2005年9月12日(月)「しんぶん赤旗」

配偶者からの暴力

DVなくせ

自治体の取り組みにみる


 配偶者、恋人への暴力であるドメスティックバイオレンス(DV)。「夫婦間でも暴力は犯罪」と、各地で被害者支援と根絶にむけた対策が取り組まれています。昨年十二月の改正DV防止法では、国と自治体の被害者にたいする自立支援の責任を明記しました。支援ボランティアの養成、家賃への助成、加害者の啓発と更生のプログラム――、自治体の役割が大きくなる中、自治体独自にこんな取り組みがはじまっています。


■東京都

■加害者への啓発や更生も

■充実求めてきた党都議団

 日本共産党東京都議団は、DV被害根絶をめざし、文書質問や委員会などで具体的な提案をおこない、施策の充実を求めてきました。

 東京都配偶者暴力相談支援センター(ウィメンズプラザ、女性センター)への相談は、DV法が施行された二〇〇一年度には三千三百三十四件だったのが、〇三年度には九千二百五十三件と約三倍に増加しました。DV被害者の多くが女性ですが、泣き寝入りしないで自分らしい生き方を求めたいという意識の変化が、相談数の増加に示されています。

 党議員団は、増加するDV問題で被害者支援を要求し、都は〇三年度から、子どもを連れた被害者のための一時保護施設に保育士を配置。〇四年度には、東京都女性センターに心理職員一人と婦人相談員二人を増配置しました。

 また、被害者の都営住宅への優先入居も要求。国が五十歳未満の単身女性を「DV被害者ならば入居対象にする」との方針を出したことで、都は国の政令改正に備えた手続きを始め、優先入居の可能性についても検討する考えを示しています。

 加害者への対策も重要です。加害男性の中には、妻や子が突然、姿を消してしまったことに戸惑い、自分自身の生き方を見失っている人が少なくありません。これらの男性に「DVは犯罪である」と認識させる啓発と更生策を行うことも提案しました。その後、都では加害者への啓発リーフレットを発行。内閣府の委嘱を受けた都では昨年度に「加害者更生プログラム」を試行。合計十八回の実習に六人が参加しました。プログラム実施の効果は現在、検証が行われているところです。

 〇四年度の法改正で、法定計画として義務づけられた都の基本計画は今年度中に策定される見通しです。あわせて、東京都男女共同参画審議会の最終報告を受けて、区市町村や関係機関と連携した「被害者支援基本プログラム」も策定中です。

 今後の課題として、改正DV法にもとづき区市町村が「配偶者暴力相談支援センター」を設置できるよう国や都が支援すること、一時保護施設の被害者受け入れ体制の拡充、民間シェルター、ステップハウスなどへの支援の充実、被害女性の就労対策や子どもたちへのケアの強化などが重要になっています。

 今期、日本共産党は都議会で女性議員第一党(六人)になりました。その力を発揮し、DV防止策の充実をはじめ女性の人権が尊重される都政の実現へ全力を尽くす決意です。

(河野ゆりえ東京都議)

■札幌市

■対応の拠点 秋に設置

■4.3倍 急増する相談窓口に

 札幌市のDV相談件数は、一九九七年の九百三十八件から二〇〇四年には四千五十一件へと、四・三倍に急増しています。

 八月、市長の付属機関である男女共同参画審議会は、「札幌市のDV対策の方向性について」の答申をまとめました。市はこの秋にも答申をふまえ「配偶者暴力相談支援センター」を設置する予定です。

 「支援センター」は、相談と自立支援を主要な機能と位置づけ、関係機関と連携したDV被害者の総合的な支援体制の拠点となります。これまで道警や道立女性相談援助センターに限定されていた法的権限が、改正DV法で「市町村においても機能を果たすことができる」と規定されたことで、保護命令の権限や自立支援、といった役割を市の「支援センター」も担うことになります。

 DV被害者の緊急一時保護にとどまらず、自立支援をしていくうえで、精神的ケアの継続、生活保護をふくめた経済的自立とあわせ、「住まい」も重要な課題です。一時保護施設は平均二―三週間の入所ですから、退所した後、一定の期間安心して入所できる住居が必要です。市営住宅のうち、一定の戸数をDV被害者の自立へのステップハウスとして活用することも検討すべき課題と考えています。

 私は〇四年十月の議会で改正DV法を受けて、市独自の支援センターをつくり、専門家などの必要な人材を確保することを求めました。

 札幌市ではこれまで、行政と民間で「女性への暴力(家庭内暴力)」対策関係機関会議をつくり活動。一九九七年にスタートした同会議は全国的にも注目を集めました。いま、いっそうの充実強化が求められているなか、札幌市は、新たな一歩を踏み出そうとしています。

(飯坂宗子札幌市議)

■鳥取県

■自立支える家賃補助

■ボランティア養成も支援

 鳥取県では、DV問題について早くから取り組みを進め、昨年十二月に支援計画を発表しました。

 そこでは「現在の国の制度では対応できない問題についても、県独自の施策を推進する」と指摘。(1)DVは家庭内で起こる単なる暴力でなく、重大な人権侵害である(2)DVが行われている家庭の子どもや家族も被害者である(3)暴力を防止し、被害者を支援することは行政の責務である――などの基本理念をかかげ、取り組みを進めています。

 相談件数は、二〇〇四年度には五百十九件となり、〇〇年の倍近くに増加。一時保護の状況を多い順に見ると、民間シェルターに五十一人、社会福祉施設に三十人、婦人相談所一時保護所に十二人となっており、民間シェルターが大きな役割をになっています。

 〇二年九月県議会で日本共産党の大谷輝子県議(当時)が「県立婦人保護施設の再建と民間シェルターへの財政支援の強化」を求めました。片山善博知事は「県として、今日のDVの状況、残念ながら拡大する状況をにらみ、この機能をどう確保するかは大きな課題と認識」と答弁しました。

 鳥取県では〇一年から民間シェルターにたいし、一時保護のために借り上げた借間の家賃、敷金などを助成する単県事業を開始。その翌年からは、被害者が一時保護後に自立するための住宅賃貸料(単身なら家賃三万五千円、敷金・礼金などに七万円)の補助を行ってきました。

 今年度からはボランティア養成の事業の経費の半分を補助する事業を始めました。また加害者からの電話相談を今年中に試行する予定です。

 今後、これら県の支援が、どのような効果をあげるか注目されるところです。

(鳥取県・中村宏記者)


■改正DV法

 昨年十二月に改正し、配偶者(事実上の婚姻関係も含む)からの暴力を対象とし、これまでの暴力の定義では身体的暴力のみとしていたものから、精神的、性的暴力も含めました。生命や身体に危害が加えられることを防止する保護命令では、配偶者だけでなく同居する子どもへの接近禁止を対象に加え、実効性を高めました。

 国と自治体に被害者への自立支援の責任を明確化し、都道府県に基本計画の策定を義務づけました。そのうえで国は、地方の指針となる基本方針を定めています。基本方針には、住民基本台帳閲覧の制限、雇用・住宅での支援、健康保険取得と子どもの就学での対応などを盛り込んでいます。日本共産党は賛成、全会一致で成立しました。


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