2005年8月7日(日)「しんぶん赤旗」
テロ1カ月のロンドン
地下鉄利用減り 自転車通勤増える
外国人退去や宗教施設閉鎖 首相対応に批判も
五十二人の犠牲者、七百人以上のケガ人を出した七月七日木曜日のロンドン同時多発テロから七日でちょうど一カ月になります。七日のテロの二週間後、二十一日には、七日のテロと同規模の被害者を出す可能性があったテロ事件が起こりました。警察当局は脅威はまだ現実的だとして、第三、第四のテロへの警戒を呼びかけるなか、ロンドン市民の生活は大きな影響を受けています。(ロンドン=西尾正哉)
七月七日のテロ以降、ロンドン市内で目につくのは蛍光色のレモンイエローのジャケットを着た警官たちと、通勤に自転車のペダルをこぐ市民です。
英警察当局は今月四日木曜日、ロンドンの地下鉄駅や鉄道ターミナルに六千人の警官を配備して警戒にあたりました。
特定のテロ情報があったわけではないと警察側ではいいますが、各駅の改札の前に警官が立ち、乗降客に目を光らせました。七月二十八日の木曜日にも警官を大動員するなど、ロンドンではこのところ二つのテロのあった木曜日に特に警戒体制を敷いています。
■街全体が過敏
テロで爆破された路線の一つ、ピカデリー線は四日、開通しましたが、テロ事件以降、ロンドンの地下鉄の利用者数は落ち込んでいます。平日は15%、週末は30%減少しました。
代わりに目立つのが通勤に自転車を利用する市民です。英紙タイムズが、ロンドン市内の代表的な八つの自転車店を調べたところ、テロ事件以降自転車の売り上げが三倍になったといいます。特に女性の購入が多いといいます。
二十一日のテロ事件容疑者の四人は拘束されましたが、いまも警察の捜査は進められており、市内で突然、警察の家宅捜査や道路封鎖に直面することもしばしば。テロに街全体が過敏になっています。
この二日には、キングズクロス駅付近を走っていた満員のバスがエンジントラブルで後部から白煙を出し、テロと間違えた乗客が二階部分から飛び降りてケガをしました。
ブレア首相は五日、テロを扇動する思想を広げたとして二つのイスラム組織の活動禁止を発表しました。これは、暴力を扇動する外国人を国外退去処分にしたり、テロ思想を助長する宗教施設を閉鎖するなど首相が発表した新たな方針に基づくものです。
英国ではすでに治安への脅威となる人物を追放することが可能です。ブレア首相は、テロを支持する人物も国外退去処分するとし、こうした人物の国外退去を「より直接的にできるようにする」と言明。五日の記者会見でも、「英国のもてなしの気持ちが誤用されてきた」とし、「ゲームのルールは変わりつつある事を知るべきだ」と述べました。
■新たな問題も
しかし、移民の固有の文化や価値基準を容認してきたこれまでの政策の転換にもつながる首相のテロ対策には批判と懸念の声が上がっています。
野党第二党の自由民主党のケネディ党首は、イスラム組織の禁止やモスクの閉鎖、特定の書店を出入りした人物の国外退去など、新たな対策は「緊張を増加させ人々を疎遠にする」と批判しました。人権擁護団体の「リバティー」は、「主要な人権への攻撃であり、国家的な統一を危険にさらす」と反対。新たなテロ対策は移民政策や人権問題ともからみ、新たな問題として浮かび上がっています。

