンション建設を許した民間の確認検査機関は、耐震データ偽造が明らかになったのは「適正に業務運営」していたからで、「政府が主導する規制改革の成果だ」と宣伝していました。「規制改革」といえば、許されるとでも思っていたのでしょうか。

 建築確認や完了検査を民間企業に開放した一九九八年の建築基準法改悪を、日本共産党以外の党は、「大きな基準法体系の再構築」(自民党)、「大きな規制緩和で…大したもの」(民主党)と賛成していました。「規制緩和」、「官から民へ」を手放しで賛美する考え方は、国民に危険をもたらします。

■もうけ本位を助長

 建築物の建築確認のように、住民の生命・安全、健康、環境や街づくりに直結する高い公共性をもった業務までも民間企業に開放するとすれば、公的機関が、責任をもってその業務内容を点検、監督していかなければなりません。法的な建前としては、民間の確認検査機関による建築確認でも、地方公共団体が最終責任を負うことになっており、問題があれば取り消す権限もあります。

 しかし、実際には、民間の確認検査機関から自治体に提出されるのは、簡単な概要書にすぎず、それを見ただけでは、耐震強度のチェックなどが適正に行われているかどうかなどはわかりません。

 日本共産党の穀田衆院議員は、衆院国土交通委員会の集中審議で、「地方自治体は、どんな内容かということを確認しようもない。こういう矛盾をどう解決しようとしているのか」と質問しました。北側国交相は、「議論をしないといけない」と、問題があることを認め、検討することを表明しました。

 問題の重大性を直視するなら、この制度を作った考え方、設計思想にまで踏み込んで検討すべきです。

 もともと、「官から民へ」というスローガンの「民」は、国民の「民」ではなく、「民間企業」の「民」です。“行政は民間企業の仕事のじゃまになるようなことをするな”という発想で推進されたのが、一連の「規制緩和」です。

 建築確認の規制緩和・民間開放についても、政府側は、次のように説明していました。

 「建築確認という業務自体はもう少しドライにビジネスライクにやるべきだ…専門家であればわかるから公平性さえ担保されるならば行政である必要はないから、民間の確認検査機関に開放すると踏み切った」「建築確認は民間確認検査機関で粛々と進みます」(参院国土環境委員会、九八年五月二十八日)

 これは、周辺住民への配慮や環境、街づくりとの調和などは別問題であり、建築基準法等に合ってさえいればすぐ建築確認を出せという意味です。マンション建設業者にとっては都合のいい話ですが、住民の安全は「専門家」まかせです。

 しかし、専門家なら間違ったことをしないということはありません。無責任な民間企業があることも、参考人質疑で鮮明になりました。住民の安全より民間企業の都合を優先する仕組みにしたことが、もうけ本位主義の助長になっています。

■責任もてる体制に

 穀田衆院議員は、当面の問題として、民間検査機関の検査の再チェック体制の整備、行き過ぎたコスト削減競争に走る建設業界の体質改善、自治体の建築確認体制の強化を求めました。国民の安全に責任をもてる体制にするうえで重要な提起です。


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