2005年8月9日(火)「しんぶん赤旗」

全国都道府県委員長・選対部長・衆院予定候補者会議での

志位委員長の報告

(大要)

 日本共産党が三日開いた全国都道府県委員長・選対部長・衆院予定候補者会議で、志位和夫委員長がおこなった報告(大要)を紹介します。


 みなさん、ごくろうさまです。この会議は、たいへん緊迫した重大な局面での会議となりました。私は、幹部会を代表して報告をおこないます。

反転攻勢の絶好の機会としてとらえ、前進・勝利をめざす

 この間、郵政民営化法案をめぐって、衆議院解散の可能性をはらんだ緊迫した政治局面が生まれました。今国会中にも解散がおこなわれる可能性があります。解散がかりに先延ばしにされたとしても、政局の不安定化は避けられないでしょう。その場合でも、早期解散の可能性をはらみながらの政局となるでしょう。

 小泉首相は、「参院否決なら解散」とのべていますが、解散カードで国会を脅しつけ、国民にとって有害きわまりない郵政民営化法案を何がなんでも強行するという態度にまったく道理はないことは、すでに批判してきたことです。

 いま重要なことは、いつ解散・総選挙になっても、堂々と受けてたち、意気高く前進をめざす政治的構えを、全党に確立することです。わが党は、この間の二度の国政選挙で、「二大政党づくり」の動きのなかで後退をよぎなくされ、衆院選・参院選ともに得票で四百数十万票、両院とも議席で九議席まで押し込まれました。その後、一連の地方選挙で押し込まれたところから押し返す結果をつくっていますが、解散・総選挙にさいしては、国政選挙でも反転攻勢を実現する絶好の機会としてとらえて、がんばりぬくことが強くもとめられます。

 全国各地で、「チャンス到来」とこの事態を受け止め、積極的な奮闘がはじまっていることは重要であります。衆院四国比例ブロックでは、この間、「四国ブロックで春名さんの議席奪還を、そのために定数六でも勝ち抜ける党を」と、「大運動」でも全体として前進をつくりだしてきました。今回の政局激変にたいして、「二年も前倒しで、春名さんの議席奪還の絶好のチャンスが到来した」と、緊急にブロック指導部会議をもち、四国四県が連帯して、それぞれの比例得票目標に責任をもとうと、小選挙区すべてに候補者をたててたたかう決意をかためあったと聞きました。「自民党の混乱でやっかいなことが起きた」というのでなく、文字どおり「チャンス到来」と勇んでこの事態にたちむかう。この姿勢がいま何よりも大切であります。

 この会議の目的は、解散・総選挙となったら、全党が文字どおり反転攻勢の絶好の機会がきたという立場で本気で受けてたつ――そのための攻勢的な政治的構えを確立し、前進・勝利にむけたとりくみを急速に強めるための意思統一をはかることにあります。

自民党政治の路線の深刻な閉塞状況――新しい政治が求められる歴史的時期

 それでは総選挙にたちむかう攻勢的な政治的構えをつくるうえで何が重要でしょうか。私は、三点を強調したいと思います。

 第一は、いまの情勢の大局をつかむという問題です。郵政民営化法案をめぐる自民党の大混乱の根本にあるものは何か。それは、郵政民営化法案への国民の批判の広がりだけではありません。外交でも、内政でも、自民党政治がいよいよ大本からゆきづまり、その危機が限界まで深刻になっている。これが今日の事態の根本にあります。

 もともと小泉政治とは、危機におちいった自民党政治を延命させるための「受け皿」づくりの動きでした。それは、「自民党をぶっ壊す」と、自民党総裁が叫んで、国民の支持をつなぎとめようという、いわば究極の延命策でした。その結果、何がおこったか。外交も、内政も、そして自民党自身をも「壊す」ことになりました。そのもとで国民のなかに政治の現状にたいする深刻な閉塞(へいそく)感が広がっていることが特徴であります。

■外交――こんな八方ふさがりの閉塞状況に陥ったことはかつてないこと

 外交は、日本が世界とアジアで生きていく道を失いかねないところまで、ひどい孤立とゆきづまりに陥りました。

 首相の靖国参拝への固執にしめされる日本政府の過去の侵略戦争と植民地支配にたいする間違った態度は、日本とアジア諸国との関係の悪化にとどまらず、欧米諸国もふくめて、世界的にも、日本を抜き差しならない孤立においやっています。

