2005年8月13日(土)「しんぶん赤旗」

解説 歴史教科書採択

杉並区長が推進 与党は自・公・民


 侵略戦争を正当化する「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書を、五十万の人口を有する東京・杉並区の教育委員会が採択しました。二十三区では初めて。これまで公立では栃木・大田原市と東京都の中高一貫校、障害児学校などごく一部で採択されただけです。

 杉並区教委の採択には同区の山田宏区長の意向が大きく働いたと指摘されています。同区長は、二〇〇一年の教科書の採択前に「つくる会」教科書を支持する二人を教育委員に入れました。しかし、結局、扶桑社支持は二人だけで不採択になりました。同区長はそのときに扶桑社を支持しなかった教育長をやめさせ、側近である当時の区長室長を教育長にしました。明らかに教科書採択を意識した人事です。

 同区長は改憲派の主張を頻繁に流しているCS放送局に定例の出演番組を持っています。この放送局は「つくる会」前副会長の高橋史朗氏が発起人の一人で、西尾幹二名誉会長、藤岡信勝副会長らが賛同者となってできたものです。藤岡氏は歴史教科書の代表執筆者でもあり、十二日は自ら委員会室で傍聴しました。

 同区長は今年の成人式で特攻隊員の遺書を読み上げて美化したり、区議会で「大東亜戦争」という言葉を肯定的に使うなど、戦争正当化につながる発言を繰り返しています。自民・公明・民主の各党は同区長の与党になっています。

 こうした区長の言動に危機感を持った幅広い人たちが「侵略戦争美化の教科書を子どもに渡すな」と採択に反対する運動を展開。教職員組合も全教、日教組双方の組合が共催で集会を開くなど、共同の行動が広がりました。当初四日に予定されていた歴史教科書の採択が継続審議になったのはこうした世論と運動の力でした。

 しかし、採択の数日前から急に「扶桑社教科書支持」を掲げた団体が大量に駅頭で宣伝をはじめ、扶桑社を支持しない教育委員を中傷するなど、異常ともいえる圧力のもとで採択がおこなわれました。政治の介入で教育をゆがめることが、子どもたちの将来にとって何をもたらすのか。侵略戦争を正しい戦争だったとする教科書を子どもに押しつける行為は、アジアをはじめ国際的にも厳しい批判をあびることになるでしょう。(高間史人)


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