2005年9月12日(月)「しんぶん赤旗」
ニュージーランド総選挙
「行革」の見直し推進か逆転かが争点
任期満了に伴うニュージーランド総選挙(定数百二十)が十七日に投票日を迎えます。一九九九年以来、二期六年続いた労働党政権の実績が問われます。最新の世論調査では、保守の最大野党、国民党が激しく追い上げ、両党の支持率は拮抗(きっこう)しています。
九九年に国民党から政権を奪還した労働党は、クラーク首相のもとで、「行財政改革」の見直しを行ってきました。今度の選挙は、労働党がこの路線を継続していっそうの見直しを進めるのか、それとも「行革」路線に後戻りするのかが最大の争点となっています。
九九年に労働党が勝利した背景には、国民党政権下の「行革」で増加した失業、犯罪に対する国民の不満がありました。規制緩和や国営事業の民営化推進の「行革」路線そのものは労働党政権が八四年から開始し、その後国民党政権に引き継がれたものですが、九九年の選挙で労働党はその路線からの「脱却」を訴えて期待を集めました。
■国民の失望
政権復帰した労働党は、左派の連合党と連立して、労働法制の改善や郵便貯金の復活などを実現し、国民の要求に一定応えました。国民の支持も広がり、二〇〇二年の総選挙では、三議席増の五十二議席と躍進しました。
ところが二〇〇二年に連合党が分裂・解散。労働党政権は、影響力のある連立相手を失って以来、目に見える実績を上げられませんでした。
連合党選出の国会議員として、九九年から〇二年まで女性相と青年相を務めたライラ・ハーレ氏は指摘します。
「過去三年間、労働党政権は、財政黒字を社会保障に還元することなく、ただ積み上げるだけでした。いま国民党は黒字分を減税に充てると主張しています。労働党に失望した国民は、減税を公約する国民党を支持するようになっています」
経済が好調とされても労働党への国民の目は厳しくなっています。オークランド大学法学部のジェーン・ケルシー教授も、「いまの労働党は将来を見据えた一貫性のある政策をもっていない」といい切ります。
一方、ブラッシュ前中銀総裁が率いる国民党は、破たんした新自由主義「行革」路線を再び徹底すると主張。争点を減税に絞る選挙戦を展開しています。
見逃せないのは非核政策についての同党の態度です。
八七年に成立した非核法は、ニュージーランド外交の独立性を示すシンボルです。原子力推進艦船の寄港と核兵器を搭載した艦船と航空機の寄港、着陸を禁じたために、米国は猛反発し、八六年には同盟関係を一方的に破棄しました。
国民党は、非核法改定の立場を打ち出していますが、国民の反発を予想して、まず国民投票を行ってから改定すると主張しています。
■注目の政党
両党の支持率が拮抗するなかで注目されているのは、キャスチングボートを握る第三政党です。世論調査で議席獲得が見込まれているのは、緑の党とニュージーランド第一党です。
九議席をもつ緑の党は、環境・エネルギー政策のほかに、全国民を対象に年一回の無料健康診断の導入を公約、労働党との連立政権に参加する意向を明確にしています。一方、移民排斥を主張する右派のニュージーランド第一党は十三議席。アジア系移民やイスラム教徒を非難し、国民のなかに不安をかき立てて支持を得る作戦をとっています。(中村美弥子 写真も)

