2005年11月23日(水)「しんぶん赤旗」

未来なき方向へまい進

結党50年自民大会


 「奢(おご)りや腐敗が生まれ、国民の厳しい批判を受け、政権を失うという苦い体験をしました。その反省のうえに立って、私たちは、二度と国民の皆さんを裏切ることのないよう、常に政治家の良心と責任感をもって真摯(しんし)に取り組む決意です」

 自民党結党四十年目の一九九五年、同党が採択した「新宣言」の一節です。あれから十年。総選挙で二百九十六議席を得た自民党が二十二日の結党五十年記念大会で採択した「五十年宣言」には、「構造改革、行財政改革、党改革など諸改革を進めていかなければならない」など、国民に犠牲を強いる文言が躍るようになりました。

■憲法9条改悪正面に掲げる

 大会では新憲法草案とセットで党の「新理念」「新綱領」を採択しました。「新綱領」はその冒頭で、「新しい憲法の制定」を明記。「憲法改正」が自民党綱領に明記されるのは、十年ぶりのことです。

 九三年総選挙で野党に転落した自民党は九四年に社会党、さきがけとの連立で政権に復帰。このため九五年で改定した「綱領」からは、結党の五五年以来の党是である「自主憲法制定」を削除していました。「保守政党であるわが党に内在しながら、時代背景などによって、現在の理念・綱領に盛り込まれなかったり、婉曲(えんきょく)的に表現されていた事項を明確に打ち出し、『自民党らしさ』を前面に出した」(自民党ホームページ)と位置付ける新綱領は、自民党が改憲政党として出発した宣言といえます。

 自民党の新憲法草案は九条二項を改変、削除し、「自衛軍」の保持を明記しています。自衛軍の任務の中心は、国の防衛と並んで「国際的に協調して行われる活動」です。国連の枠組みを超えて、アメリカとともに海外での戦争を行う国家づくりへの転換が狙いです。

 靖国神社参拝など侵略戦争を正当化する誤った行動で八方ふさがりとなっている小泉外交。そのなかで九条改悪を正面に掲げる政党としての宣言をしたことは、アジア諸国からのいっそうの警戒を呼ぶでしょう。

■生活福祉向上ビジョンなし

 小泉純一郎首相は大会あいさつで「信頼される自民党として新しい時代づくりにまい進したい」と強調しました。

 しかし、新綱領には、改憲や教育基本法の改悪をすすめるという具体的なスローガンはあっても、国民の生活、福祉を向上させるという政治の原点と、そのためにどのような国家をつくるのかというビジョンが見えてきません。

 「小さな政府を」として打ち出されているのは「行財政改革」「地方分権」であり、「持続可能な社会保障制度の確立を」などというもの。小泉首相が就任以来国会で述べてきた施政方針演説の要約版のようです。五五年の結党時、自民党は「綱領」「党の政綱」で「民生の安定と福祉国家の完成を期す」「駐留外国軍隊の撤退に備える」とそれなりにめざす国づくりを掲げていましたが、いまはそれさえも見いだせないでいるのです。

 「自民党員であるということは一体どういう意味があるんだろうか。党費を払って党員になっているけど、それはどういう意味があるのか、なかなかわれわれの方もよくわかっていない」。自民党改革実行本部の仕事を受け持つ国会議員の声です。

 未来のない方向にまい進する自民党の姿が五十年にしてあります。(高柳幸雄)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp