2005年8月21日(日)「しんぶん赤旗」

総選挙全国決起集会での報告

総選挙の政治論戦について

幹部会委員長 志位和夫


 十九日に開かれた「総選挙全国決起集会」で、志位和夫委員長がおこなった報告(大要)は次の通りです。


 お集まりのみなさん、CS通信をご覧の全国のみなさん、こんばんは。私はまず、猛暑のなかを大奮闘されている全国のみなさんに、心からの敬意と感謝をもうしあげるものです。(拍手)

 私は、この歴史的政治戦をともにたたかうものとして、総選挙の政治論戦についての報告をおこないます。

解散後の政治状況の特徴と日本共産党の立場

 まず八月八日の衆議院解散後の、政治状況の特徴についてのべます。小泉・自公政権、民主党、日本共産党──三つの陣営の特徴について報告します。

(1)小泉・自公政権──「郵政選挙」の打ち出しとその矛盾

 まず、小泉・自公政権ですが、この陣営は、解散の日の夜の小泉首相の会見を出発点に、今度の総選挙を、「郵政民営化の是非を問う選挙」だといい、「改革を止めるな」をキャッチフレーズにして、国民の支持を集める戦略を打ち出しました。これは首相なりに考え抜いて始めた、いわば正面突破の「政治的攻勢」でありました。

■財界の後ろ盾をえてはじめた戦略

 首相が、こういう戦略に打って出た背景には、財界の後ろ盾がありました。解散にいたる動きをみますと、七月十五日に、経済同友会が、軽井沢で開いた夏季セミナーで「日本を変えるために、郵政民営化法の成立と改革の加速を」との緊急アピールを発表しています。つづいて、七月二十二日、日本経団連の奥田会長は、「仮に否決されれば、小泉総理は解散に踏み切る可能性があると考えておいた方がよい」と発言しました。こうして財界は、「郵政民営化」をかかげた解散を事実上後押しする立場を鮮明にしていました。

 小泉・自公政権の「郵政選挙」という打ち出しは、財界の支援をえて、またマスコミの論調にも助けられて、国民のなかに漠然とした「改革」への期待をつくりだしました。

■この戦略は大きな矛盾をかかえている

 しかし、この戦略は大きな矛盾をかかえています。

 第一に、唯一、最大の売り物としている郵政民営化そのものが、日米の大手金融資本の要求から始まったものであり、国民の願いとはまったく無縁のものです。国民サービスが切り捨てられるという事実、誰のための民営化かということの本質を知れば、多くの国民の反対の声が広がることは間違いありません。

 第二に、この争点だけで、選挙をのりきることはできません。「小泉改革」の名での国民いじめ、庶民大増税、憲法改定、日本外交のゆきづまりなど、この内閣がやってきたこと、やろうとしていることが、いやがおうにも争点とならざるをえません。その全体に目をむければ、八方ふさがりの危機とゆきづまりが自民党政治の実態であります。どの問題でも国民との矛盾はたいへん深刻です。どの問題でも、小泉政治と真っ向から対決する日本共産党の値打ちは光っています。ここに確信をもって、堂々とたたかいぬこうではありませんか。(拍手)

■「国民新党」──郵政民営化反対の旗すら立てられず

 なお「国民新党」なる政党がつくられました。この党は、郵政民営化法案反対をとなえていたグループの一部がつくったものですが、結党のさい代表となった綿貫さんは、「郵政民営化に絶対反対とは言っていない。国民のためになる方向であれば取り上げてもいい」と発言しました。つまり、民営化反対の旗すら立てられなかった。こうなりますと国民からみて、どんな大義もみえてきません。自民党内の権力争いの一こまという以上の意味はありません。あえてこの動きに注目すべきことがあるとすれば、民主党からも参加者があったということです。これは自民と民主が、政治的立場に違いがなく、相互乗り入れ可能な政党であることをしめすものでした。

(2)民主党──小泉・自民党に対抗する足場がもてない

 つぎに民主党はどうでしょうか。この党は、小泉・自公連合の「政治的攻勢」にたいして、対抗する足場がもてないでいます。マスコミでも、「存在感示せぬ民主」、「民主党に埋没感」と書きました。「民主党 埋没されては困ります」と書いたものもありました。

■郵政問題での混迷と矛盾──どの問題でも対抗の足場がない

 この党の弱点は、とくに郵政問題での混迷にあらわれました。はじめは、民主党は「郵政民営化は争点ではない」、「もっと大事なことがある」と、この問題での論戦から逃げる姿勢でした。民主党が、この問題での論戦を回避しようとした根本には、郵貯・簡保を縮小・廃止するという方向では、自民党と基本的に同じ立場なのに、民営化法案に「反対」の対応をしたという根本的な矛盾が横たわっていました。

