2005年8月21日(日)「しんぶん赤旗」
銀傘
重圧乗り越え「楽しんだ」
全国高校野球 駒大苫小牧V2
「ぼくたちの力だけでなく、みなさんの声援が力になりました。感謝の気持ちでいっぱいです」。林主将がインタビューであいさつすると、満員の甲子園から大歓声がわき起こった。
毎年、選手が入れ替わる高校野球。今大会、駒大苫小牧が見せた野球も昨年とまったく違った。昨夏は甲子園出場チーム最高打率(4割4分8厘)を記録した強打のチーム。それが一変、3人の投手陣を軸に、地方大会から準決勝まで11試合連続無失策の堅守のチームになっていた。
昨年、北海道勢として史上初の全国制覇を機に選手たちを取り巻く環境は変わった。祝賀会が続き、練習試合にも多くの人が集まる。ユニホームを着ていれば「知らない人からも声をかけられ、頑張れ、次も優勝してと言われた」。香田監督も「会う人とは必ず連覇の話になった」という。
だが、周りの期待をよそに結果はなかなか伴わなかった。今春の選抜大会は2回戦敗退。今回も地方大会前には優勝候補にあげられ、「勝って当たり前」の重圧がのしかかった。気負う選手に、香田監督は「挑戦者の気持ちで野球を楽しもう」と語りかけ、気持ちを切り替えさせたという。そして甲子園でも、準々決勝で5点差をはね返すなど、一戦一戦、力をつけていった。
主将として重圧と闘った林は、「昨夏の優勝でわけが分からなくなってしまったが、自分たちを信じてやってきた。苦しいこともあったが、(今は)うれしい気持ちしかない」。重圧を乗り越え、プレーを楽しんだ甲子園。そして再び持ちかえる深紅の優勝旗――。駒大苫小牧ナインは、北海道の人々に、熱い夏をもう一度プレゼントした。(栗原千鶴)