 外交的破たんは、日本の国連常任理事国入りの構想が惨めな事態に直面していることにもしめされました。日本がドイツ・インド・ブラジルとともに提出した「枠組み決議案」にたいする支持は、日本の近隣諸国では、まったく得られませんでした。アジアで共同提案国となったのはアフガニスタン、ブータン、モルディブというわずか三カ国だけ。この構想は、ついには米国にも反対され、完全に頓挫しています。

 異常なアメリカいいなりの政治の矛盾も深刻です。政府は、米国の言い分をうのみにしてイラク戦争を支持し、イラクへの自衛隊派兵を強行してきましたが、「主権移譲」後もますます深刻になるイラクでの情勢悪化と、「有志連合」の崩壊という国際的孤立に直面しています。

 日本外交が、どちらをむいても八方ふさがりという、こんな閉塞状態に陥ったことは、戦後でもかつてないことであります。

■内政――「痛み」の連続の先にみえてきたのは庶民大増税

 内政はどうでしょう。小泉政権がやってきたのは、「いまの痛みにたえれば、希望ある明日がくる」として、「構造改革」路線をおしつけるというものでした。

 しかし現実におこったことは、医療費の大幅値上げ、年金の大改悪、介護保険の改悪など社会保障の連続的な改悪、「リストラ」応援の政治による雇用破壊と賃金破壊など、果てしない痛みの連続でした。そして、その先にみえてきたのは「希望」どころか、空前の庶民大増税――消費税増税とサラリーマン大増税の計画であります。

 政府の「国民生活基礎調査」でも、「生活が苦しい」と答える世帯は過去最多の55%にもなっているのに、政府はそれには目もくれず、国民が望んでもいない郵政民営化に「改革の本丸」などとして熱中する。暮らしの問題でも、国民のなかに、先がみえない深刻な閉塞感が強まっています。

■一内閣の破たんにとどまらず、自民党政治の路線そのもののゆきづまり

 こうした外交、内政のゆきづまりのもとで、自民党自身が、政権担当に自信と展望を失っている。これが特徴であります。自民党の少なくない有力幹部から、国会解散をめぐって、「いったん政権を失えば、二度と政権にもどることはない」という懸念の声が聞こえてきます。事態はここまできているわけであります。

 小泉内閣は、それ自体が、自民党政治のゆきづまりの産物でした。いま、そのごまかしがすべてはがれ落ちて、大破たんに直面している。それは、一内閣の破たんにとどまらず、アメリカいいなり・財界中心という自民党政治の路線そのものが、いよいよゆきづまったことを意味しています。

 日本の政治は、この古い政治の枠組みを打開する新しい政治が、いよいよ切実にもとめられる歴史的時期をむかえています。その担い手となりうるのは、自民党政治を大本から転換する路線をもつ日本共産党であります。こうした情勢の大局を、まずしっかりとつかむことが大切であります。

自民党政治と対決する日本共産党をのばしてこそ、新しい政治の局面が開かれる

 第二に、このゆきづまり・閉塞状況は、自民、民主の「二大政党」では打開することができない、自民党政治に正面から対決する野党としての日本共産党をのばしてこそ、新しい政治の局面が開かれる。これが、情勢の大局をつかむさいのもう一つの大切な問題であります。

■今日の政治のゆきづまりは、「二大政党」のどちらが勝っても打開できない

 自民と民主は、個々の課題で表面的に対立しあうことはあっても、政治の基本のところでは変わりがありません。それはあらゆる分野で明りょうとなりつつあります。

 一つは、庶民大増税への態度です。政府・与党は、六月に発表された政府税調の方針にみられるように、消費税税率二ケタ化とサラリーマン大増税(所得税増税)を、公然と方針として打ち出しています。民主党は、都議選で「サラリーマン大増税反対」などと宣伝しましたが、これがまったく国民を欺くものだったことは、この党自身の行動で明らかになりました。民主党は、都議選後に、総選挙にむけて発表した「財政健全化プラン」のなかで、消費税増税を明記するとともに、扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除の廃止など所得税の大増税を明記しました。両者は、ゆきすぎた法人税減税・大金持ち減税には、指一本ふれようとしないことでも一致しています。