 民主党は、論戦の回避が通じなくなって、郵政事業の「改革案」なるものを出しました。しかしその内容は、郵貯・簡保を縮小・廃止する方向を公然と打ち出したもので、矛盾をさらに広げるものとなりました。郵貯の預入限度額を現在の一千万円から七百万円、五百万円に引き下げ、郵貯資金二百二十兆円を八年以内に半分にするという。しかし郵貯資金を半分にすれば、郵貯事業の利益も半分になります。利益が半分になって、どうやって全国の二万四千の郵便局が維持できるでしょうか。店舗の廃止、リストラが大規模にすすまざるをえません。民主党は、国会では「郵便局ネットワークを守る」などといってきたが、それをずたずたにせざるをえない。国民サービスを切り捨てるということでは、自民党案と同じ流れであることがはっきりしました。

 民主党が、対抗する足場がしめせないのは、郵政問題だけではありません。「構造改革」、庶民大増税、憲法改定など、この選挙で問われているあらゆる問題で、自民党に対抗する足場がありません。国政の基本問題で、自民党と同じレールのうえで、推進を競い合うという立場だからであります。

 民主党はキャッチフレーズを、「もっと大事なことがある」から、「日本を、あきらめない」というものに変更したといいます。しかし、ずいぶん手厳しい批評がよせられていますね。「日本をあきらめたいと思っている国民はいない」、「誰が日本をあきらめたのでしょう。私はあきらめたことはありません」。もっともな声であります。

■「二大政党」に選択肢をしぼりこむ力を絶対に甘くみない

 ただここで強調しておきたいのは、今後、国民の選択肢を、「二大政党」にしぼりこんでいく力が働くことを、絶対に甘くみることはできないということであります。財界人などでつくる「新しい日本をつくる国民会議」(二十一世紀臨調)は、八月十六日に、今回の衆院選を、「わが国政党史上初の本格的な『政権選択選挙』とすべきである」との緊急提言を発表しています。

 民主党自身に足場があろうとなかろうと、国民の選択肢を「二大政党」に染め上げていく力が働くことを絶対に甘くみずに、どんな情勢になっても、自らの力で「風」をおこして勝利をつかみとるという姿勢でがんばりぬく──ここが大切だということを訴えたいのであります。(拍手)

(3)日本共産党──攻勢的な構えと論戦で意気高くスタートきる

 日本共産党は、全国からよせられるたたかいの状況をみましても、私自身が遊説を開始した実感でも、たいへん意気高くスタートを切っています。どこにうかがっても、全体として、たいへん元気で明るい。熱気が広がっています。それにはいくつかの理由があると思います。

■いち早くたたかう態勢をとって解散をむかえた

 第一に、わが党は、政党として、どの党よりも早くたたかう態勢をとって、解散をむかえました。とくに八月三日にもった全国会議で、「解散・総選挙となれば、チャンス到来ととらえて、勇んでこの事態にたちむかおう」という立場で、全党と後援会の心が一つになった。これは、たいへん重要でした。その翌日の四日には、比例代表と小選挙区の候補者発表をおこないましたが、現在、予定候補として発表しているのは、比例代表三十八人、小選挙区二百七十四人であります。短期間の間にこれだけの候補者を擁立したのは、この選挙に勝ちたいという全国のみなさんの強烈な思いのあらわれであり、日本共産党ならではの底力を発揮したものだったと思います。

 そして、日本共産党は、八日夜の解散後、中央でも、地方でも、もっとも早く街頭にうってでて、国民に訴えた政党となりました。解散翌日の一般紙は、写真をのせようとしても、共産党の動きしかないので、各地でそれが報道されました。マスコミの関係者が、「どの党よりも早い。いつ準備したのか」とたずねるほど、わが党の出足が早かった。これはたいへん重要であります。

■「郵政選挙」「改革選挙」を正面から迎え撃つ立場をうちだす

 第二に、解散後、小泉・自公政権が、「郵政選挙」「改革を止めるな」と叫んで、「政治的攻勢」をかける戦略をとってきたときに、わが党は、ただちにそれを正面から迎え撃つ攻勢的立場を打ち出しました。郵政民営化について、ほんらいなら断念すべき筋のものですが、衆院解散までして国民の審判をあおぐというなら、私たちも重要な争点の一つと位置づけて、正面から迎え撃つという立場を打ち出しました。さらに、「改革を止めるな」というなら、「小泉改革」の名でおこなわれた政治はどんなものだったかが問われることになると、これを正面から告発し、相手に攻め込む論戦をすすめています。

