2005年8月6日(土)「しんぶん赤旗」

冷蔵庫

省エネも電気代節約も幻だった

ごまかしの実態や手口が次々明らかに


 省エネも電気代節約も幻だった――。冷蔵庫の消費電力量のごまかしの実態、手口が次つぎと明らかになってきました。密室での省エネ基準づくりを問う声も起こっています。


表

■同じ機種なのに違う消費電力量!?

■基準づくりの情報公開を

 省エネルギーセンターが発行する『家電製品の省エネ性能カタログ』の「1998年夏」と「1999年夏」を比べると、冷蔵庫の同じ機種なのに、「年間消費電力量」が異なり、「年間電気代」も大きく上昇しているものがありました(表参照)。メーカー各社によれば、「JIS(日本工業規格)消費電力量の測定方法が変わったので、数値も違ってくる」といいます。

 一九九八年は、周囲温度二五度、扉開閉なしなどという「JIS B法」という測定方法(年平均一カ月当たりの消費電力量で表示)でした。一九九九年は、一日の扉開閉回数・冷凍室8回、冷蔵室25回などとなっている現在の「JIS C 9801」に変わったからというわけです。

 「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)に基づき、省エネ性能の向上の目標基準などをきめる「総合エネルギー調査会省エネルギー基準部会電気冷蔵庫判断基準小委員会最終とりまとめ」(1999年)をみると――。

 「1995年からのエネルギー消費効率の向上は、試験方法の変更によるもので、本質的な向上ではない」と記述。1994年から開始した「JIS B法」測定は、「測定条件に扉開閉がないため、測定値と実使用時の消費電力量が乖離(かいり)する結果となった」としています。

 消費者の告発をもとに、本紙は、ヒーター類を通電せず測定する現在の電気冷蔵庫の「JIS年間消費電力量」が実態と乖離している問題を指摘してきました。消費者をあざむくような、実態との乖離が繰り返されない対策が必要です。全国各地の消費者・環境団体・自治体有志など三十一団体は、国や業界団体に対し、実態と大きくことなることが判明した時は直ちに公表し、是正措置をとること、測定方法を見直すこと、省エネルギー基準にかかわる審議にかんする情報・資料を公開すること、などを求めています。


■それでも税金使って買い替えキャンペーン

■国の外郭団体「省エネセンター」

 経済産業省資源エネルギー庁の外郭団体、財団法人省エネルギーセンターは、実態の三―四分の一の消費電力量を示して消費者に、電気代の節約になるからと買い替えをすすめるキャンペーンを、依然として続けています。

 同センターのホームページの「Q&A」では、「冷蔵庫を買い換えの予定です。今150リットルを使っていますが、もっと大きいものでも消費電力が少ないと言われましたが、本当でしょうか?」との設問をたてて、「その通りです」と、偽りの回答をしています。

 また、「五年前に購入した冷蔵庫ですが消費電力の面から買い換えた方がよいでしょうか」と設問をたてて、「主力の内容積401〜450リットルのもので比較します。1999年夏現在で販売されていたものの平均の年間消費電力量は619kWhでしたが、2004年夏のものは平均236kWhに下がっています。標準の使用状態で電気代でほぼ8800円の節約となります」とします。

 省エネルギーセンターは、南直哉東電顧問が会長をつとめ、役員に奥田碩トヨタ自動車会長(日本経団連会長)はじめ、電力、ガス、電機など大企業会長、社長らが名を連ねています。同センターの予算は八割近くの四十三億円が国の補助金などです(〇五年度)。国民の税金で消費者をあざむく買い替えキャンペーンをすすめているのです。


■「買い替えで電気代増えた」

■読者が消費電力を測って告発

グラフ

 「冷蔵庫を買い替えたら、古い冷蔵庫より消費電力が増えた。カタログを見比べて省エネ機種を選んだのにだまされた」――。「しんぶん赤旗」の報道を読んだ電機関連会社を経営するAさん(神奈川県在住)から、買い替える前と、買い替えた冷蔵庫についての消費電力測定値と怒りの声が届きました。