 二つは、憲法改定の問題です。自民、民主が、九条二項を改変して「自衛隊(軍)」を書き込み、「海外での戦争ができる国」につくりかえるという方向で一致していることは重大であります。自民党が、一日、発表した「新憲法第一次案」は、憲法九条を全面的に改定するきわめて重大な内容のものとなりました。この改憲案は、「戦争放棄」「戦力保持の禁止」などを削除し、「自衛軍」を書き込み、「自衛軍」の任務として「国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動」――海外での武力行使を明記しています。民主党憲法調査会は、国連決議があれば、海外での武力行使をおこなう方針を打ち出し、改憲案にも反映させるとしています。両党の憲法問題の担当者間では、共同で改憲草案をつくろうという動きがおこっています。

 三つは、歴史問題での姿勢です。首相の靖国神社参拝への批判が、政党の垣根をこえて広がっていることを、私たちは重視しています。しかし同時に、自民、民主は、政党として、歴史問題をめぐって生まれているゆきづまりを打開し、のりこえる力をもちません。それは、昨日、衆院本会議で採択が強行された戦後六十年にあたっての「国会決議」にもしめされました。わが党は、この決議案が提起されたさい、過去の侵略戦争と植民地支配への反省が明記されるべきだと主張しました。ところが、自民、民主、公明によって最終的に提起された決議案は、わが党の主張を入れるどころか、侵略諸国も反ファシズム諸国も「どっちもどっち」という論理で、過去の侵略戦争の合理化をはかった戦後五十年にあたっての「国会決議」を「想起」するという一文がもりこまれる結果になりました。侵略戦争の反省をさけ、逆にこれを合理化する「国会決議」に、自民、民主、公明、社民がそろって賛成したことは、これらの諸党が、政党として、歴史問題をめぐって生まれている閉塞状況を打開する力をもたないことをしめすものにほかなりません。

 四つは、民主主義破壊の問題です。とくに、衆院比例代表定数の削減によって、日本共産党を国会からしめだす動きを重大視する必要があります。比例削減はかねてからの自民党の主張でしたが、民主党も熱心に主張しています。民主党は、衆院比例代表定数を百にまで削減するという具体的提案をおこなっています。

 これらの自民、民主の政策的合流の根本には、日米安保条約堅持、財界中心主義など、両者が古い自民党政治の枠組みのなかにあるという問題があります。民主党がみずから「脱野党宣言」をしたことに象徴されるように、「二大政党づくり」の実態は、「オール与党」化にほかなりません。民主党は「よりまし」政党とはいえません。自民、民主のどちらが政権につこうと、自民党政治の枠内での政権交代であり、いまの政治のゆきづまりを打開することはできません。

 自民党政治と正面から対決する野党としての仕事をしっかり果たせる党――アメリカいいなり・財界中心の政治を根本から転換する路線的立場をもつ日本共産党をのばしてこそ、日本の政治の深刻な閉塞状態を打開し、国民にとって希望がもてる日本の政治の新しい局面が開かれる。このことが、情勢の劇的展開のなかで、浮き彫りになっていることを、しっかりとつかもうではありませんか。

■歴史問題――日本共産党が果たしてきた役割を確信をもってつかもう

 そのうえで、「二大政党づくり」の動きのなかでも、知恵と力をつくせば、前進を切り開くことができることをしめすものとして、私は、つぎの二つの問題をとくに強調したいと思います。

 一つは、歴史問題で日本共産党が果たしてきた役割を、確信をもってつかもうということであります。

 戦後六十年の今年、日本政府の過去の侵略戦争への態度の問題が、内外の熱い大問題になるもとで、五月十二日、不破議長の講演「日本外交のゆきづまりをどう打開するか」がおこなわれました。わが党は、それにつづく「しんぶん赤旗」の論文、国会での論戦などで、この問題での系統的な論陣をはってきました。それが問題の核心をつく提起だったことは、この二カ月半の内外情勢の進展によって裏付けられたと思います。