 十一日に発表した「総選挙にあたっての訴えと七つの重点公約」では、郵政民営化と「小泉改革」への正面対決の姿勢を、きっぱりおしだしています。マスコミもここに注目し、「共産 郵政真っ向対決」と報じました。小泉・自公連合と日本共産党との対決が鮮やかになりつつあります。

■増税、改憲──積極的な争点の提起をおこなう

 第三に、同時に、わが党として、積極的な争点の提起をおこないました。「七つの重点公約」はそれぞれが今日の日本の政治の熱い争点となっている問題です。とくに庶民大増税、憲法改定という二つの問題は、新しい国会でいやがおうにも問われてくる問題であって、どの党、どの候補者も、避けて通れない大争点であります。

 わが党の争点の提起のもとで、たとえば庶民大増税問題については、自民も、民主も、それぞれが自らの立場について言わざるをえなくなってきており、増税推進の「二大政党」と日本共産党との対決の構図がうきぼりになりつつあります。

■「たしかな野党が必要です」の意味について

 第四に、「たしかな野党が必要です」というキャッチフレーズ、「野党としての公約」を打ち出したことが、新鮮な共感と期待を広げています。テレビ番組でも、五党のキャッチフレーズが表になって紹介され、コメンテーターの評論家の方から「もっともインパクトがあるのは共産党だ」との評価をいただいた。このキャッチフレーズへの新鮮な共感が広がっております。

 このキャッチフレーズは、今日の政党状況のなかでの日本共産党の立場を、一言でしめすものとなっています。自民、民主が、増税、改憲など、国の基本問題で、同じ方向を競い合うなかで、少なくない国民のなかに「こんな政治に流されていいのか」という気持ちが広がりつつあります。民主党への期待をもちながら、この党の「ふたしか」さに、疑問をもつ人々も広がりつつあります。「たしかな野党が必要です」とは、裏を返していいますと「ふたしかな野党では困ります」ということでもあります。これが国民の気持ちに響きあう状況が、いまつくられつつあるのではないでしょうか。

 もちろん、わが党は、いつまでも野党のままでいいという立場ではありません。自民党政治のゆがみを大もとからただす改革を実行する民主的な連合政権をつくることが大きな目標です。同時に、その情勢が熟すまでは野党としての責任をしっかり果たす。「野党とよばないで」という党では、かりに与党になっても政治を変える力をもちません。いま野党としての責任を果たす党──「たしかな野党」こそ、政治を改革するほんとうの力をもつ与党になれる、このことも、あわせて強調したいと思うのであります。(拍手)

 たしかな野党・日本共産党の前進に、日本の政治の未来はかかっています。解散後の情勢の展開、そのなかでの日本共産党の立場は、力をつくせば前進できる条件があることをしめしています。ここにみんなが確信をもち、今後の情勢の展開のなかで、どんな激動があっても、自らの力で「風」をおこして勝利をつかむという姿勢を、最後までつらぬいて、この歴史的政治戦でかならず前進をかちとろうではありませんか。(拍手)

政治論戦のいくつかの焦点について

 つぎに総選挙の政治論戦のいくつかの焦点について報告します。わが党が発表した「総選挙にあたっての訴えと七つの重点公約」は、公約であるとともに、自民・公明、民主と、日本共産党との対決点が、それぞれの問題でどこにあるのかも、具体的にのべています。ぜひこれを読んでいただければ幸いです。報告では、四つの問題について、私たちが宣伝や対話をすすめるうえで、いわば“勘どころ”としてつかんでとりくんでいきたいことをのべたいと思います。

(1)郵政問題──民営化に真っ向反対の論陣をはる

■日本共産党はなぜ「真っ向反対」か

 まず、郵政民営化をめぐる論戦についてのべます。日本共産党は真っ向から民営化反対の立場をつらぬいています。なぜ反対かを端的にまずのべたいと思います。

 第一に、国民へのサービスが切り捨てられるという問題です。民営化されたらどうなるかが、いちばんわかりやすいのは、民間の大銀行のとっている行動です。民間銀行などは、もうからない地域から店舗を撤退させ、六年間で四千以上の店舗を減らしました。お金の出し入れのさいに高い手数料をとりたて、口座維持手数料までとりはじめています。民営化とは、いま大銀行がやっていることが、いっそうひどくなるということにほかなりません。身近な金融窓口がなくなる。高い手数料で口座もおけなくなる。全国の郵便局ネットワークがずたずたになるということです。

