2005年9月7日(水)「しんぶん赤旗」
JR西の経営姿勢、国交省の管理責任明確にせよ
速度抑制できる自動列車停止装置(ATS―P)の地上装置が現場のカーブ手前にあれば、痛ましい大惨事は防げた――航空・鉄道事故調査委員会が六日公表したJR西日本福知山線脱線事故の経過報告は、あらためてこのことを裏付けました。百七人の犠牲者と遺族の無念にこたえるためにも、事故の直接原因にとどまらず、JR西日本の利益優先体質、運輸行政の問題点まで深くメスをいれることが重要です。
脱線車両に搭載されたATSの車両搭載装置やモニター装置の解析から、脱線した207系快速電車は、制限速度七〇キロのカーブに一一〇キロ以上で進入していました。
ATSの地上装置があれば、運転士が仮に意識をなくしていても急ブレーキがかかって停止することができました。
実際、事故列車は、事故の約二十五分前にも速度超過で宝塚駅に進入し、ATSが作動して急ブレーキがかかって停止していました。速度抑制型のATS配備がなぜ遅れたのかという問題点、「稼ぐが第一」を公然と掲げたJR西日本の営利優先体質なども記述されていません。
速度抑制型ATSの整備が遅れたのには、政府にも大きな責任があります。国鉄分割民営化のさい、政府はそれまで民間鉄道会社に義務付けていたATS整備の通達を廃止しました。この結果、民間会社になったJRは速度抑制型ATS整備の義務を逃れました。安全確保を各社まかせにした政府の責任は重大です。
事故からすでに四カ月余が経過しましたが、今回の経過報告では、なぜ運転士が制限速度を大きく超える速度で進入したか――という核心は解明されていません。
事故の原因を運転士に押しつけるのでは事故の教訓が生きません。運転士いじめの「日勤教育」などをおこなったJR西の経営姿勢や、国土交通省の管理責任などを明らかにすることが避けて通れない課題です。(宇野龍彦)

