2005年10月19日(水)「しんぶん赤旗」

米軍再編のなか 参院補選

「基地のない神奈川」願い託せる党は

座間への移転反対 27万人が署名


 在日米軍の再編問題は、今月末の「中間報告」とりまとめに向け日米間の協議が大詰めを迎えています。沖縄に次ぐ第二の基地県・神奈川でたたかわれている参院補選(二十三日投票)の結果は、この協議の行方にも大きな影響を与えます。「基地のない平和な神奈川」の願いを託せるのは、どの党でしょうか。(竹下岳)

 「基地機能の強化、恒久化につながる司令部移転は容認できない」―。米陸軍基地・キャンプ座間を抱える座間、相模原両市では、市長を先頭に、在日米軍の再編で狙われている米陸軍第一軍団司令部(米ワシントン州)の移転に強く反対。署名も二十七万人以上集めています。

 両市の人口は合わせて約七十五万人。半世紀で十倍近くに増え、街の中心に位置するキャンプ座間は都市計画の重大な障害になっています。新たな米軍司令部が移転してくれば、基地は固定化・恒久化され、返還の道がいっそう遠のいてしまう―。両市には強い危機感があります。

 このほかにも神奈川の基地問題は山積しています。

 厚木基地(大和市、綾瀬市、海老名市)では、約七十機の米空母艦載機が連日、爆音をまき散らしています。寄せられる騒音への苦情は、同基地を抱える三市のほか、相模原、座間、茅ケ崎、藤沢、横浜の各市など広範囲に及んでいます。

 日米両政府が狙う横須賀基地への原子力空母配備や、池子の米軍住宅追加建設も、大きな問題になっています。

 基地の縮小・返還は行政や市民の切実な願いです。「各候補に積極的に語ってほしいのは、在日米軍再編問題」(神奈川新聞六日付)との指摘が出ているのは当然です。

 これに対し、自民、民主両党の候補も、選挙応援で神奈川入りした小泉純一郎首相、民主党の前原誠司代表も、在日米軍再編や基地被害の具体的な問題ではだんまりを通しています。一方で、小泉首相は「抑止力を維持する」と述べ、米軍基地の永久化だけに固執しています。

■各党の態度

■日本共産党は 基地強化にきっぱり反対

 「これ以上の基地強化の押し付けをやめさせて緑と平和の神奈川をつくりましょう」―。日本共産党は力強く訴えています。

 日本共産党は、第一軍団司令部がイラクで多数の民間人を殺害している「掃討作戦」の先兵である「ストライカー旅団」などを指揮する司令部であることなど危険性を繰り返し告発。昨年四月の参院決算委員会で、当時の川口外相を「(司令部移転を)認めるなどということは絶対にあってはならない」と追及しています。

 米軍機の爆音や原子力空母の配備、池子の米軍住宅の追加建設などにもきっぱり反対しています。

■自民 再編推進の張本人

 「外務大臣 川口順子殿」。こうあて先が記された複数の要請文があります。昨年九月まで外相だった自民党の川口氏に対し座間・相模原両市は再三にわたり、(1)第一軍団司令部の移転反対(2)日米協議に関する情報提供―を求めてきました。

 川口氏は二〇〇二年十二月の日米協議で、在日米軍の再編を合意した当事者です。しかし、地元自治体の要請を無視し、何ら情報提供をしないまま、日米間の協議を着々と進めてきました。

 今回の選挙でも、在日米軍再編で「抑止力の維持を図」(神奈川新聞九日付)ると主張し、第一軍団司令部の移転容認が本音。まさに、神奈川の米軍基地再編・強化のための“刺客”です。

 米軍機の騒音問題も「軽減」は言うものの、「日米安全保障条約の役割をきちんとやっていく上で(米軍の)訓練は重要」(〇二年七月九日、衆院安全保障委員会)という立場です。

■民主 “司令部移転は必要”

 民主党は「基地恒久化につながるような再編は認められない」(神奈川新聞九日付)と述べています。しかし、民主党自体は「日米同盟」強化のため、第一軍団司令部の移転は必要という立場です。

 前原誠司代表は昨年十一月、自民党の国防族議員や軍需企業が参加する日米安保戦略会議で、第一軍団司令部の移転について「そういったヘッドクォーター(司令部)を置くことの五十年を見渡した必要性」を日本政府は説明すべきだと求めています。長島昭久「次の内閣」安全保障相も自著で「(第一軍団司令部は)八百人程度の司令部機能のみで、…実質的負担はそれほど大きくない」などと主張しています。

■司令部移転問題とは――

■先制攻撃の態勢づくり

 米軍は今、先制攻撃の戦争を地球上いつでもどこでも実行できる態勢づくりを進めています。

 陸軍は、軽量で中型輸送機でも輸送できる戦闘車両を配備した「ストライカー旅団」を増強。司令部もあらゆる事態に即応できるよう改編が進められています。

 そのために、日米両政府が座間への移転を狙っている第一軍団司令部も、新しい司令部(UEX)になります。同司令部は、戦時には陸軍だけでなく海・空軍、海兵隊の部隊や他国の軍隊も指揮する先制攻撃戦争のための総司令部になります。

 しかも、大野功統防衛庁長官は十一日の参院外交防衛委員会で、新設される陸上自衛隊「中央即応集団」司令部のキャンプ座間への設置を「検討中」だと答えました。

 同司令部は、陸自の最精鋭部隊を束ねた対テロ・海外派兵の総司令部です。第一軍団司令部と一体化し、海外での戦争に日米が共同で作戦する仕組みまでつくろうとしています。

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