 第二に、これが日米の金融資本の要求からはじまったということです。大銀行からみれば、自分たちよりも良いサービスをやっている郵貯・簡保が、商売の邪魔でしかたがない。だからこれをつぶして、庶民の虎の子の生活資金の行き場をなくし、新しいもうけ口にしていこう。高い手数料をとりたてよう、投資信託など元本保証がないような金融商品を買わせて、リスクをおしつけよう。ここに狙いがあります。大銀行は、これを「民業圧迫をただせ」「公正な競争の実現を」、こういって要求しています。しかし、こんなに厚かましい要求はありません。大銀行には、三十五兆円もの公的資金が入り、そのうち十兆円はこげついて国民負担になっているではありませんか。「民業圧迫」というが、「国民圧迫」をしているのは、大銀行ではありませんか。(拍手)

■「民営化すれば、郵政事業は良くなる」というごまかし

 それでは小泉・自公政権は、どういう議論をたてているでしょうか。彼らは、こうした郵政民営化の本質を隠して、国民におしつけようとしています。ですからその議論には、ごまかししかありません。彼らはいま、大きくいって二つのごまかしの議論をおこなっています。

 一つは、「民営化をすれば、郵政事業そのものが良くなる」というごまかしです。解散の夜に小泉首相が記者会見で言いつのったことは、どれも国会審議で「道理なし」の判定がくだっていることでした。ですから、事実を知らせれば、一撃で打ち破れます。

 たとえば首相は、「民営化で競争がおこり、サービスがよくなる」といっています。これは私たちの「サービス切り捨てになる」という批判にたいする苦しい言い訳です。しかし、競争がおこるのでなく、競争をなくすのが、民営化なのです。いまは郵貯・簡保が良いサービスでがんばっているために、この手ごわい競争相手を意識して、大銀行も手数料をやみくもにはあげられない。ところが郵貯・簡保の民営化とは、この手ごわい競争相手をなくすということです。そうなればサービス切り捨てに歯止めがなくなります。

 また小泉首相は、「公務員が削減できる」と繰り返しています。しかし、昔も今も、郵政事業は、独立採算で、職員の給与には、一円の税金も使われていません。あたかも民営化で、国民の税金が節約できるかのようにいう首相の言い分には、まったく根拠はありません。

 さらに小泉首相は、「郵貯・簡保の資金があるから、公共事業や特殊法人などの浪費がなくならない」ともいっています。これは、“消防車があるから火事がなくならない”というようなものです。自らの無駄づかいの責任を郵便局になすりつけるとんでもない議論です。すでに郵貯や簡保の資金が、公共事業や特殊法人に自動的に流れる仕組みはなくなっています。現在はどうなっているかといいますと、政府が財政投融資計画をつくって、それに必要な資金をまかなう国債を発行し、それを民間銀行とともに、郵貯・簡保も購入しています。問題は、政府の財投計画のなかに関西空港二期工事など無駄づかいが満載されていることです。関空二期の無駄づかいが郵便局の責任だとでもいうのでしょうか。こんな議論はどの世界にも通用するものではありません。

■「郵政民営化は、あらゆる改革につながる」というごまかし

 もう一つは、「郵政民営化は、あらゆる改革につながる」というごまかしであります。これは、自民党、公明党が、選挙になってあわててはじめているキャンペーンです。ここに八月二十三日付の「自由民主」がありますが、大見出しで「郵政民営化は、あらゆる改革につながる」として、つぎのようにのべています。「郵貯・簡保を民営化すれば、民間に資金が流れる。そうすれば景気がよくなる。そうすれば税収もふえ財政再建もできる。そうすれば社会保障の安心にもつながる」。郵政民営化で日本社会はばら色になる! こういう議論です。

 これは、郵政問題一本で選挙をやろうとしたが、郵政問題以外にも大事な争点があるではないかという批判がおこり、それにたいして、“郵政民営化をすればすべてが解決する”と、選挙になってあわてて押し出してきたものです。しかしこれは二重にでたらめな議論であります。

 第一に、「民営化すれば資金が民間に流れる」というが、民間銀行はいまどういう行動をしているか。民間銀行は、小泉内閣の四年間で、民間への融資を七十兆円も減らし、逆に国債を四十兆円も買いましています。民間銀行は「官から民」へでなく、「民から官」に資金を流している、これが実態なんです。郵貯・簡保の経営形態が民間に変われば、資金が民間に流れるというのは、何の根拠もないつくりごとであり、事実にまったく反することであります。

