2005年9月28日(水)「しんぶん赤旗」

個人年金保険トラブル急増

「儲かる」と契約時に甘言

実は元本保証ない商品も


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 公的年金の改悪が繰り返されるなか、銀行窓口での販売が解禁された個人年金保険の新規加入が急増し、契約トラブルも続発しています。

 個人年金は、退職金などまとまったお金の運用を保険会社に委託し、その運用益がでた一定期間後(十年程度)に年金として返してもらうものです。若年時から支払う保険料の半分を事業主が負担する厚生年金や給付の三分の一を国が負担する国民年金と違い、元本保証のないリスク商品の販売も認められています。

 生命保険会社三十九社が加盟する生命保険協会によると、二〇〇一年度の新規契約数は五十一万件でした。それが、銀行窓口での個人保険契約が解禁された〇二年度には七十五万件に跳ね上がり、〇四年度には百三十七万件。〇一年度から三年間で二・七倍という伸びを示しています。

 一方、個人年金の契約をめぐる苦情を受けつけている国民生活センターの相談件数もうなぎ昇りとなっています。〇二年度(十月から三月まで)に二十五件だった銀行窓口販売の個人年金に関する相談は、〇三年度九十三件、〇四年度には百四十六件と、二年間で五倍に膨れ上がりました。

 相談者の四割は七十歳代の高齢者で、平均契約金額は七百七十万円。なかには「重要事項説明書を契約後に渡され、帰宅後にリスクの高い商品とわかった。すぐにクーリングオフを伝えたが、窓口で契約したのでできないと言われた。解約したが数十万円の損失だった」など説明不足が原因で重大な損害を受けたケースも目立ちます。

 「銀行に退職金を下ろしに行ったところ勧誘された」などのケースもあり、国民生活センターでは、銀行業務で得た個人情報を本人の同意のないまま保険勧誘に利用したとみられる、法律違反のケースも目立つとしています。こうしたなか同センターは消費者保護の強化などを求めて、金融庁や生命保険協会、全国銀行協会などに要望書を提出しています。

■公的年金への不信の中で

■解説

 民間の個人年金の新規契約増の背景には、公的年金にたいする不信、不安の高まりがあります。改悪が繰り返されるなか二〇〇二年に総務省が行った「個人年金に関する市場調査」では、老後の生活に不安を持っていると答えた人は79・5%にのぼりました。そのうち八割以上が「公的年金や企業年金などが受けとれるだろうか」を不安の理由にあげています。

 こうした不信・不安を決定的にしたのが、小泉内閣が提案し、強行採決で〇四年六月に国会で成立した前回の年金改悪です。厚生年金・国民年金の保険料は十年を超える連続値上げとなり、給付は少子化・高齢化と連動して将来にわたって削減される改悪がもりこまれ、国民の年金不信を決定的にしました。

 この改悪は厚労省所管の審議会で〇二年一月から検討に入り、〇三年十二月に与党合意としてまとまり、〇四年の法案提出・強行採決となります。

 この経過を追うように増えていった個人年金の新規契約。個人年金の販売が解禁された銀行窓口では、年金暮らしで生活費を少しでも増やしたいお年寄りを標的に、「お得」「儲(もう)かる」「有利」などの甘い言葉を浴びせ、トラブルの続発を招いたことになります。(大谷 直)


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