2005年10月22日(土)「しんぶん赤旗」

子どもたちを尊重する社会づくりを

対談

学校は楽しい場所でなくては
国連子どもの権利委員会委員長 ヤープ・ドゥックさん

虐待なくす社会的取り組みを
日本共産党副委員長・衆院議員 石井 郁子さん


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 1999年3月から同委員、2000年から委員長。オランダ・アムステルダム自由大学法学部元教授。DCIオランダ支部創設メンバー・同理事、児童虐待防止国際学会創設メンバー・同理事、児童労働に関する国際ワーキンググループメンバーなど歴任。
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 国会議員団文部科学部会長。子どもの権利条約が採択された(1989年)翌年、第1回国連子どもサミットにかかわるNGO会議に参加。党国会議員団で「子どもの権利条約全面実施委員会」をつくる。「児童虐待防止法」や30人学級法案の共同提出など、子どもと教育の問題にとりくむ。

 過度に競争的な教育、児童虐待や少年犯罪、学校現場における「日の丸」「君が代」の押しつけと、子どもの意見表明権の侵害――。日本の子どもの置かれた現状は深刻です。国連子どもの権利委員会のヤープ・ドゥック委員長と、日本共産党の石井郁子副委員長・衆院議員が懇談。権利条約の精神に基づき、子どもたちを尊重する社会づくりに向け語り合いました。

■過度に競争的な教育、児童虐待や少年犯罪…
 深刻な子どもの現状どう打開する (

 石井 大変な強行スケジュールでしたが、日本での印象はいかがでしょうか。

学校での国歌、国旗押しつけは

 ドゥック 昨年一月、私どもは日本政府に対して、二回目の勧告を出しました。日本政府が行ってきたいろいろな努力というものは、評価しております。しかしながら、まだたくさんのことをしなければいけないと思います。

 まず、教育についての懸念です。大変問題があると思うのは、小学校から中学校、高校、大学にいたるまで、大変競争が激しいということです。ストレスが大変強くて、自分たちはうまくやっていないんではないか、ちゃんとした成績を出していないんではないかと心配を抱えている。うまくやらないとしかられるんではないか、罰せられるのではないかということで、学校が楽しいところではなくなっているんですね。

 そして、子どもたちが自分の意見を表現する余地というものがない。子どもたちに規則を押しつけていると思われます。国歌、国旗の問題ですね。子どもが歌わないと教師が処分される。こういうことは、学校で問題になることであってはいけないと思います。

子どもたちの居場所がない

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石井さんとドゥックさん=13日、国会内
 石井 日本の教育の競争の異常さ、激しさというのは一回目の勧告にあり、二回目の勧告でもフォローアップされていないと指摘されました。私たちも大変心を痛めています。90%以上の子どもが高校に進むようになりましたが、高校や大学が非常に序列化しているので、高校に入るのにさえ大変な競争があるんですね。そういう競争教育の中で、学校で自分が認められない、居場所がないという子どもたちがたくさんいる。本当に深刻です。

 ドゥック 競争というのは大事だと思うんです。ヨーロッパでも学生たちは、もっとうまくやりたい、成績を上げたいと、がんばっています。問題は、日本のやり方が非常に硬直的だということ。もっと自由というものを与えなければ、人格も形成されないし、文化もつくられないと思います。

厳罰主義では予防できない

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2004年1月の国連審査で子どもの発言をメモするドゥック委員長
 ドゥック もう一つ問題だと思っているのは、少年犯罪、それとかかわる司法のことです。日本政府は、少年犯罪に厳しい処罰をもってあたるということを考えているようですが、私たちは世界の経験をもっと見るべきではないかと思います。例えば、地域でもっと受け入れていくような体制、それから保護観察のようなものをもっと活用する。

 石井 私もまったく賛成です。日本ではここ数年、子どもの殺人が問題になっています。十二歳、十三歳の子どもが子どもを殺す、子どもが親を殺すという事件があって、そのことをきっかけにして、政府は処罰年齢を下げてくる。とにかく厳罰主義なんです。私たちは、立ち直るプログラムや子どものケア、予防ということをもっと大事にしたいと思います。