 Aさんが、約十年ぶりに電気冷蔵庫を買い替えたのは今年三月でした。

▼表示の4倍にも

 もともと環境問題に関心を持っていたAさんは、それまで使っていた電気冷蔵庫の消費電力量も買い替え直前に測定していました。年間消費電力量に換算すると約540キロワット時でした。

 ところが新しく購入した冷蔵庫(カタログでは年間消費電力量210キロワット時)は、実際に測定してみると年間740キロワット時相当の数値になりました(三月―四月にかけて465時間測定)。カタログ数値の約3.5倍。これまでより年間200キロワット時(約37%)も増えることになります。

 七月に消費電力量を再度測ってみると、年間1040キロワット時にアップ。室温は約三〇度でした。「カタログ値の約5倍です。室温二五度ぐらいなら、カタログ値の4倍になりそうです」

 Aさんは、周りの人にも声をかけて、冷蔵庫の消費電力量を調べました。

 十数年間使っていた冷蔵庫を五月に買い替えた人の場合、古い冷蔵庫は年間660キロワット時(カタログ値807)。新しい冷蔵庫は年間633キロワット時で、両者はほとんど変わりませんでした。

 Aさんが今年購入したのと同じメーカーの冷蔵庫を十二年前から使っている人の場合、室温三〇度で年間1220キロワット時。Aさんの年間1040キロワット時という数値と大差ありません。三年前に別会社の製品を購入した人の場合は、年間1010キロワット時でした。

▼本当の省エネを

 測定結果では、新しいタイプの冷蔵庫に買い替えても、ほとんど消費電力量は減らないか、場合によっては増えています。消費電力量は室温によって大きく変化し、三〇度あった七月の測定では、カタログ値の五倍近い数値もでています。

 Aさんは言います。「測定結果には、本当にがっかりしました。十年前のより消費電力量が増えるような冷蔵庫を作っていていいのか、といいたい。販売店では“省エネ基準を大幅に超過達成。すごい省エネの商品ですよ”などと売っている。実際には新しい冷蔵庫に買い替えても、電気代は安くならないし、温暖化防止にも役立たない。消費者をだましています。消費電力を増加させているさまざまなヒーターは本当に必要なのかどうかも含めて、検討する必要があるのではないでしょうか。本当の省エネ製品をつくってほしい」


■エッ 家で測ってみたら「表示」の3.5倍も

 〇…家庭でも手軽に消費電力量を測定する器具があるというので、さっそく入手し、わが家の冷凍冷蔵庫で調べてみました。その測定器(写真)はコンセントにさしこむだけ。そこに、冷蔵庫の電源プラグをさしこめばセット完了です。セットと同時に、測定器はすぐに時間(h)と消費電力量(kWh=キロワット時)を刻み始めました。しばらく見つめていましたが、電気代(1kWh=25円で設定)を示す数字はゼロのまま。二時間後、様子を見にいった記者は、思わずキャーッと叫んでしまいました。そこには、早くも「10円」という数字が刻まれていたからです。「二時間で10円! だったら一日で120円? 一カ月で3600円? 冷蔵庫だけでそんなに電気代がかかるの?」

 〇…記者が測定器をセットしたのは、午前一時。その時間、家族は寝静まり、だれも冷蔵庫は開け閉めしていません。ドア内側の品質表示ラベルによると、冷蔵庫の消費電力量は月40kWh。電気代に換算すると、1000円ほどにしかならないはずなのに…。三日間の測定結果は、消費電力量13・9kWh、349円。月に換算すると、3490円となり、表示の3.5倍の電気代がかかることがわかったのです。

 〇…たまたま、この三日間、わが家のキッチンは、二回の夕食作りに使われただけ。家族四人が全員、昼間は家にいなかったわけで、冷蔵庫を開ける頻度はそんなに多くはなかったのです。これが、昼間も家族がいる家庭だったら? 三度のごはんをきちんと作る家庭だったら? 電気代はもっとはね上がったはずです。

 〇…わが家の冷凍冷蔵庫は、東芝一九九八年一月―六月期製造のもの。内容積345リットルのごく普通の大きさです。消費者は、ずーっとだまされていたわけ? 疑問と怒りはふくらむばかりです。

 (紀)


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