 この間生まれた歴史問題についての情勢の変化については、先日の党創立記念講演会での私の講演のなかで、まとまって話しました。国内の大手新聞の論調が変化し靖国神社の戦争観が問題になってきたこと、保守の政治家のなかからも正論が広がりつつあること、アメリカ・フランス・イギリスの有力紙があいついで靖国史観に焦点をあてた批判の論評を掲載したこと、米国下院で日本の戦争犯罪を再確認する決議が採択されたことなど、この間の情勢の変化は大きなものがあります。あるマスコミ関係者は、「共産党のとりくみは、靖国史観を被告席につかせた」とのべました。これは私たちの提起の意味を深くとらえてくれたものであります。

 つけくわえて報告しておきたいのは、先日のテレビ朝日での靖国問題での討論についてであります。私と自民党安倍幹事長代理の対論という企画でしたが、スタジオに行ってみますと、司会者の田原さんが、「これまでは、靖国問題は外交問題という観点から論じられてきたが、だんだんと論点があの戦争をどうみるのかという問題に移ってきた」ときりだし、「きょうは、靖国神社とはどういう神社かの、そもそも論を深めたい」と提起して討論がはじまったのです。そして、靖国神社が発行しているリーフレット「やすくに大百科」にのべられている、靖国神社の「日本は正しい戦争」をしたという戦争観、A級戦犯は「ぬれぎぬ」だという立場などが、フリップにされていました。テレビでも、靖国神社の戦争観が問題になる状況が生まれていることは、たいへん印象深いものでありました。

■地方選挙――押し込まれたところから、押し返すプロセスがはじまっている

 いま一つは、一連の地方選挙の結果であります。全国各地の奮闘によって、「二大政党づくり」の動きに押し込まれたところから、押し返すプロセスがはじまっていることは、きわめて重要であります。

 参院選挙いらい三百六十二自治体で選挙がおこなわれましたが、わが党の議席占有率は6・57%から7・80%に前進しました。市町村合併という条件で議員数は減りましたが、政党間の力関係をしめすのは議席占有率であり、ここで前進したことをしっかりと確信にする必要があります。

 得票合計は、参院比例代表の得票とくらべて133・8%となりました。これは、自民85%、公明103%、社民72%、民主38%とくらべても、きわだったものであります。全体として、得票数、得票率で、昨年の参院選から大きく押し返していることが重要であります。

 都市部の選挙でも全体として重要な成果をえました。東京都議選の結果は、すでに七月六日の都道府県委員長会議で報告したように、二回の国政選挙で押し込まれたところから、押し返したということが、重要な意味をもつものであります。今年に入ってからたたかわれた北九州市、前橋市、大分市、静岡市、尼崎市、那覇市、三郷市、奈良市など、政令指定都市、県庁所在地など都市部の市議選で、連続勝利をかちとっている意義もたいへん大きいものがあります。

 一連の一、二人区で勝利をかちとりました。長崎市議選・香焼区(定数一)、伊王島区(定数一)、新潟県・上越市議選・吉川区(定数一)、岐阜県・各務原市議選・川島区(定数二)、東京都議選・文京区(定数二)、日野市(定数二)、静岡県・浜松市議選・天竜区(定数二)――この間かちとったこの七つの勝利は、「二大政党」を打ち破れることを、端緒的ではあるがしめしたものとして重要であります。

■野党としての日本共産党の役割への新鮮な期待が広がる条件がある

 こうして一連の中間地方選挙のたたかいで、国政・地方政治での「オール与党」政治への告発と一体に、わが党の野党としてのかけがえのない役割が明りょうになったところで、すなわち“「オール与党」対日本共産党”の対決構図が鮮明になったところで、押し返しがつくられたことは、総選挙にも生かせる重要な足がかりとなるものです。

 総選挙のたたかいでも、「二大政党づくり」が「オール与党」化であることが見えやすくなるという状況の進展があります。そのもとで、わが党の奮闘いかんでは、“「二大政党」対日本共産党”という対決構図を浮き彫りにし、野党としての日本共産党の役割への新鮮な期待――“野党性”、“野党力”への期待が広がりうる条件があります。ここを確信をもってつかみ、たたかいにのぞもうではありませんか。

「野党としての公約」を前面にたてて訴える

 第三に、総選挙の現実の様相は、「自民か、民主か」の「二大政党」の流れが、これまで以上に強まるもとでのたたかいになるでしょう。自民党が分裂状態になるもとでの乱気流もこれに加わる可能性もあります。そのもとで、どのように日本共産党の議席の値打ちをおしだしていくか。