 第二に、「民間に資金が流れれば、景気がよくなる」というが、ここでいう「民間」とは大企業のことですが、それでは、大企業に資金を流したら景気がよくなるか。いま大企業は潤沢すぎるほどの資金を手元にもっています。バブル時代を上回る史上最高の利益をあげて、大企業の手元にある余剰資金は八十二兆円にものぼります。手元にはわんさかお金があまっている。それでも景気がよくならないのは、内需が低迷しているからです。なぜ内需が低迷しているかといえば、「リストラ」応援と国民負担増で、内需の六割をしめる家計消費を痛めつづけてきた「小泉改革」に責任があるではありませんか。みずからの失政の責任を、ここでも郵便局におしつけようとしている。とんでもない話ではありませんか。

 「郵政民営化は、あらゆる改革につながる」というのは、「風が吹けばおけ屋がもうかる」式のでたらめな議論です。こういう議論をもって、郵政民営化をおしつけることは、絶対に許されません。(拍手)

 相手の議論はどれをとってもごまかしばかりです。日本共産党は、郵政民営化に真っ向反対のたしかな立場をもっています。国民サービスの守り手としての党の立場に自信をもって、おおいに語りぬこうではありませんか。

(2)「小泉改革」──対決つらぬいてきた日本共産党の値打ちきわだつ

 つぎに「小泉改革」をめぐる論戦についてのべます。小泉・自公政権は、郵政民営化を「改革の本丸」「改革の突破口」と位置づけ、「改革を止めるな」をキャッチフレーズにしたために、四年間の「小泉改革」とは何だったのか、その是非をいやがおうにも大きな争点とすることになりました。この土俵は、私たちにとって、願ってもない絶好の土俵であります。

■四年間の「小泉改革」のもたらした痛みを告発する

 私は、いまほど「小泉改革」なるものの正体が、国民のみなさんにわかりやすくなっているときはないと思います。ふりかえってみると「小泉改革」とのたたかいの最初の舞台となったのは、四年前の参院選挙のときでありました。当時は、「改革」といいますが、その実施はこれからの問題でした。しかも最初に出されてきたのは「不良債権の早期処理」という、一般の国民にはなじみのない問題でありました。だいたい株式にも縁のない人が多いですから。わが党は、正面から立ち向かいましたが、その正体をあばくのはたいへん骨がおれたものでした。

 しかし、いまは違う。国民の四年間の体験があります。国民は身をもって「小泉改革」の痛みを体験してきた。これを事実にてらして一つ一つ告発することが大切であります。

 社会保障では、医療費の値上げ、年金の大改悪、介護保険の改悪など、憲法に保障された生存権を侵害する切り捨ての連続でした。

 雇用の不安定化がすすみました。「リストラ」応援の政治のもとで、この四年間で正社員が三百万人減り、パートや派遣など非正社員が二百三十万人増えました。若いみなさんの二人に一人が、パートや派遣など不安定な雇用のもとで働き、人間を人間としてあつかわない、モノのように使い捨てにするひどい状況で苦しんでいます。

 「不良債権処理」の掛け声で、大銀行の帳簿はきれいになったかもしれないが、中小企業への貸し渋り・貸しはがしが横行し、大銀行は「不良債権」といわれる中小企業を、債権回収会社に売却しました。債権回収会社のとりたては過酷です。追い詰められて命をたつ中小・零細企業の経営者は、年間四千人をこえている。胸の痛む事態であります。

 首相は、「痛みにたえれば、明日は良くなる」といったが、庶民にとって、良くなったことが一つでもあったでしょうか。どんなに痛みにたえても何も良くならない。これが「小泉改革」の四年間だったのではないでしょうか。

■庶民から吸い上げて、財界をもうけさせる──ここに正体がある

 ここで注目してほしいのは、この「改革」によって、「良くなった」人たちがいるのです。それは空前の利益をあげている財界・大企業であります。象徴的な数字を紹介したいと思います。小泉内閣の四年間に、家計の所得は一世帯あたり四十万円ちかく、総額にして十八兆円も減りました。ところが大企業など企業のもうけは十二兆円も増えました。庶民から吸い上げて、財界・大企業をもうけさせること──ここに「小泉改革」の正体があります。

 こうした“財界直結の政治”を実行するために、族議員や派閥などの古いしがらみは「ぶっ壊す」。しかし日本の政治の巨悪である、政治の財界への癒着・従属という問題にはまったく手をつけない。自民党政治の大企業中心主義を、極限にまで乱暴に、肥大化させたものが、「小泉改革」にほかなりません。

 私たちは、選挙戦で、こうした「小泉改革」の正体を、徹底的に明らかにします。郵政民営化問題で攻めるだけでなく、「改革」なるものの本体でも攻める。わが党は、それができる資格と立場をもっています。なぜなら「小泉改革」なるものがはじまった当初から、こんなものは「改革」でも何でもないとその正体を見抜いて、正面からたたかい、国民の家計を応援し、中小企業を応援し、社会保障をまもるという立場を大きく対置してきたからです。この党の値打ちがいまきわだっているのではないでしょうか。

