2005年11月17日(木)「しんぶん赤旗」

日米同盟強化

世界とアジアから孤立


 「ホワイトハウスは京都で、ブッシュが南米(米州機構首脳会議)で受けたひどい待遇に対し、心を静める解毒剤が与えられることを望んでいる」(英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン十六日付)

 これは、ブッシュ米大統領が十六日の日米首脳会談をどう位置付けているかについての指摘です。今月上旬の南米訪問で、各国首脳から米国の一国覇権主義への批判を浴びたからです。

 同紙の指摘通り、小泉純一郎首相はこの日の日米首脳会談、その後の共同記者会見で「世界の中の日米同盟」を強調し、「国際社会の中での日米の役割を共同しながら果たしていくよう緊密な関係を維持していく」と表明しました。

■“解毒剤”の役割

 米国内でも、イラク政策の転換と米軍の撤退を求める世論と運動の高まりの中、支持率が四割を切り、過去最低を毎週更新するなど窮地に陥っているブッシュ大統領を救う“解毒剤”の役割を果たしたのです。

 「世界の中の日米同盟」という言葉は、米国がイラク戦争を、国際社会で沸き起こった反対の世論と運動を無視して強行した直後の二〇〇三年五月に、ブッシュ、小泉両氏が首脳会談で確認したものです。小泉首相がイラクへの自衛隊派兵を強行する口実にもなりました。

 しかしその後、米国によるイラク軍事占領は泥沼化。イラクに軍隊を派遣した「有志連合」と呼ばれる国々もその撤退や削減を相次いで決定し、米国は孤立を深めています。

 ところが、小泉首相はどんなに状況が変わろうとも、米国にあくまで付き従っていく姿勢を表明したのです。そこには、「世界=米国」という視点しかありません。

 小泉首相は十二月に期限が切れる自衛隊のイラク派兵についても「しっかりした支援をしていく」と述べ、延長を強く示唆しました。

■アジア外交最悪

 アジアについても同様です。

 中国や韓国との関係は現在、小泉首相自身の靖国神社への参拝強行で、両国との国交が回復して以来、最悪と言われています。ブッシュ大統領とともに出席する十八日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でも、中国との首脳会談を開くことができない状態です。

 ところが小泉首相は「日米関係が良ければ良いほど、中国、韓国、アジア諸国をはじめ世界各国との良好な関係を築ける」と強弁しました。

 侵略戦争への反省を行動で示さない限り、アジア諸国との関係改善は望めません。米国に付いて行くだけではアジアの中での孤立も深まるばかりです。

 結局、小泉首相の言う「世界の中の日米同盟」とは“世界やアジアの国々との関係がいくら悪くなっても、米国との関係さえ良ければいい”ということでしかありません。それは、アジアの一員という日本外交の柱さえも投げ捨ててしまうものです。

(榎本好孝)


■基地の街は「捨て石」か

■米軍再編「代価」強調

 「平和と安全、経済的発展という恩恵を受けるためには、しかるべき負担、代価を支払わないといけない」

 小泉首相は日米首脳会談後の共同記者会見で強い口調でこう断定。日米両政府が十月末に合意した在日米軍の再編・強化案にいっせいに反発している自治体や住民の声を一蹴(いっしゅう)しました。

 自治体や住民がこぞって反対しているのは、基地が集中する沖縄での新たな米海兵隊基地の建設や、本土でも米軍の新司令部の設置や戦闘部隊のたらい回し、訓練の拡大などが計画されるなど、基地の負担がいっそう重くのしかかるからです。

 戦後六十年間、米軍基地を抱える自治体や住民は、基地あるがゆえの苦痛を背負ってきました。訓練に伴う爆音や事故、後を絶たない米兵犯罪で住民の安全が脅かされてきたことに加え、市街地の中心部分を占拠され、街づくりの障害になってきました。「基地との共存」を認めてきた自治体を含め、「これ以上の負担には耐えられない」というのが共通した心情です。

 首相も「基地賛成か反対かと聞かれたら、反対というのが率直な日本国民の気持ちだ」と認めました。それにもかかわらず、「代価」の名でいっそう基地の負担を拡大する再編案を押し付けるのは「国民の気持ち」を真正面から踏みにじるものです。

 しかも、首相は「日米安保体制を締結することによって日本の平和と安全を確保している」と言いますが、今回の再編案は「日本防衛」から大きくかけ離れ、米国の先制攻撃戦略に自衛隊をはじめ日本全体を組み込むものです。

 在日米軍は、イラク戦争など先制攻撃戦争への出撃を繰り返してきました。自衛隊も海外派兵を通じて米軍との一体化を強めてきました。今回の再編案は、こうした地球規模での日米軍事一体化をいっそう推し進め、そのための半永久的な基地の固定化・強化案を打ち出しているのです。

 この方向が「日本の平和と安全」に逆行することは明らかです。「日米安保体制を肯定するが、再編案は断じて容認できない」(稲嶺恵一沖縄県知事)などの声が上がるのも当然です。

 首相の言う「繁栄の対価」論は、すでに使い古されてきた論理です。そうした理屈を持ち出して「(再編)案が実現できるよう、政府一体となって最大限の努力を払う」と表明する―。基地の町とその住民は日米同盟の「捨て石」なのか。そう問いかけざるをえません。(竹下岳)


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