2005年10月29日(土)「しんぶん赤旗」
米原子力空母の横須賀配備
国民への「約束」ほご
“殴り込み”戦争の拠点強化
「やむを得ない」。細田博之官房長官は二十八日朝の記者会見で、米海軍が原子力空母の横須賀配備を発表したことについてこう述べました。米側から発表の連絡があったのは二十七日の夕方。シーファー駐日米大使から連絡を受けた町村信孝外相は、その場で受け入れを表明したといいます。日本国民の強い懸念・反対を十分に知っていながら、真剣な吟味も一切しないまま即座に受け入れを表明したもので、主権国家の政府ではあり得ない、驚くべき態度です。
■世界に例なく
横須賀は三十年以上にもわたり、世界でただ一つの米空母の海外母港になってきました。日本が日米安保体制の下で、世界に類例のない「米軍基地国家」の状態に置かれていることの一つの象徴です。原子力空母配備の受け入れは、こうした異常な状態をさらに遠い将来にわたって続けることを認めるものです。
政府は、原子力空母の配備受け入れの理由について「日本の安全および極東における国際の平和と安全の維持に寄与する」(町村外相)、「アジア太平洋の安全保障の観点から極めて有意義だ」(大野功統防衛庁長官)としています。
しかし、横須賀を母港にしている米空母キティホークは、イラク戦争(二〇〇三年)やアフガニスタン戦争(〇一―〇二年)といった地球的規模での先制攻撃の戦争に出撃を繰り返してきました。
今回の米海軍の発表は、原子力空母を横須賀に前進配備することについて「極めて強力な打撃力と高い作戦能力を備えた、最も能力の高い艦船を配備すること」であり、「(米軍の)海上部隊と統合部隊の最も迅速な対応を可能にする」と強調しています。
キティホークのような通常型空母に比べ、はるかに優れた能力を持つ原子力空母を配備することで、「日本やアジアの安全」とは無縁な“殴り込み”戦争の拠点として、横須賀をいっそう強化しようというのが狙いです。
■言いなり極限
横須賀の空母母港化(一九七三年)は、基地の拡大・強化、基地被害の増大・深刻化に強い不安を抱く日本国民を欺いて進められました。
当時、政府や米軍は「(配備期間は)おおむね三年」「原子力空母の寄港は現在は全く考えられていない」「日本に経費的な負担をかけない」「空母艦載機の離発着訓練は実施しない」などと説明しました。しかし、これらの「約束」はその後、ことごとくほごにされ、自民党政治の対米従属の深さを示してきました。
しかも今度は、広島・長崎の被爆体験による反核の願いから、国民に強い反対の声がある原子力空母の配備を唯々諾々と認め、半永久化しようというのです。小泉・自公政権の米国言いなりが極限に達していることを示すものです。(榎本好孝)