■この新しいとりくみに思い切って挑戦を

 自民、民主は、「政権をになったらこれをやる」という「マニフェスト」を出してくるでしょう。そのときに、わが党が同じ次元での「政権公約」を出しても、リアリティーを欠くことになります。そこでこの選挙で、私たちは、「日本共産党は野党としてこういう仕事をおこないます」という、「野党としての公約」を前面にたてて打ち出すようにしたいと考えています。

 政権が、自民、民主のどちらに転ぼうと、自民党政治の枠内の「コップの中の嵐」であって、違いはありません。どちらに転ぼうと、いまの政治の深刻な閉塞状態を打破する力はない。わが党がめざしている民主的政権にまで進まないかぎり、国民の希望にこたえる本格的改革が実現できないことは明らかです。同時に、わが党が、今度の選挙で、すぐに政権をになう条件にないことも、明りょうです。

 こういう条件のもとでの選挙では、「野党としての公約」を打ち出す――ここを割り切ってたたかうことが、この選挙にさいして一番かみあった、また有権者の気持ちにもそくした、リアリティーをもった党のおしだしとなります。この新しいとりくみに、思い切って挑戦する必要があります。

■党のおしだしのいくつかの要素について

 この点では、参院選から教訓を引き出した二中総決定にたったとりくみが重要になります。二中総では、「二大政党づくり」とのかかわりでの党のおしだしの六つのポイントを明らかにしました。これを今回の選挙で具体化してゆきたい。選挙政策は、解散によって選挙が現実のものとなった時に、情勢に即して発表することになりますが、たとえばつぎのような要素が入ってくることになるでしょう。

 ――庶民大増税と社会保障改悪の動きに正面から反対する。この動きの根源には、財界・大企業の負担をもっと減らせという財界の野望があります。日本経団連の「奥田ビジョン」での「企業は保険料を払わない」「法人税をさらに下げろ」などの要求はその端的なあらわれです。無駄づかいに徹底的にメスを入れるとともに、大もうけしている財界・大企業に、相応の責任と負担を果たさせるという立場を、大きく対置していくことが大切です。

 ――過去の侵略戦争と植民地支配を正当化する動きを許さない。五月いらいのとりくみをさらに前進させ、歴史をゆがめる逆流の根をたつところまでたたかいを発展させます。首相の靖国神社への参拝中止を強くもとめます。歴史をゆがめる教科書を子どもたちにおしつけることに反対し、過去の誤りへの反省という政府の立場を教科書に反映させることを要求します。アジア諸国とほんとうに心がかよう友好関係を築くために力をつくすという党の立場を、大きくおしだしていくことが大切です。

 ――憲法を改定して「日本を戦争をする国」にする動きにストップをかける。憲法改悪反対の一点での国民的多数派を結集する運動は、この一年間でめざましい発展をとげましたが、それをさらに前進させるため、立場の違いをこえた共同の一翼をにない、また党としての独自のとりくみをつよめます。この動きの根本に、米国の先制攻撃戦略に、日本を参戦させようという「日米同盟」の危険な変質があります。基地問題でも、自衛隊派兵問題でも、平和に逆行する動きに反対してたたかいます。「日米安保条約をなくし独立・平和の日本を」――国民のなかでこの声が広がるように全力をあげます。

 ――野党であっても、国民のたたかいと力をあわせて、国民の要求を国政に反映させるために力をつくす。国民と党との共同のたたかいで、解雇規制のルールを前進させてきたこと、「サービス残業」の根絶にむけたルールをつくってきたことについては、党創立記念講演会でくわしく話しました。くわえて介護保険の改善(国会と地方議会でのとりくみで、保険料・利用料の減免が約四分の一の自治体に広がる)、自然災害の復興支援(被災者救援のボランティアにとりくむとともに、住宅本体の再建への公的支援への検討・改善を約束させた)、三十人学級(文部科学大臣と中教審会長にその必要性を認めさせた)などでも、国民運動との共同で、国政を動かす大きな成果をおさめています。「九議席でもこれだけのことができる。この力をもっとのばして、国民の声がとどく国会を」という訴えが大切であります。