■民主党──「まだ足らない」「もっと早く」と競い合う

 民主党はどうか。私が思い出すのは、小泉政権になって初めての党首討論での民主党代表の発言であります。当時の鳩山代表は、「小泉さんの改革の背中を押してさしあげる。もし小泉さんが志半ばで倒れたら、骨を拾ってあげます」とのべ、エールを送りました。その後の節々の対応でも、民主党の立場は、「構造改革」を競い合うというものであって、「まだ足らない」「もっとスピードを早く」という立場で個々の法案に反対することはあっても、この路線に正面から立ち向かったことは、ただの一度もありませんでした。

 民主党は、リストラをすればするほど企業が減税をうける「産業再生法」を、二〇〇三年に改悪して五年間延長したさいに賛成の態度をとりました。ついこの前の国会では、施設で生活されるお年寄りから、「ホテルコスト」と称して食費と居住費を全額とりたてる、介護保険法の改悪にも賛成しました。これらは「構造改革」を競い合うこの党の立場を象徴的にしめしています。

 「構造改革」という名での国民いじめと大企業中心主義の政治を競い合う自民、民主の「二大政党」との対比でも、この政治に真っ向から対決する日本共産党の立場は光っている。これをおおいに語りぬこうではありませんか。(拍手)

(3)庶民大増税──財界の横暴勝手とたたかえる党をのばしてストップを

増税額の巨大さ、庶民狙いうち──空前の大増税計画

 つぎに庶民大増税をめぐる論戦についてのべます。六月二十一日に政府税制調査会が打ち出したサラリーマン大増税に、国民の怒りが広がりました。

 私が、まず強調したいのは、これまでも私たちは増税とのたたかいをやってきましたけれど、今回の庶民大増税の計画は、これまでにない重大で深刻なものであるということであります。

 第一は、増税額の巨大さです。控除縮小・廃止による所得税増税で十二兆円です。消費税の二ケタ税率化で十二兆円です。あわせて二十四兆円もの巨大増税計画がすすめられようとしています。年収五百万円の四人家族の場合、五十五万円の増税となり、手取りで二カ月分の給料をもっていかれる。家計も経済も破壊するとほうもない規模の増税です。

 第二は、所得の少ない人ほど負担が重くなる、庶民狙いうちの増税だということです。控除縮小・廃止による所得税の増税率は、所得の少ない人ほど高くなり、所得税の課税最低限は、四人家族で三百二十五万円から百十四万円まで下がります。生活保護基準よりもはるかに低い水準まで下がります。これによって少なくとも四百万人をこえる人が新たに税金を納めなければならなくなります。

 所得税の控除廃止とはどういう意味をもつのでしょうか。もともと各種控除というのは、衣食住など最低生計費には税金をかけない──配偶者の場合も、扶養している子どもの場合も、サラリーマン本人についても、生きていくことに必要な最低経費には税金をかけないという考えでつくっているものです。この根底には憲法二五条がさだめる生存権の保障があります。各種控除をとりはらえば、「生計費非課税」「応能負担」という税制の民主的原則を根本から壊し、憲法が保障した生存権を根本から壊す、こういう重大な意味をもってきます。

 政府税調は、控除廃止の方針を決める際、どんな議論をしたでしょうか。配偶者控除の廃止について、ある委員はこんなことをいいました。「専業主婦で何もしないのが多いんです。働かないで家でごろごろしている主婦が子どもを産まないんです。変な生命力のない人たちがたくさん生じてきて、お金をもってぶらぶらしている。そういう人は淘汰(とうた)しなければならない」。こういう議論がされたんですね。政府税調は、配偶者控除の廃止を打ち出す際、とってつけたような理屈をつけたけど、こんな議論もやられている。これには怒りの声が殺到しました。

 課税最低限が生活保護基準を下回ってしまう問題も議論になったようですが、それについて、政府税調の石会長はこういいました。「生活保護から税金をとってもいいという議論もある」、こういうことを言い放った。庶民の生活の痛み、苦しみ、税制の民主的原則、なにも理解していない。許せない話ではないですか。

■この動きの根底には財界の野望がある

 第三は、大企業、金持ち減税には指一本触れない、聖域にしていることであります。この動きの根底には財界の野望があります。日本経団連が〇三年一月に「奥田ビジョン」を発表しましたが、そのなかに大増税の号令がはっきりと書かれているんです。これがことのはじまりでした。三つのことをいっています。一つは「消費税を16%にまで引き上げる」、二つ目は「所得税の控除廃止と税率見直し」、三つ目は「法人税の引き下げ」。この三点セットを要求しました。