 ドゥック ヨーロッパの方でも、例外的に非常に厳しい罰則を加えるというのがあります。例えば、十一歳の少年が子どもを殺してしまったとき、特別なケースだということで十年、二十年、三十年監獄に入れる。でも、それが一体何の役に立つのでしょうか。その十一歳の子どもには精神的、心理的な問題があったのでしょう。普通の十一歳の子どもというのは、人を殺したりしません。

社会的に育てていく体制が貧困

 石井 私たちもそういう考えで、国会でも取り組んできました。ところが、日本の保守の政治家に、罰則さえ与えたら防止できるという考え方が強くあります。

 ドゥック ほかの国でも同じなので、よく分かります。子どもを罰するときには、一回も二回も立ち止まってよく考えて、こういう罰則がいいのかと考えないといけないと思いますね。

 石井 少年院を出ても家に戻れないという子どもたちが、五年間で二千五百八十二人もいるという調査も出ました。日本の子どもたちを社会的に育てていく体制というのは、非常に貧困だと私は思っています。

 ドゥック 昨日も家裁の調査官にお会いしてこの話をしました。少年院に入れられて、二年、三年とそこで過ごして、それで十八歳になったりして少年院から解放。だけど、親が引き取りを拒否するというようなことがあって、どこに行けばいいのかと。仕事を探す手伝いをするとか、やっぱりいろいろなサポートをしないといけません。それがないために、二、三カ月で犯罪に戻ってしまうということもありますから。

虐待防止の国家戦略もたぬ日本

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子どもの権利条約全面実施委員会が開催した市民団体との懇談会。左から2人目が石井さん=04年6月
 石井 もう一つ、日本で深刻なのが児童虐待です。日本でもやっと五年前、超党派で私もかかわって、児童虐待防止法を作りました。それでも、国連の二回目の勧告では、日本が虐待防止のための国家戦略をもっていないということを指摘されています。

 ドゥック 一つ言えることは、日本では子どもはしつけをされる対象である、ということがあると思うんです。だから、学校では子どもに体罰を加えてはいけないんだけれども、実際には行われている。家でもそういうことが起こっているんだろうと思います。

 まずは、宣伝、広報が大事です。例えば、体罰というのがどれほど悪いことなのか。それは子どもをはずかしめることであり、「あなたは社会の中で価値がないよ」と言うようなことであり、子どもの人格形成にとって大変否定的な影響を及ぼすんだと。

児童相談所の質を高めて…

 ドゥック もう一つは、児童相談所の質を高めることです。子どもたちをどう育てていいか分からない親たちがいて、結果として罰則を与えるというふうになっている。その人たちにいろいろな援助を与え、児童相談所の相談能力を高めることです。

 三番目が監視報告体制。それは、第一に警察であってはなりません。例えば、センターをつくって、先生とかお医者さんとかがそこにいる。そして、そこにいつでも簡単に声がかけられる、報告できるというような体制をつくるというのがあると思います。

 そのセンターには、問題を調べて対処する権限が与えられていなければなりません。そして、親に対しても一緒にサービスを与える。親は何も好き好んで子どもをたたくということはありません。親も問題を抱えているということです。

 石井 私たちも、親のケアのプログラムとか、児童相談所の権限と体制の強化、さらに子どもへの暴力をなくす社会的な取り組みが必要だと考えています。

(つづく)


 ▼国連子どもの権利委員会からの勧告

 「子どもの権利条約」の批准国(日本は一九九四年)は、五年ごとに国連の委員会から勧告を受けます。

 日本にたいする二回目の勧告(二〇〇四年一月)は「高度に競争的な教育制度により子どもが発達のゆがみをきたしている」(一回目の勧告)問題で、再び改善を求めました。また東京都ですすむ定時制高校閉校の再考、子どもの政治活動への制限や体罰・持ち物検査などの見直し、障害のある子どもの教育やサービスの向上など、多岐にわたって改善を求めました。

 政府は、〇六年五月までに改善の取り組みを書面で国連に提出することになっています。


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