 ――自主独立の野党外交で、世界とアジアに働きかける。この間、この分野で切り開いてきた成果はたいへん大きいものがあります。地球人口の圧倒的多数をしめるアジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカ諸国との交流が大きく発展し、そこでおこっている社会進歩の流れと、わが党の立場が深く共鳴しあうことが確認されました。歴史問題の解決のための提起、北朝鮮問題など北東アジアの平和と安定のためのとりくみ、無法なイラク戦争に反対し国連憲章にもとづく平和の国際秩序をつくるとりくみなど、わが党の野党外交の値打ちは、日本外交の閉塞状況との対比で、たいへん光るものがあります。野党外交をひきつづき発展させることも、「野党としての公約」の大切な中身です。

 ――清潔・民主主義をつらぬく党の政治姿勢。財界からの政治献金を受け取らない、政党助成金を受け取らないというわが党の政治姿勢を、新鮮におしだすことも重視したいと思います。自民、民主は、日本経団連に通信簿をつけてもらい、企業献金ほしさに財界に忠誠を競い合う。「官から民へ」といいながら、政党助成金に頼る「国営政党」になりはてている。これでいいのかを、おおいに問いかけていくことが大切であります。

■日本共産党の路線・歴史・理念など全体像を語ることも重視して

 今度の選挙ではこうした「野党としての公約」を前面にたてて訴えますが、もとよりわが党はいつまでも野党でよいという立場ではありません。今度の選挙で自民党政治と正面から対決できる野党である日本共産党をのばすことが、かならず日本の政治の希望ある新しい局面を開く力となって働く、わが党が参加する民主的政権への新たな一歩になる。この展望もおおいに語っていきたいと思います。

 その点では、「野党としての公約」とともに、日本共産党はどんな党か、どんな日本をめざしているのか、どういう歴史をもっているのかなど、党の路線・歴史・理念などでの魅力と値打ちをおしだす訴えを縦横に展開することも大切であります。

 以上、三つの角度から、総選挙にむけての政治的構えについてのべました。この構えを全党のものとし、どんな様相の選挙になっても、わが党が、自力を発揮し、自らの力で「風」をおこし、議席と得票を増やすために、意気高くのぞもうではありませんか。

「比例を軸に」――一票一票を執念をもってつみあげ、議席にむすびつける

 つぎに、総選挙にむけた活動方針について、二点にしぼって報告しておきたいと思います。

 一つは、「比例を軸に」を文字どおりつらぬき、「全国は一つ」の立場で、執念をもって比例代表で一票一票を積み上げるとりくみをすすめることであります。

 これまでの選挙でも、「比例を軸に」ということを重視してきましたが、率直にいって、これまでの私たちの比例代表選挙のとりくみは、中選挙区制の時のような一票一票を他党としのぎをけずって争いながら、それを蓄積して議席にむすびつけるという迫力と執念をもったとりくみになっているかというと、まだそうなっているとはいえないのが実情でありました。今度の選挙では、文字どおりここに執念をもやしたとりくみを展開することをよびかけたいと思うのであります。

 このとりくみを推進するさいに、比例ブロックごとに政治目標を明確にしたとりくみをすすめるとともに、ブロックをこえて「全国は一つ」の立場で協力しあうとりくみをおおいにすすめることが大切です。

■比例ブロックごとの政治目標達成のため、支部の自覚的目標と計画を

 まず比例ブロックごとのとりくみについてのべます。総選挙の政治目標については、すでに確認しているように、「すべての比例ブロックで議席を獲得し、増やすことをはじめ、議席と得票の前進をめざして奮闘する」(二中総決定)ことにあります。この決定にそくして、比例ブロックごとに政治目標をもっていますが、その政治目標にふさわしい得票目標、支持拡大目標を、都道府県、地区、支部まで、自覚的にもち、その達成のために力をつくすことが大切であります。とくに「わが支部はどういう目標となるか」について、具体的なイメージがわくようなとりくみにしていくことが、重要であります。

 たとえば、中国ブロックは前回選挙で、二十三万四千三百五十九票、得票率6・3%で定数十一のうち十三位で議席を失いました。中林さんの議席奪還のための絶対当選確実の必要得票率は8・33%であり、得票率を一・三二倍にすることが必要となる。そのためにブロックの得票目標は、前回比一・四五倍の三十四万とし、支部ごとにも、一・四五倍というとりくみの具体的イメージを鮮明にする努力がなされていると聞きました。ブロックごとの政治目標をやりとげるために、それぞれの支部ではどういうとりくみが必要かというところまで、自覚的な目標と計画を具体化して、すべての支部のとりくみにしていくことが大切であります。