 すでに法人税は減税につぐ減税で、二十兆円あった税収が十兆円まで落ち込んでいます。これをもっと下げろというんですね。その穴埋めに庶民大増税をやれ。これが財界の要求です。大増税の本質は、「高齢化社会を支えるため」でも、「財政再建のため」でもない。自分たちの税逃れの穴埋めを、庶民におしつけるという財界の身勝手きわまる姿勢──ここにことの本質があることを、おおいに語っていこうではありませんか。

■自民・公明の増税隠しは通用しない

 増税問題に対する各党の立場はどうでしょうか。

 小泉・自公政権は、増税隠しの姿勢をとっています。今週のNHK「日曜討論」(十四日)で、自民党の安倍幹事長代理は、サラリーマン増税について問われて、「まったくそんなことは考えていない」とのべました。公明党の神崎代表は、「安易な増税に反対だ」とのべました。いくら何でも「やる」とはいえず、増税隠しで選挙をのりきろうという姿勢であります。

 しかし、これは通用しないものです。昨年十二月に自民・公明が決めた「与党税制改正大綱」では、「所得税においては、税率構造・控除双方の見直しを視野にいれ、検討を進める」とし、二〇〇六年の通常国会で「必要な税法の改正をおこなう」と明記しています。さらに二〇〇七年度には「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」としています。つまり所得税、消費税とも増税の方向をはっきり打ち出しているのであります。しかも、それを具体化するのは来年の国会だというのです。自分で大増税の号令をかけておきながら、それを政府税調が具体化したら「考えていない」というのはとうてい通る話ではありません。

 思い起こすと、この計画が都議選の直前にもちあがったとき、与党幹部は、「いまはタイミングが悪い」といったものでした。本音というのは最初の言葉にあらわれるといいますが、この言葉のなかに与党の本音がはっきりしめされているではありませんか。

■所得税・消費税の増税を宣言した民主党

 民主党はどうでしょうか。この党は、「サラリーマン増税反対」といいます。しかし、はっきりいいまして、この看板はまやかしであります。実際、この党は、消費税・所得税の増税を与党以上に正直に告白しています。この前の日曜日のテレビ朝日での討論番組で、この問題が議論になったさい、民主党の岡田代表はつぎのように発言しました。

 「三年間は大きな増税はしません。その後はぜんぜん増税なしですむと思っていません。ただし、今の控除を整理する。年金の消費税も入れる。そういうものはやる」

 「控除の整理」とは、この党のマニフェストにも明記されたとおり扶養控除・配偶者控除の廃止のことです。「年金の消費税を入れる」とは、「年金財源」と称して消費税の税率を3%引き上げることです。これをあわせますと十兆円もの増税です。「三年間は大きな増税はしない」といいながら、十兆円規模の増税を三年以内にやるのが民主党の方針です。これが「大きな増税」でないというなら、三年後にやる増税とは、いったいどんな規模になるのかということになります。

 自民・公明と民主が、庶民大増税を競い合っているなかで、日本共産党は、増税ストップを正面からかかげて選挙をたたかいます。税金の改革というなら、無駄づかいに徹底的にメスをいれるとともに、大もうけしている財界・大企業に応分の負担と責任を──この主張を堂々と掲げる唯一の党が、日本共産党であります。庶民大増税反対の声は共産党へ──これを語って語って語りぬこうではありませんか。(拍手)

(4)憲法をまもりぬく──総選挙の熱い争点に

 つぎに憲法問題をめぐる論戦についてのべます。私たちは、憲法問題を、二〇〇三年、二〇〇四年の国政選挙でも争点として訴えましたが、今回の選挙では、これがいよいよ熱い争点として問われる問題になっています。

■憲法を壊そうという動き、まもりぬこうという運動のせめぎあい

 一方で、改憲派の動きは、具体的な憲法改定案づくりの新たな段階になっています。自民党は、八月一日、「新憲法第一次案」を発表し、今年十一月までに自民党としての憲法改定案を発表するといいます。民主党も来年には憲法改定案を発表するといいます。衆院の憲法調査会会長の中山太郎さんは、「再来年には憲法改正が実現する」と豪語しました。相手の思い通りにさせてはなりませんが、この問題は決して先の問題ではありません。今回の選挙で問われる熱い大争点だということを強調したいと思うのであります。

