2005年9月16日(金)「しんぶん赤旗」

フジ虚偽放送で東京高裁

名誉棄損認めず

番組の問題点は指摘


 フジテレビの番組が日本共産党にかかわる虚偽の事実を放送し、名誉を棄損された日本共産党が同社に訂正・謝罪放送と損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(濱野惺裁判長)は十五日、「放送は全体として名誉棄損を構成するものとはいえない」などとして、日本共産党の控訴を棄却する不当判決を言い渡しました。

 判決は一方で、番組の問題点も指摘し、番組を見た視聴者が日本共産党に対する誤解を持った可能性に言及しました。

 問題の番組は二〇〇三年の総選挙前に放送された「完全再現! 北朝鮮拉致…25年目の真実」。公安警察に就職あっせんを依頼したため除名された兵本達吉氏について、兵本氏役と妻役が「クビになるかもしれん」「拉致問題ですね」「…ああ」などと会話するなど、兵本氏があたかも拉致問題に取り組んだことを理由に除名されたかのように描きました。

 判決は、問題部分について「拉致問題を理由に除名されたと受け取れる面がないとはいえない」とし、日本共産党に対する誤解が「生じる可能性もないとはいえない」と指摘。しかし、「除名理由は明示されていない」などとし、拉致問題が除名理由だと理解するのは「躊躇(ちゅうちょ)される」としました。

 そのうえで、番組が日本共産党の橋本敦参院議員(当時)の質問を描写し「日本共産党が政党活動として拉致問題に積極的にかかわり、政府答弁を引き出した活動に光を当てている」とのべ、「全体の描写を総合考慮すると、拉致問題を理由に除名されたと理解することは困難」として、一審判決の「結論は相当」だと結論付けました。

 判決はまた、兵本氏があたかも除名後に拉致被害者家族会立ち上げに奔走したかのように描いているなど、「時系列に沿った番組進行がされてなく、誤解を生じさせる可能性がないとはいえない」と番組の問題を指摘しました。


■控訴棄却に厳しく抗議

■市田書記局長が談話

 フジテレビが一昨年九月に放映したドキュメンタリードラマ番組で、日本共産党にかんして虚偽の事実を放送し名誉を棄損したことに対し、東京高裁は九月十五日、日本共産党の控訴を棄却する判決をおこなった。

 フジテレビは放映されたドラマのなかで、日本共産党を除名された兵本達吉氏が、北朝鮮拉致問題での調査活動のゆえに党から除名されたなどと放送した。しかしこれは、党が“兵本氏の除名理由は公安警察に就職の斡旋(あっせん)を求めたことにある”と公表している事実を無視したものであり、拉致問題の解明と解決に積極的役割を果たしている日本共産党を、拉致問題の解明を妨害する政党であるとの印象を与えた。

 党はフジテレビに対し、同ドラマ番組の訂正放送を請求した。しかし、これが拒否されたため、放送法にもとづく訂正放送と民法にもとづく名誉回復のための謝罪放送、損害賠償を求め、控訴審をたたかってきた。

 控訴審で日本共産党は、一審判決が、テレビ放送の名誉棄損について放送全体を総合的に考慮して判断すべきとした最高裁判例に反していると指摘した。そして、フジテレビが日本共産党を取材せず、党が発行する諸文献にもとづかず、ドラマを導入しながら、あたかも真実を放送したかのように宣伝し、視聴者に対し、日本共産党について意図的に否定的な印象を与えたことを見落としているときびしく批判し、論証してきた。

 高裁判決は、兵本氏除名にかんする放送は、「『兵本が拉致問題に取り組んだことを理由に党から除名された』かのような描写として受け取れる面がないとはいえない」と認定し、視聴者に誤解を生じさせる可能性のある場面が多々あることを認めた。しかし、その一方で、橋本参議院議員らの国会質問など党が拉致問題に積極的に取り組んでいることも描写しているとして、「日本共産党に対する社会的評価が低下するような重要な影響を及ぼすものとは言い難い」と、名誉棄損を否定し、日本共産党の主張を退けた。

 テレビ放送は視聴者につよい影響力をもっており、本件虚偽放送によって党の社会的評価を低下させたことは明白である。

 日本共産党は、放送法で要請されている公共放送の責任、および民法上の賠償責任を否定した東京高裁判決にきびしく抗議するものである。


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