■すべての党員のむすびつきを生かした、「全国は一つ」のとりくみを

 同時に、ブロックをこえた、文字どおり「全国は一つ」のとりくみを大規模に組織していきたい。

 そのさい、すべての党員が、ありとあらゆる結びつき・つながりを生かし、それにもとづく名簿も整備して、可能性をくみつくすとりくみをおこなうことが大切であります。比例代表選挙は、全国どこの一票も、確実に議席につながる選挙であり、全国どこでも必勝区です。全国どこの一票も、同じように意義ある一票です。そして、比例代表選挙は、党そのものが候補者であり、そうした性格のたたかいにふさわしく、すべての地方議員、すべての支部と党員が、自ら自身のたたかいとして、この選挙にたちあがるようにしたいと思います。

■小選挙区のたたかいを意気高く――ここでも比例での前進に執念を燃やす 

 小選挙区での候補者擁立は、今回の緊急の事態にそくして、直面する選挙に勝つために、最大限の擁立をはかるという方針でとりくんできました。現在までに決定された小選挙区の予定候補者は二百四十人です。明日、比例代表候補者の第二次分の発表とともに、小選挙区候補者の第一次分の発表をおこないますが、これは第一次分であり、ひきつづき擁立の努力をはかります。

 小選挙区のたたかいは、情勢の激動と流動性、この間の中間選挙の結果などからみて、積極的奮闘によっては面白い結果が生まれることもありうることです。小選挙区でも前進・勝利をめざして、意気高く奮闘することが大切であります。そのさい、いかに比例代表での得票と議席をふやすかに執念を燃やし、小選挙区での立候補によってえられるさまざまな条件――ポスター、ビラ、宣伝カー、選挙公報、選挙はがき、政見放送、新聞広告、演説会などの条件を、比例での前進に最大限生かすことが重要であります。さらに、二度、三度の、継続的な挑戦によって、いずれは議席を争えるところまで前進する一歩と位置づけて奮闘することも重要です。

 「比例を軸に」とは、小選挙区のたたかいを抑えることでは決してありません。小選挙区での前進・勝利をめざす積極的とりくみを、おおいに激励し、それぞれの小選挙区でのとりくみを思い切って強めるようにしたい。そのなかで「比例を軸に」を自覚的ににぎって離さないということが肝要なのであります。

 昨日の幹部会の議論のなかで、比例ブロックの政治目標からすれば、比例の得票を一・三倍にすることが必要になる、ところがそれでは小選挙区で供託金をとりもどす一割以上の得票率に満たない。そこで小選挙区では一割をこえる得票をめざして奮闘したいという動きがあるがどう考えるか、という問題が出されました。小選挙区で、比例の得票目標をこえて、一割以上を確保し供託金をとりもどすところまで前進しようという動きがおこったら、おおいに積極的に激励・援助すべきです。比例代表での前進に執念をもってとりくむという中心課題がおろそかになりさえしなければ、小選挙区での積極的とりくみは比例の前進の大きな機運をつくりだすことになります。そのさい、小選挙区の得票目標が、比例代表よりも高くなることも、ありうることです。すべての政党が議席をあらそう比例代表と、三、四党の議席の争いとなることが多い小選挙区では、得票目標が違うこともありうることです。

 供託金募金・選挙闘争の強化募金を、こうした活動をささえるうえで不可欠のとりくみであることを訴え、また企業献金にも政党助成金にも頼らない党の政治姿勢をしめす活動であると、積極的に位置づけ、とりくみの前進をはかりましょう。そのさい高すぎる供託金の実態を告発し、この壁を突破して候補者を擁立することは、それ自身が民主主義をまもるたたかいであり、供託金募金は、「民主主義をまもるための募金」であることを、広く有権者に訴えることが大切です。

■候補者をたてない選挙区――比例一本に集中した攻勢的とりくみを

 候補者をたてない選挙区でのたたかいは、新しいとりくみとなります。ここでは選挙区でのたたかいはやらないということになります。ですから、投票は自主投票ということになります。そして、比例代表選挙一本に集中したとりくみを展開します。選挙区でどの党を支持する人にたいしても、「比例では共産党に」と正面から訴え、比例の前進に力を集中して、おおいに攻めに攻める攻勢的選挙をおこないたい。