 他方で、この一年間をみますと、憲法をまもる国民の側の運動が、めざましい発展をとげました。昨年発足した「九条の会」の運動の発展ぶりは、全国各地での講演会の大成功、東京・有明の集いの大成功など、すばらしいものです。全国で三千をこえる草の根での「九条の会」がつくられたことも明らかにされました。私は、戦争の犠牲をへて手にした平和の宝をまもりぬこうという深いエネルギーが、日本列島に沸き起こっているのを感じます。

 この一年で、憲法を壊そうという勢力の策動もすすみましたが、憲法をまもりぬこうという運動もすばらしい広がりをみせている。そういうもとでの選挙ですから、この問題を選挙戦の大争点として位置づけて、憲法をまもりぬこうという訴えをおおいにすすめたいと思います。

■自民の「新憲法第一次案」──「海外で戦争する国」づくりの狙いはっきり

 この問題での「二大政党」といわれる政党の態度はどうでしょうか。まず自民党が発表した「新憲法第一次案」についてのべたいと思います。二つの点に注目してください。

 一つは、憲法九条の全面的な書き換えであります。自民党の改憲案では、「戦争放棄」「戦力保持の禁止」「交戦権の否定」という憲法九条の核心をなす三つの命題が、すべて削除されました。かわりに「自衛軍の保持」が明記され、「自衛軍」が「国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動」をおこなうこと、その活動に、「日本国民は……主体的かつ積極的に寄与するよう努めるものとする」と明記されました。これは、アメリカとともに「海外で戦争をする国」づくりが、憲法改定の目的であることをはっきりとしめすものになりました。また、そうした戦争に国民が協力する義務までのべていることは、たいへんに重大であります。

 もう一つ、憲法改正の条件の緩和です。国会による憲法改正の発議の要件を、現行の衆参両院での三分の二以上の賛成から、「各議院の総議員の過半数の賛成」に緩和するとしています。いったんこの憲法改定案が実現したら、つぎの憲法改定は、ずっと簡単にできるようになる。こういうしかけまで盛りこんでいるのが、自民党の案であります。

■民主も、海外での武力の行使という点では、同じ流れ

 それでは民主党の立場はどうか。まだこの党の憲法改定案は出ていませんが、国連決議があれば、海外での武力行使を認める、その立場を憲法改定に反映させるというのが、この党の方針です。しかし、「国連決議があれば」は何の歯止めにもなりません。アメリカのイラク侵略戦争を、政府が支持した理由も「国連決議」でした。海外での武力行使という点ではまったく同じ流れにあることこそ、重大であります。

 さらに国会で、「ネクスト外務大臣」の鳩山元代表が、「改憲し、自衛軍を書き込め」と要求し、首相に「賛成だ」と答えさせています。「自衛軍」を書き込め、それによって海外での武力行使ができる国をつくれ、この点では自民も民主も一致しているのです。

 自民、民主の「二大政党」が改憲で競い合い、手に手をとって「戦争をする国」への道をすすもうというもとで、日本共産党をのばすことこそ、日本国民が世界に誇る宝──憲法九条をまもりぬくもっともたしかな力となることを、おおいに訴えようではありませんか。(拍手)

日本共産党の存在意義がかかったたたかい──全党、全後援会の総決起を

 政治論戦の焦点を四点にわたってのべてきましたが、わが党のリードは、どの問題でも明りょうです。こんなに争点が語りやすい、面白い選挙はないのではないでしょうか。

 論戦のリードの根底には、わが党の綱領路線があります。郵政民営化、「小泉改革」、庶民大増税にきっぱり対決するわが党の立場の根本には、大企業中心政治のゆがみを、大もとからただす綱領路線があります。憲法をまもりぬくというわが党の確固とした立場の根本には、アメリカいいなりの政治のゆがみをただし、独立・平和の日本をめざす綱領路線があります。わが党の「野党としての公約」には、すべて路線の裏づけがあり、歴史の裏づけがあります。ここに確信をもってたたかいぬこうではありませんか。

 この総選挙は、日本共産党の存在意義がかかった歴史的なたたかいであります。国民の暮らしが、こんなに破壊され、痛みと怒りが噴出しているもとでの選挙はありません。また日本が戦争の道を歩むか、平和の道を選択するか──まさに日本の進路が問われる重大な選挙であります。日本共産党をのばして、政治の現状を前向きに打開することは、国民の苦難の軽減、平和と安全のために献身するという、日本共産党の立党の精神、党の存在意義にかかわる、わが党の重大な使命であります。(拍手)

 この歴史的政治戦にさいして、すべての党員のみなさんと後援会員のみなさんが、支持者のみなさんの協力をえて、総決起することを心からよびかけるものです。ともにたたかう決意をのべて報告といたします。(拍手)


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