2005年9月11日(日)「しんぶん赤旗」

エジプト大統領選

ムバラク氏5選

初の複数立候補 投票率23%


 【カイロ=小泉大介】エジプト大統領選挙管理委員会は九日夜、七日に投票された同国大統領選で、現職のムバラク大統領が得票率88・6%を獲得して当選したと発表しました。一九八一年から大統領職にあるムバラク氏は五期目に入り、新たに六年の任期を務めることになります。選挙にはほかに野党から九人が立候補、二位はガッド党のヌール党首(得票率7・6%)、三位は新ワフド党のグマー党首(同2・9%)でした。

 注目された投票率は23%で、ムバラク氏の信任投票としておこなわれた前回選挙(九九年)の79%から大幅に低下。

 今回の大統領選挙は、五月の国民投票で実現した憲法改正により、人民議会(国会)が選出する大統領候補一人にたいする信任投票制が廃止され、史上初となる複数立候補による直接投票制の下でおこなわれました。

 ムバラク大統領は選挙戦で、首相や議会の権限強化などさらなる政治改革と民主化、さらに今後六年間で新たに四百万の新規雇用を創出するなど経済改革を訴えました。野党側は、ムバラク氏の多選や現政権の抑圧体制を批判し、民主化の徹底を訴えました。

 一方、一部有力野党は、選挙制度改正にもかかわらず、独立系の立候補に厳しい制限が加えられるなど改革不徹底を理由に大統領選をボイコット。さらに二位となったヌール氏が投票時に大規模な不正があったとして再選挙を要求するなど、今後に課題も残しました。


■解説/民主化への第一歩本格化は議会選で

 今回のエジプト大統領選挙は、同国史上初の複数立候補制度のもとでおこなわれ、「民主化の第一歩」として国際的な注目を集めました。

 人民議会(定数四百五十四)で九割近い議席を持つ与党・国民民主党の党首であるムバラク氏が五選を果たすことは当初から確実視されていました。このことが23%という低投票率の原因の一つともみられています。

 信任投票制度でおこなわれた過去の大統領選挙では、投票率は八割から九割とされていました。これが大幅に水増しされた数字だとの見方は常識となっていましたが、今回は選管が実態に近い数字を発表したといえます。

 背景には、民主化を求める世論の高まりがあります。今年二月にムバラク大統領が選挙制度改正を表明したのは、昨年十二月以降、市民組織「キファーヤ(もう十分)」などが公然と大統領の五選阻止などを掲げた集会を開催するという流れの中でのことでした。

 エジプトでは「非常事態令」により集会やデモが禁止されています。「キファーヤ」や一部野党は、選挙制度改正の不徹底を理由に大統領選ボイコットを決めましたが、選挙戦の最中もデモを開催するなど民主化の徹底を要求。この間、国営テレビが大統領批判発言を放送するなど異例の事態が生まれました。

 投票日当日には、野党はもちろん、さまざまな市民グループや裁判官らが公正な選挙実施を求め投票所の監視活動を展開しました。選挙をボイコットした野党・国民進歩統一党の幹部からも「選挙は予期していたよりも積極的なものだった」との声が出ました。

 問題を抱えながらも、変化の兆しを見せ始めたエジプト政治。民主化の流れが本格化するかどうかは、今年十一月に実施が予定される人民議会選挙で試されることになります。

 (カイロ=小泉大介)


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