2005年10月30日(日)「しんぶん赤旗」
主張
原子力空母の配備
危ない!先制攻撃能力の強化
米海軍は、二〇〇八年に原子力推進空母を米軍横須賀基地に配備すると発表しました。現在の通常型空母キティホークに代わるものです。原子力空母の母港化は、日本では初めてのことです。
政府は、「評価する」(町村外相)と、受け入れを表明しています。
しかし、横須賀を空母の母港とすること自体、世界的にみて異常なことです。ましてや、原子力空母となれば、核汚染の危険を押し付け、アメリカの先制攻撃機能を一段と強めることになります。日本の平和と安全を脅かす重大問題です。
■恒久的な母港化
米軍の空母は、現在十二隻。うち十隻が原子力推進の原子力空母です。キティホークとジョン・F・ケネディの通常型空母は、まもなく退役の予定です。米政府は、後継空母は原子力空母しかないという状況を利用して、横須賀に原子力空母を配備しようとしています。
配備予定のニミッツ級の原子力空母は、発電容量十万キロワットの原子炉を二基保有(熱出力約六十万キロワット)しています。つまり、三千万の人が住む首都圏の海の玄関口にある横須賀を原発並みの原子炉を持つ原子力空母の根拠地にするということであり、事故ともなれば、甚大な被害に直結します。
米政府は、「安全に運用されることを保証する」(シーファー駐日米国大使)といいますが、「絶対安全」ということはあり得ません。日本国内の、たびたびの原発事故で、「安全神話」は崩壊しています。米艦も、原潜ウッドロー・ウィルソンが炉心溶融につながりかねない冷却水の圧力低下の事故、原子力空母ニミッツが原子炉部分で一時冷却水漏れの事故をおこしています。
母港化した原子力空母は、一時的な寄港と違って、修理などで一年の半分は横須賀に停泊します。住民が、原子力空母の核被害を心配するのは当然です。
ブッシュ政権の先制攻撃戦争政策にもとづいて、原子力空母は、「最も能力の高い艦船」(米海軍)として、いつでもどこへでも迅速に出動し、先制攻撃を行います。原子力空母の母港化は、日本を恒久的に先制攻撃基地にするものです。これは、アジアと世界の平和の流れに反します。
国内では、先制攻撃能力の維持強化のために空母艦載機による夜間離着陸訓練や低空飛行訓練はいっそう激しくなり、全国いたるところで住民の苦痛は激増することにもなります。
原子力空母の配備は、将来の核兵器持ち込みに道を開きかねない危険も含んでいます。
一九六一年の日米首脳会談で、ラスク国務長官は、「日本人に原子力が兵器以外にも利用される事実をよく理解させる必要がある」とのべて、日本国民の「核アレルギー」の解消をもちだしました。それ以来、米政府は、日本国民を“核慣れさせ”、核兵器を公然と持ち込める環境をつくることを狙ってきました。
将来の公然とした核兵器持ち込みの危険を含んだ原子力空母の配備を許すわけにはいきません。
■母港返上しかない
そもそも、米政府が母港を絶対化していることが問題です。日本政府は、七三年の空母ミッドウェーの母港化をめぐる国会論議のなかで、「おおむね三年」と言明しました。三十年以上も空母をいすわらせ、さらに継続させるのは約束違反です。
原子力空母の配備をやめさせ、母港化返上の声を大きくしましょう。