2005年11月1日(火)「しんぶん赤旗」

プリオン調査会 BSE評価案

結論迫られ 安全置きざり


 米国・カナダ産牛肉輸入再開のため生後二十カ月以下などという仮定の上での評価の不自然さ――。三十一日に大筋でまとまった食品安全委員会のプリオン専門調査会の米国・カナダ産牛肉のBSE安全性評価案の「結論」は、矛盾に満ちた“二つの答え”にならざるをえませんでした。(宇野 龍彦)


 プリオン病研究者の青山学院大学の福岡伸一教授は「結論は拙速で、あせった感じがにじみ出ている。『科学的にリスクの評価が困難』といいながら、『輸入条件が守られれば日米のリスクの差は非常に小さい』というのは矛盾しています」と指摘します。

 この日の審議の中でも、複数の専門委員から「矛盾がある」という意見がだされました。日本政府が今回の諮問でもちだした日米合意の輸入条件が「科学的ではない」(金子清俊座長代理)という批判も。

■米国の圧力

 経済制裁をちらつかせる米国の異常な圧力のもとで進められていた専門調査会の月三回もの強行運営には、ブッシュ大統領の来日を控えるなど対米配慮による政治日程を優先したものだという批判もでていました。

 大筋でまとまったという評価案は、細部の字句修正や加筆が残ったまま。吉川泰弘座長は会合後の記者会見で「BSEリスクを科学的に評価することは困難」の部分を「BSEリスクに関して科学的同等性を評価することは困難」と、評価にかかわる内容の字句修正をすると表明しました。食品安全委員会事務局の不手際だったと釈明しましたが、そのほかでも表現上の修正があるにもかかわらず、最終的な成文がないまま審議が打ち切られました。今後、同調査会の会合は開かずに、評価案が今月上旬にも食品安全委員会に提出される見込みです。

■責任は誰が

 福岡教授は「これから国民からの意見聴取がおこなわれますが、国内の全頭検査緩和の答申では約七割もの国民が反対をしていたのに無視された。米国産牛肉輸入再開でもいろいろな世論調査で七割程度が不安や反対の声がでている。食品安全委員会は、リスク管理機関の行政の責任だといい、政府は科学者のお墨付きが得られたといって、輸入再開するとしたら、いったいだれが責任をとるのか」ときびしく批判します。

 米国産牛肉輸入再開をめぐっては、これまでに「リスクの差はきわめて小さい」でプリオン専門調査会が一致したかのような報道がはんらんしました。

 しかし、今回、「同等性の評価が困難」(結論)としたうえで、危険部位除去などの輸入条件の「前提が守られなければ評価結果は異なったものになる」とし、矛盾した二つの答えを併記せざるをえませんでした。危険部位除去でも「同等かは不明である」と明記した以上、牛の個体識別システムもなく、飼料規制もBSE検査もずさんだった米国から検査抜きの牛肉輸入再開を強行することは、消費者の不信感を広げるだけです。


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