2005年11月30日(水)「しんぶん赤旗」

主張

基地再編の説得行脚

反対の訴えをなんと聞いたか


 額賀防衛庁長官は、八日以来、一都七県(沖縄、山口、広島、神奈川、鹿児島、東京、宮崎、福岡)の知事、三十八市町の首長に会い、日米両政府が決めた日米同盟再編「中間報告」を説明、基地再編の受け入れを求めました。麻生外相も訪米を前にして沖縄を訪問しました。

 会談では圧倒的多数の自治体が強い反対を表明。再編計画の見直しを要求したところもあります。政府にも、自治体の受け入れ反対がいかに強いかが確認できたはずです。それに耳を傾け、米軍再編方針の押し付けは、やめるべきです。

■自治と人権の侵害

 米軍基地をかかえる自治体の訴えは深刻です。米軍基地キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)の一部と西側の浅瀬・東側の大浦湾にまたがって新基地をつくる計画は、千八百メートルの滑走路、格納庫、整備施設、燃料補給用の桟橋などをもつ最新機能の海兵隊基地とするためのものです。環境を汚染しジュゴンの生息を脅かすだけでなく、東西にあるいくつもの集落にヘリや戦闘機の爆音と墜落の危険を強います。こんな計画を沖縄県民がのめるはずがありません。

 キャンプ座間(神奈川県座間市、相模原市)に移転する米陸軍新司令部(UEX)は、アメリカの先制攻撃戦争のさい、世界のどこにでも迅速に移動し、戦争を指揮する戦闘司令部です。戦争のきな臭さを感じ取り、自治体・住民の反対は高まる一方です。

 二十六日には、座間・相模原両市民一万一千人が集まり反対の声をあげました。反対運動の先頭にたつ首長は、「引けない」(星野座間市長)、「戦車にひかれたって命をかけてやる」(小川相模原市長)と不退転の決意をのべています。

 大野前防衛庁長官は、星野市長に、再編は「百年の計画」と説明しました。基地の機能強化と恒久化に反対する両市が拒否するのは当然です。

 厚木基地から空母艦載機五十七機が移駐する岩国基地は、九十機を超す大規模基地に変わります。昼も夜も地上離着陸訓練を行い、騒音をまきちらします。戦闘攻撃機のNLP(夜間離着陸訓練)は「できるだけ硫黄島で実施」という政府説明はうのみにはできません。井原岩国市長は、「艦載機移転は住民感情をさかなでする」と批判しています。

 自衛隊基地の周辺自治体は、米軍機の「緊急時」使用や訓練移転について、「基地負担のつけ回しで納得できない」(鹿児島県知事)、「騒音や事故などの心配が払拭(ふっしょく)されない現状では賛成できない」(宮崎県知事)、「住民にこれ以上の負担を強いることはできない」(福岡県行橋市)と異口同音に受け入れ反対を表明しています。

 どの自治体も住民の平和的生存権と人権を守る義務があります。それを政府が強権で抑圧するのは、自治と人権をじゅうりんするものです。

 外務省と防衛庁は、自民党に、米政府の基地配置の条件について、「米軍は望まれ、歓迎され、必要とされる場所に配置」と説明しています。これだけ関係自治体が反対しているのですから、基地の再編をやめ、基地撤去について米側と折衝するのが道理です。

■基地撤去は共通課題

 日米同盟と基地の再編強化は、米政府が先制攻撃戦争を行うための計画です。平和の基盤を根底から破壊し、自治体や住民に新たな犠牲と負担を強いることになります。

 米軍基地の無条件撤去は、全国共通の課題であり、日本の平和と国民の安全のため不可欠です。


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