2005年8月4日(木)「しんぶん赤旗」
幹事長室で献金受領
日歯連疑惑 山崎氏認める
日本歯科医師連盟(日歯連)から三千万円の迂回(うかい)献金を受け取ったとして、東京第二検察審査会から「起訴相当(政治資金規正法違反)」の議決を受けた自民党の山崎拓前副総裁が、臼田貞夫・日歯連前会長らから自民党幹事長室で陳情をうけたさい献金を受領したことを認めました。三日の参院郵政特別委員会で日本共産党の井上哲士議員が郵政民営化法案修正案の提案者である山崎氏を追及したのに答えたもの。
井上議員は、当時の「日歯広報」で二〇〇一年十一月三十日に臼田氏らが山崎氏に陳情したことが記載されている事実を指摘。検察審査会が指摘する献金日と一致することを示しました。山崎氏は、この日に臼田氏らから幹事長室への「陳情があったのは事実」と認め、そのさいに「五千万円の寄付を受け取った」とのべました。しかし山崎氏は「自民党に対する寄付」だとし、「しばらく幹事長室で預かり、事務局のものがロッカーに入れたと記憶している。(一カ月弱後)自民党の事務局に手渡した」と弁明しました。党への献金を本部内の幹事長室に一カ月近くも置いたという不自然な説明です。
検察審査会は、日歯連の現金出納簿には「平成十三年十一月三十日に山崎拓衆議三千万円、自見庄三郎衆議一千万円、木村義雄衆議一千万円」との記載があることを明らかにし、実際は三議員に向けた献金なのに、あたかも自民党の政治資金団体である「国民政治協会」に計五千万円を献金したかのように見せかける迂回献金の疑いを指摘しています。
井上議員は、日歯連の内田裕丈前常任理事が山崎氏ら三人に支出したと供述していることなどにもふれ「まさに迂回献金そのものだ」と重ねて追及。山崎氏は「あらためて捜査当局の判断がある」などとこたえました。
▼検察審が「起訴相当」解明へ責任はたせ
「『迂回(うかい)献金はない』という首相の答弁が虚偽であることは明白だ。真相の徹底解明を求める」―三日の参院郵政民営化特別委員会で日本共産党の井上哲士議員は、東京第二検察審査会が「起訴相当」の議決をした山崎拓前自民党副総裁の疑惑を追及。修正案の提案者として答弁席に座る山崎氏に問いただしました。
郵政民営化以外に課題がないかのように熱中する政府与党ですが、自民党ぐるみのヤミ資金操作という深刻な疑惑の解明にこそ責任を果たすべきです。
■政治不信深まる
東京第二検察審査会が山崎氏を起訴相当とした理由は、日本歯科医師連盟(日歯連)の出納簿に山崎氏ら三人への献金の記載があったことです。自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金なら出金伝票を三つに分ける必要はなく、党を経由して特定の議員にあてた迂回献金の証拠となりうるからです。
同様の領収書はほかにも確認されており、具体的な事実に基づく審査会の判断で迂回献金疑惑はいっそう深まりました。
しかし山崎氏は「起訴相当とされるいわれはない」と事実を否定。自民党総裁である小泉首相も「迂回献金の事実はない」とした同党の調査を追認し、再調査する考えのないことを示しました。この自浄能力のなさが国民のいっそうの政治不信を招いているのです。
■審査会議決の重み
日歯連をめぐる事件では一月、東京第二検察審査会が自民党旧橋本派の一億円ヤミ献金事件で橋本龍太郎元首相、青木幹雄参院議員会長、野中広務元幹事長を不起訴不当と議決。四月には自民党の迂回献金疑惑について同第一検察審査会が佐藤勉衆院議員と元宿仁事務局長に対し不起訴不当の議決をしています。
審査会は、一般有権者から選ばれた市民が、検察官が起訴しなかった事件についてその是非を審査する場です。十一人の審査員のうち六人以上が再捜査を求めると不起訴不当、八人以上なら起訴相当となります。起訴相当処分は審査会の議決で最も重く、二〇〇三年の全国総数千九百三十七のうち六件とわずか0・3%しかありません。
日歯連がなぜ自民党議員に献金攻勢をかけたか。診療報酬改定など業界団体の要求をカネの力で通そうとしたためです。政治をカネで買う日歯連事件の構図に国民が憤ったのは当然でした。
しかし自民、公明与党は今国会で野党の証人喚問要求を一貫して拒否。「政治とカネ」集中審議は企業献金、政党助成金、ぐるみ選挙という共通の弱点を持つ自民、民主が非難合戦の様相を呈し、真相究明は深まりませんでした。
■国会の責務は
一方で一億円ヤミ献金事件の村岡兼造被告の公判では青木氏、野中氏、橋本氏が法廷で順次証言に立つことが決まりました。疑惑をうやむやのままに済ませるのでは健全な市民常識が下した判断を無にすることになります。司法任せにせず、国会の場で真相解明をして決着をつけるべきです。(古荘智子)

