2005年8月30日(火)「しんぶん赤旗」

6党党首討論会

志位委員長の発言(大要)


 二十九日に開かれた日本記者クラブ主催の六党党首討論会で各党と日本共産党の志位和夫委員長が発言した部分(大要)を紹介します。出席はほかに自民・小泉純一郎総裁、民主・岡田克也代表、公明・神崎武法代表、社民・福島瑞穂党首、国民新党・綿貫民輔代表。


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党首討論会で発言する志位和夫委員長=29日、東京・日本記者クラブ

 党首討論の第一部冒頭では各党首が「有権者に一番訴えたいこと」を二分間ずつ発言しました。

 小泉氏は「国民に郵政民営化が必要か、賛成か反対かを聞いてみたいと解散・総選挙に踏み切った」「経済活性化、景気回復、将来の社会保障の税負担軽減のためにも必要だ」と郵政民営化問題に絞って発言しました。

 岡田氏は「とくに強調したいのは年金と子育てだ」として、年金目的消費税を導入する年金「一元化」案や月額一万六千円の「子ども手当」を主張。しかし消費税増税や所得税の各種控除を廃止して「手当」に充てる案についてはのべませんでした。

 神崎氏は総選挙の争点が郵政民営化であり「『構造改革』のシンボルであり突破口だ」として、自公両党で過半数を確保し次期国会で法案を成立させるとのべました。


■有権者に何を訴えるか

■たしかな野党・共産党を伸ばせば政治に新しい展望が開かれる

 志位氏は次のように述べました。

 志位 今度の選挙で、私たちは、たしかな野党・日本共産党を伸ばせば、日本の政治に新しい展望が開けてくることを訴えてたたかいたいと思っています。

 第一に、私たちは、小泉・自公政権に真っ向から対決して、国民のくらしを守りぬきます。首相は「改革を止めるな」とおっしゃいますが、「改革」の名でやられてきたことは、いのちを削る社会保障の切り捨てであり、安定した雇用と賃金の破壊であり、財界・大企業にはバブルのときを上回る空前のもうけを保障することでした。

 私たちは、歴代内閣のなかでもきわだった財界応援のこの政治に真っ向から対決して、国民のくらしを守りたい。とくに、大銀行のもうけのために国民のサービスを切り捨てる郵政民営化には、きっぱり反対です。

 第二に、自民、民主の「二大政党」がいっしょになってすすめている庶民大増税―消費税の増税、サラリーマン増税、これを食い止めるためにがんばりぬきたいと思います。

 また、憲法九条をかえて、日本をアメリカといっしょに「海外で戦争をする国」にする、そのくわだてにはきっぱり反対をつらぬいて、平和を守ってまいります。

 第三に、国民の切実な要求を国政に届けるかけ橋として、がんばりぬきたいと思います。この間も、サービス残業の根絶、介護保険の利用料・保険料の減免、三十人学級に向けた前進など、国民のみなさんの運動と結んで、いろいろな実績をあげてきましたが、議席を増やしていただけましたら、もっと大きな仕事ができる。このことを訴えたいと思います。

 最後に第四ですが、私どもは、道理に立った自主外交で、世界とアジアにはたらきかける仕事も重視したいと思います。イラク戦争に反対する国際的な共同を、この間やってきました。靖国問題を打開して、アジアとのほんとうの友好関係をつくるための仕事もやってきました。日本外交の八方ふさがり、この打開のために、野党としても力を尽くしたいと思います。

 どうか、たしかな野党・日本共産党をよろしくお願いします。


■サラリーマン増税

■与党「大綱」を「撤回」しないままで「増税しない」といっても“空約束”

 続いて各党首が相手を指名して質問する討論に入りました。志位氏は小泉氏と増税問題で議論しました。

 志位 小泉さんに質問いたします。

 政府税制調査会が六月二十一日に打ち出したサラリーマン大増税の問題は、今回の選挙の大きな争点だと思います。これは所得税について定率減税を廃止し、そのうえで扶養控除・配偶者控除を廃止し、給与所得控除縮小などして、大増税を行うというものですが、消費税の二ケタ増税化とセットでやられますと、総額二十四兆円もの巨額増税となります。年収五百万円の四人家族の場合、五十五万円もの増税となります。

 この問題について自民党は、「政府税調が勝手に決めたものだ、サラリーマン増税は行わない」といっておられますが、そういうほおかむりでやりすごそうというのは、私は通用しないと思います。なぜなら、控除見直しによる所得税の増税計画をいいだしたのは、自民党と公明党だったからであります。

 私は、ここに、昨年十二月十五日に自民党と公明党が決めた「与党税制改正大綱」を持ってまいりましたが、ここには所得税の「控除の見直し」がはっきり明記されており、しかも来年の通常国会でそのための法改正をすることまで書かれております。

 そこで小泉さんに端的にうかがいます。「サラリーマン増税を行わない」ということが、言い逃れのとりつくろいでないというのならば、「控除の見直し」をうたった与党の税制改正大綱を撤回すべきだと思いますが、イエスかノーか、撤回するのかどうか、端的にお答えください。

