2005年11月12日(土)「しんぶん赤旗」

米軍再編を「迅速実施」

政府、反対の声を無視

閣議で基本方針


 政府は十一日の閣議で、十月末に在日米軍再編の「中間報告」を米国と合意したことを受け、来年三月の「最終報告」策定に向け、日米協議を加速させるとともに、再編案の早期実現を図るとした基本方針を決定しました。「中間報告」に対し、基地を抱える自治体がいっせいに反対の声を上げている中、小泉政権を挙げて、これを抑え込む姿勢を鮮明にしたものです。


 基本方針は、在日米軍再編の日米協議について「日米同盟関係を強化するため」と位置付け、再編案の「的確かつ迅速な実施を確保するための方策に関し、総合的な観点から必要な措置を講ずることについて検討する」としています。

 「必要な措置」の具体的内容には触れていませんが、安倍晋三官房長官は同日の記者会見で「米軍再編を円滑に進めていくためには地域の振興も当然考えていく」と表明。額賀福志郎防衛庁長官は同日の会見で、「予算措置を含めた必要な措置をとる」と述べ、再編費用を日本側が負担することを示唆しました。

 このほか政府は、沖縄の普天間基地に代わる新基地をキャンプ・シュワブ沿岸に建設するため、海域の埋め立て承認権限を知事から取り上げる法的措置も検討しています。こうした対応も「必要な措置」に含まれるとみられます。

 また政府は、再編案を実施していくため、関係六閣僚による協議を来週から始めることを決めました。構成は、官房長官のほか、防衛、総務、外務、財務、沖縄・北方の各閣僚。必要に応じ、厚生労働、国土交通の各閣僚らを加えることも想定しています。

■費用は丸抱え 自治体にアメとムチ

■解説

 政府が決定した在日米軍再編にかかわる基本方針は、基地を抱える自治体には「アメ」と「ムチ」で反対世論を抑え込み、米国に対しては費用を日本側が丸抱えするというものです。

 関係自治体や地域住民の反発がいっそう強まるのは必至です。

 政府は「アメ」として「地域振興策」を図る方針です。しかし、自治体と住民が求めているのは、都市計画や街づくりの障害になっている基地の返還です。世界への出撃拠点として基地が強化されることに強く反対しています。世界とアジアの平和を脅かし、住民の命も危険にさらされるからです。どんな「振興策」が打ち出されようと、その危険がなくなるわけではありません。

 「ムチ」として検討している、沖縄県の海域埋め立て承認権限の取り上げには、すでに県民の約九割が反対しています(琉球新報四日付)。

 一方で、米国に対しては、再編案実施が「スムーズに、スピーディーにできる」(額賀福志郎防衛庁長官)として、惜しげもなく国民の税金を費用に充てる方針です。

 基地を押しつけ、米軍とともに地球規模で自衛隊が出撃していく態勢づくりのためには、なりふり構わない―。国民の命よりも日米同盟を重視する小泉政権の異常な姿勢があらわれています。

(田中一郎)


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