 比例一本にとりくみを集中することで、生まれてくる新しい条件を、積極的に開拓することが大切です。そこで成果がえられれば、つぎのたたかいにむけた党の大きな財産となります。

 公職選挙法とのかかわりで、選挙本番前に、思い切って党の風をふかせる音の宣伝を重視し、本番では、文書宣伝とともに、比例の対話・支持拡大に集中してとりくむというメリハリも大切であります。

宣伝・支持拡大とともに、「大運動」の推進を握って離さない

 いま一つは、全有権者を対象とした大量政治宣伝と対話・支持拡大にただちに足を踏み出しつつ、「大運動」を推進する構えをいっそう高くして、党勢拡大での前進と飛躍をかちとることであります。

 候補者が先頭にたって、ただちに広い有権者のなかに打って出ましょう。憲法問題のポスター、靖国問題のビラを活用しきるとともに、宣伝カー、ハンドマイクをフルに使って、日本共産党の風を街におこすとりくみを、ただちに開始しましょう。明日、比例代表、小選挙区の候補者発表をおこなうさい、総選挙をたたかう党の基本姿勢を明らかにします。日本共産党を語り、支持を広げるとりくみを、全国でいっせいに開始しましょう。

■「大運動」――全支部、全党員が参加する活動に

 党勢を拡大することは、どの時期での選挙となっても、またどんな様相での選挙となっても、国民との一番たしかなきずなを強め、党の前進のための保障をきずく活動であり、どんな激動のもとでも確固として追求します。

 解散・総選挙の時期は、予断をもっていえない流動性があります。一番悪いのは、「様子見」になって、どちらつかずになることです。選挙戦にたちむかう政治的構えを全党に徹底し、宣伝と対話・支持拡大をすすめながら、選挙勝利の最大の保障は「大運動」という見地を、絶対に崩さず、推進をはかりましょう。

 「大運動」の到達点は、党員拡大は、五月、六月、七月と前進していますが、読者拡大は、五月は前進したものの、六月につづき七月も残念ながら全党的には後退しました。そのなかでも三十六道府県では前進しています。とくに、県と三つの地区のすべてが三目標をやりきった香川県の教訓はたいへん貴重であります。支部会議開催のための特別の努力をはかり、八割の支部で都道府県委員長会議の報告を討議し、七割の支部が党勢拡大で成果をあげています。これらの先進的努力に学びたいと思います。

 「すべての党員、すべての支部の運動になってこそ『大運動』」ということを強調してきましたが、全党的にはまだそうなっていないことを直視することが大切です。ここを、思い切って打開し、すべての支部と、すべての党員が、参加する活動に発展させるための努力を、何よりも重視しましょう。これが「大運動」推進の要であり、またこれは、即、選挙をたたかう態勢づくりともなります。

 都議選でも、党活動に参加していない同志の結集をかちとりながら、みんなの力をかつてないほど引き出して、激戦を制した経験がありました。これはきわめて貴重であり、総選挙のとりくみに生かすことがもとめられます。

■全党の臨戦体制の確立――八月中にすべての支部が会議をもち、足をふみだそう

 報告の最後に訴えたいのは、全党の臨戦体制をすみやかに確立しようということであります。

 そのための具体的提起をしたいと思います。それは、八月中に、一日でも早く、すべての支部が、支部会議を開き、選挙勝利にむけた活動を具体化・実践し、文字どおりすべての支部がたちあがる状況をつくりだそう、ということです。そのさい、すべての党員に声をかけ、すべての党員を結集する態勢をつくるために、特段の力をそそぐことが大切です。また、後援会ニュースを軸にした単位後援会の活動を、急速に強化することにも、力をそそぎたいと思います。

 今日の日本の現状は、冒頭にものべたように、外交でも、内政でも、これまでの古い政治の枠組みがいよいよゆきづまり、新しい政治をもとめています。国民の深刻な生活苦を打開するうえでも、歴史の逆流を許さず平和な日本への道を開くうえでも、まさに日本共産党の存在意義が問われる重大な情勢に、われわれは直面しています。きたるべき総選挙勝利にむけた全党の奮起を、心から訴えて、報告を終わります。


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