 小泉 テレビの〇×じゃありませんしね、イエスかノーかと、そういうことじゃなくて、いわゆるサラリーマン増税というのは行いません。税制全体を見て税改正を行うんです。よくいうサラリーマン増税、サラリーマンだけに税金を押し付ける、そのようなことはいたしません。これは税制全体、私が在任中は消費税は引き上げない、これはもうはっきり申し上げております。

 ただし、税制改正となりますと、サラリーマンに対する増税のみならず、各種の控除の問題も当然議論にのぼってまいります。また、年金等の議論を行いますと、民主党が主張されているように、消費税の3%増税という話も出てくると思います。それについて私は、議論は封殺いたしません。

 サラリーマンに対する税にしても、企業に対する税にしても、あるいは一般国民に対する消費に対する消費課税におきましても、予断を持たないで、全体の税制改正をする議論が必要だと思っています。しかし私の在任中は、行財政改革を徹底的にする。まず歳出削減なり、行政改革、財政改革、将来の税負担を過大にしないように、行財政改革に専念するということであって、いわゆるサラリーマン増税というものは、行う考えはございません。

 志位 サラリーマン増税をやらないと一方でいいながら、いま私が聞いたのは、与党が所得税の「控除見直し」―この号令をかけているわけですよ。それに即して政府税調がサラリーマン増税の方針を具体化したわけです。もとは与党なんです。それを撤回しなければ、どんなに「サラリーマン増税をやらない」といったところで、これは“空約束”にしかならないということを、はっきり私はいっておきたいと思います。

■税制の改革というなら大企業を聖域にしてはならない

 志位 もう一問うかがいたいと思います。私たちは、税金の改革というのならば、大型開発のムダ遣い、これは当然メスを入れるべきですが、空前のもうけをあげている財界・大企業にもうけ相応の負担を求めるべきだと考えております。

 これは、経済産業省が八月二十三日に発表した資料です。ちょっとご覧ください。簡単なものです。税金と社会保険料をあわせた企業の負担を、ヨーロッパの諸国と比較したものですが、日本、ドイツ、イタリア、フランスのなかで、日本が一番企業の税と社会保険料負担が低くなっております。ドイツの八割、イタリアの六割、フランスの五割です。ここまで低くなっています。法人税を減税につぐ減税で下げすぎた結果、こうなっております。

 私は、いまただちにフランス並みにしろとはいいませんが、ドイツ並みにしただけでも七兆円くらいの財源はすぐ出てまいります。

 そこで首相に聞きたい。「財政が大変だ」「税制全体の見直しが必要だ」というのならば、国民にばかり負担を押し付けるという発想ではなくて、下げすぎた法人税率、あるいは大企業への特別な優遇の減税、これを見直すなど、大企業に負担を求める意思はないのでしょうか。それとも、ここには指一本触れない、聖域にする、これが総理のお考えでしょうか。

 小泉 大企業だけに税負担を押し付けるという観点から税制改正をするようなことはいたしません。企業税制のあるべき姿、各国が、企業がよく活発に活動できるような環境を整えること、これは経済活性化においても景気回復においても、きわめて重要であります。そういうなかで、ようやく日本において、各企業が馬力を出してきて、税収も上がってきた。これは、国民全体に対する税負担の軽減にもつながってきます。財政改革にも貢献しております。

 志位 私が聞いているのは、大企業だけにとおっしゃったけど、大企業を聖域にするつもりなのかと、負担を求めるつもりはあるのかということを聞いたんです。

 小泉 聖域を求める考えはありません。大企業だけに押し付ける考えもありませんし、企業税制というのはどうあるべきか、企業が活性化するためにはどのような税制が必要か。世界的なグローバル市場において、日本の企業がどんどんどんどん、税金が高いために外国に逃げないような企業税制はどうあるべきかという観点から、私は税制を考えるべきだと思っております。

 志位 財界に負担増を求めるということは、どうもお考えがないようです。いま財界・大企業は八十二兆円もの余剰資金を抱えている。もう金余り状態です。この財界に応分の負担を求めろという声は、ずいぶん広がっています。ここに踏み切らないと、庶民に増税ということになりますから、この点を強く求めて、私の質問を終わります。


■与党の「争点」について

■「郵政民営化」しかいわないのは民主政治こわすもの

 第二部では、会場からの質問に各党首が答えました。まず、参院で郵政民営化法案を否決したことから衆院を解散し、郵政のみを争点にしている小泉首相の姿勢について討論。「議会制民主主義のうえから問題があるのではないか」と問われた小泉氏は「郵政民営化法案の否決は内閣不信任と同じだといってきた。結果的に国会は法案を必要ないと否決し、異例ではあるが解散に踏み切った」とのべました。

