2005年9月24日(土)「しんぶん赤旗」
年金担保融資の被害こんなに
違法性知られていない
貸金業者が、高齢者の年金証書や通帳、印鑑などを預かる年金担保融資で全国に深刻な被害が出ています。昨年十二月の貸金業規制法改定で、年金担保融資に罰則規定が設けられましたが、なお被害はなくなりません。その一原因は、被害者が違法な融資であることを知らないこと。年金担保被害対策全国ネットワークは、悪質な業者を告訴・告発するよう呼びかけています。同ネットが収集した被害事例であらためてその実態をみると――。
■受給6万円、返済に4万
私(一九二七年生まれ)は、生活費に困って、夫には内証でファミリー年金(大阪)にいってお金を借りました。ファミリー年金の従業員は「三十万円やったら貸してあげる。年金が入るごとに十万円ずつ返してくれ。年金証書と年金が入る通帳と印鑑を預けてほしい」といいました。
二〇〇一年、夫が金を借りているファミリー年金(西宮)へ行き、夫が死んだのでもう返済できないといいに行きました。従業員は「それなら、奥さんに二十万円貸すから、それで夫の借金を返せばいい。これからは奥さんの年金から四万円ずつ返してもらう」といいました。一カ月六万円強の年金から四万円も取られて、生活していけません。テレビの番組で、年金担保が違法であると知りました。
■15年の間、取られ続け
六十歳を過ぎると、普通のサラ金業者は金を貸してくれません。一九八八年の春ごろ、大阪ローンという店に入りました。店員が借金の申し込み用紙を見て「あれ、Aさん六十歳なんやったら、もっと貸してあげられる。年金証書と年金が入る通帳と印鑑を持って出直してきて」といいました。
私は、生活費の足りない分の数万円を借りようと思っていました。しかし、二十二万円も貸してくれました。
返済のため年金をとられたうえ、一九九八年以降は、アルバイトもできなくなり生活は苦しくなりました。食費も不足する状況になり、自殺を考えたこともあります。テレビの番組で、年金融資が違法であると知り、大阪クレジット・サラ金被害者の会に相談に行き、弁護士さんを紹介してもらいました。結局、十五年もの間、年金を取られ続けてきました。大阪ローンのことをお金を貸してくれる良い人と錯覚までしていました。
■広告で見つけて、つい
私は夫に先立たれ、二カ月に二十二万円の遺族年金の支給を受けています。一九九八年、新聞の折り込みチラシで「年金ライフ」の広告を見かけました。住所、電話番号、貸金業の登録のほか、年金を担保にお金を貸す、という内容が書かれていました。営業が違法ではないかということはまったく考えもしませんでした。「年金ライフ」からお金を借り入れてから、私の手元に年金が二カ月で九万円ほどしか入らなくなりました。二〇〇三年十二月、テレビのニュースを見て、自分も被害者ではないかと思い、大阪クレジット・サラ金被害者の会に行き、初めて違法なことを知りました。
■業者を告訴・告発して
年金担保被害対策全国ネットワーク・関井正博事務局長の話 もともと年金担保融資は、厚生年金保険法、国民年金法、国家公務員共済組合法、児童手当法、雇用保険法などで、禁止されていましたが、罰則がありませんでした。われわれも運動し、昨年十二月に貸金業規制法が改正され、罰則規定が設けられました。だから、簡単に破産処理しないで、悪質な業者はできるだけ告訴・告発して、被害防止に役立ててほしい。被害の相談は、年金担保被害対策全国ネットワーク(電話06―6361―0546)や、全国の司法書士会や弁護士会の相談窓口、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会加盟団体で受けつけています。

