2005年11月16日(水)「しんぶん赤旗」

経財会議「基本指針」 ここが問題

公務員減らせばいいのか


 経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は十四日に、公務員の「総人件費改革基本指針」を決めました。どのような問題があるのかをみました。


■「まず数字ありき」

表
グラフ

 経済財政諮問会議の場で公務員・人件費削減を主導しているのは、奥田碩・日本経団連会長(トヨタ会長)、牛尾治朗・ウシオ電機会長ら四人の民間議員です。

 民間議員は前回(九日)の諮問会議で「基本指針(案)」を示しましたが、決定した「指針」は最終章の「取組み体制」を除けば、一言一句変わらないものでした。

 諮問会議の議論の特徴は、財政赤字だから「小さくて効率的な政府」が必要だとして、もっぱら経済効率最優先で、国の役割、責任は事実上放棄していることです。

 公務員・人件費は少なければ少ないほどいいとばかりに、先に数値目標を決めるやり方です。

 マスメディアからも、「『まず数字ありき』で打ち出された色合いが濃く、実現性を考え、計算し尽くしてはじき出した数字とは言い難い」(「東京」、十五日付)と指摘されています。

 「小さな政府」といいますが、欧米諸国とくらべれば公務員の数は決して多くありません。

 総務省調べによると日本は人口千人あたり三十五人。フランスの三分の一、アメリカの四割、イギリスの半分です。竹中平蔵総務相も「公務員の数でいうと、日本は非常に小さい部類に入る」と認めています。

■住民サービス後退

 住民奉仕の立場で行政機構を効率的に改革することは当然求められます。しかし、住民サービスをどう保障するのかの議論もなく削減をしていけば、サービスが切り捨てられ、国民に重い負担がのしかかってきます。

 「基本指針」で問題なのは、教職員や警察、消防、福祉関係など、国が基準を定めている分野についても、その基準を「見直し」てさらに削減しようとしていることです。

 消防士はいまでも基準にたいして五万人不足、父母の要求の強い三十人学級を実現しようとすれば、新たに十一万人の教職員が必要です。特養ホームや保育所などいまでも最低限の人員で切り盛りしているのにその定員も減らす―住民生活に直結する分野で公共サービスが後退するのは必至です。

■賃下げ競争始まる

 公務員削減と一体にすすんでいるのが、「指針」で強調している「市場化テスト」(官民競争入札制度)の本格導入です。公共サービスの担い手に企業も参入できる制度で、公務員削減の「有効な手段」と位置付けられ、財界は大きなビジネスチャンスととらえています。

 公務員給与削減についても財界の狙いがすけてみえます。

 自治体労働者でつくる日本自治体労働組合総連合(自治労連)の田中章史副委員長は「地域では公務員賃金が民間賃金を決める参考になっている場合が多く、“公務員の賃金が下がったのだから”と民間労働者の賃下げにも波及し、賃下げ競争が始まる」と指摘します。

 公務員給与を引き下げることは、地域経済に悪影響を与えると危ぐする声も強く、札幌市議会は六月に「地域経済のますますの停滞と地域間格差の拡大につながることが懸念される」と意見書を採択しています。

 さらに「歳出削減なくして増税なし」と政府・与党がしきりに強調しているように、“公務員を削減したのだから次は増税を”と大増税の地ならしの側面をもっていることも見逃すことはできません。


■結局、国民に「大きな負担」

■公務労組連絡会事務局長

■若井雅明さんの話

 「小さな政府」の名のもとに公務員定数・人件費の削減が狙われています。それで国民負担が決して小さくなるわけではありません。逆に、医療制度改悪をみてもわかるように政府の責任を切り縮める分、国民の負担は大きくなります。

 税金のムダ遣いをなくすことや真の意味で行政の効率化をはかることは必要です。しかし住民生活と結びついた公務員の削減は結局は公共サービスの切り捨てによって国民には「大きな負担」となって返ってくるものです。「小さな政府」は、国民の安全・安心を切り捨てることになり、国民全体に向けた攻撃なのです。

 「基本指針」の議論の過程では、国民や労働組合の意見を反映させる場もなく、財界の要望に全面的に応えたものになりました。この点に「基本指針」が国民に背を向けた本質が表れています。

 ▼公務労組連絡会 行政、地方自治、教育など公務職場で働く職員でつくる労働組合の共闘組織。一九九一年十月に結成され、国公労連、自治労連、全日本教職員組合などが加盟、日本医労連や福祉保育労がオブザーバー加盟しています。


■基本指針の骨子

・国家公務員の総人件費を今後十年間で対GDP(国内総生産)比で半減させる長期的な目安をもって取り組む。

・今後五年間で郵政公社職員を除く国家公務員定員(68・7万人)を5%以上純減。

・行政機関の定員(33・2万人)を5%以上純減。

・自衛官、国会・裁判所、会計検査院、人事院の職員定員も行政機関に準じて純減の対象。

・特定独立行政法人(7・1万人)の非公務員化。

・地方公務員は4・6%以上の純減確保に向けた各地方団体の取り組みに、国による定員関係の基準の見直しで一層の上積みが確保されるように取り組む。

・「市場化テスト」の本格導入。

・公務員給与制度を抜本的に改革し、民間準拠をより徹底する。


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