 志位氏は次のように答えました。

 志位 私はいまの議論をずっと聞いていて、小泉さんは郵政民営化しかいわないわけですよ。今日の発言もそうですし、演説でも。郵政民営化一本に絞ってほかのことを一切いわない。そして勝ったら郵政民営化法案を九月の国会で通すというんでしょう。そうすると九月までの公約しかいわない。後は全部白紙委任でおれに任せろというのは、民主政治を壊す独裁政治だと思いますね。


■郵政公社のままで大丈夫か

■民営化で赤字にしてつぶすのが郵政民営化の本質

 討論は郵政民営化の中身に移り、首相は選挙後の特別国会に提出する郵政民営化法案について、「法案の基本的な中身はかえない」と発言。岡田氏は、同党が郵貯の預入限度額を半減すると主張していることについて、経営が成り立たなくなるのではないかと問われ、「成り立たないとすれば、身の丈にあった形にもっていかないといけない」とのべました。

 志位氏は、郵便局を減らさないと先細りになって、巨額の金を投ずることになりはしないかと問われ、次のようにのべました。

 志位 国会の質疑のなかで、竹中平蔵郵政民営化担当相とわが党の議員がずいぶんつめた議論をやったのです。そうしますと、二〇一六年、だいたい完全民営化が終わった時点での試算なのですけれども、民営化した場合には六百億円の赤字になる、郵貯銀行が。しかし公社のままだったら千三百億円の黒字だと。こういう試算なのですね。

 結局、民営化しますと、預金保険料をかなり払わないとならない。預金保険料は、銀行の全体の倒産のためのお金であって、この間、「不良債権処理」でさんざん銀行が使いはたして、もう底に穴があいてしまっているのですね。これを郵貯に払わせると、そのことでむりやり赤字に突き落とすというのが民営化だと。公社の方は黒字という試算なのです。民営化になったら赤字に突き落として、つぶしてしまおうと、ここに一番の狙いがあると思います。

 (質問者「いまのままで十分やっていけるということか」)やっていけると思います。アメリカや日本の大銀行筋が、自分たちより良いサービスをやっている郵便局ががんばっていると邪魔だから、これをつぶしてしまって、それで新しいもうけ口にしようと、この圧力で動いているのが郵政民営化の本質で、それを一番熱心にやっているのが小泉さん。こういう構図だと思います。


■自衛隊イラク派兵

■首相の「12月判断」は延長の表明多国籍軍撤退こそが情勢を打開

 外交問題ではイラクへの自衛隊派兵を議論。「十二月が撤収期限だが、延長を前提に考えているのか」との質問に小泉氏は「十二月近くになってから考える」と答えました。これを受けて「共産党はイラクからの自衛隊の速やかな撤退を主張しているが、小泉さんの姿勢をどう見ているか」と問われ、志位氏は次のように答えました。

 志位 十二月になってから考えるというのは、結局ずるずると延長するという姿勢を、いま表明されたんだと思いますね。

 いまイラクの状況というのは非常に悪い。自衛隊の宿営地も何度も襲われています。車列も襲われています。

 これはとくに、いわゆる主権移譲後も米軍がイラクの治安部隊と一緒になって、「抵抗勢力」といわれる人たちを、武力的に、武力を使って掃討作戦をやる。これが非常に、逆に治安の悪化を招いているわけです。

 そのなかで自衛隊も非常に危険な状況になっています。一方で給水はもうやっていない。仕事がないわけですね。ですから、これはただちに撤退の決断をして、すぐに引き揚げてくるということが必要です。

 それから米軍も含めた多国籍軍自体が、いわゆる「有志連合」といわれてきましたけれども、最初は三十八カ国あったんですけれど二十も抜けちゃって、もう十八ですよ。「有志連合」はガタガタに崩れている。その多国籍軍自体が、撤退のスケジュールをはっきりさせてひいてくるということが、イラクの情勢を前向きに打開するうえで一番のカギになっていると強調したいですね。


■「二大政党」について

■自民も民主も違いがみえてこない私たちは「たしかな野党」の立場で

 選挙戦と党首の責任について、小泉首相は、「(過半数に)一議席でも欠ければ退陣する」と言明。民主党の岡田代表は、「民主党政権ができなかったら、代表にとどまるつもりはない」とのべました。このあと志位氏は小泉政権と対決している共産党の姿勢について、「自民、民主に違いがないということですか」と聞かれました。

 志位 そうですね。違いが見えてきません。とくに国政の基本問題である大増税、もう一つ憲法の問題がありますね。憲法九条をかえる、九条をかえて「自衛軍」を書き込む、という点では自民党の案もそうなっています。民主党の元代表の方も、「自衛軍を書き込め」と国会で小泉さんとかけあいをやって要求しました。

 「自衛軍」を書き込んでしまったら、海外で戦争をする国になってしまいます。こういう方向、憲法をかえるといって、戦争をする国にかえてしまおうという大きな問題で、同じレールを走っているわけですから、私たちはそのことにたいして、「たしかな野党」でがんばります。


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