2005年11月3日(木)「しんぶん赤旗」

増税計画 低所得者ほど負担重い?


 〈問い〉 こんどの政府の増税計画では、低所得者ほど負担が重いといわれますが、どういうことですか?(東京・一読者)

 〈答え〉 6月に出された政府税制調査会の「個人所得課税に関する論点整理」は、増税規模のすさまじさとともに、とくに低所得者ほど負担が重いという性格をもっています。

 いまの税制の仕組みは、所得税は、年収にそのまま税率をかけるのではなく、年収から、サラリーマンの場合は給与所得控除を、自営業者の場合には必要経費を、年金生活者の場合には公的年金等控除を引き、それから基礎控除などの人的控除や、その他の所得控除を引いた残りが課税すべき所得になります。この課税所得に累進税率をかけて税額を計算し、そこから住宅ローン減税などの税額控除を引き、最後に定率減税を引いて税金額が出てきます。住民税の場合も、住宅ローン減税がない程度で、ほとんど同じ仕組みです。

 このように収入から控除するということは、控除する部分には税金をかけてはいけない、ここには税金をかけるべきではない、という考えに立っていることを示しています。それが「生計費非課税の原則」、つまり「最低限の生活費には税金をかけない」という考えです。

 ところが、今度の政府税調の提案どおりになれば、課税最低限が生活保護基準の半分以下になってしまい、「生計費非課税」の原則を完全に崩壊させます。

 たとえば、年収500万円の場合、所得税・住民税が、今まで払っている額の3・6倍になります。

 年収300万円の人は、いまは所得税の課税最低限以下なので、所得税がゼロで、住民税しかかかっていません。しかし、増税されると、所得税も住民税も払うようになるし、金額もうんと増え、税負担は33倍にもなります。

 一方、年収が高い人、たとえば年収5億円の人の場合は、1・03倍、つまりいまより税金が3%増えるだけです。

 今度の控除を廃止することによる増税計画は、低所得者に負担が重い、お金持ちにはほとんど影響がないものです。

 なぜそうなるのかというと、定率減税はもともと所得税25万円、住民税4万円の上限を設けていましたから、定率減税が廃止されても、最大で29万円の増税です。配偶者控除と扶養控除も定額できまっていますので廃止されても増税額には上限があります。お金持ちにしてみれば、数十万円の増税になっても影響はほとんどないでしょう。このように、控除廃止による増税は仕組み上、低所得者に重くなるようになっています。(垣)

 〔2005・11・3(木)〕


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