2005年8月2日(火)「しんぶん赤旗」

地中貫通核爆発の恐怖

放射能の火砕流発生

「被害少ない」の米国主張に警告


 米国が開発を進めている地下貫通核兵器は“放射能の火砕流”を引き起こし残留放射能による深刻な内部被ばくをもたらす。地下貫通核が周辺市民に損害を与えないとの主張は成り立たない―沢田昭二・名古屋大学名誉教授は、七月末に広島で開かれたパグウォッシュ会議年次総会に提出したペーパー(文書)で指摘しました。

■沢田昭二名大名誉教授が指摘

 米国は、地下にある司令部や大量破壊兵器貯蔵施設など敵国の強固な地下施設を破壊できるのは核兵器だけだと主張。ここに核兵器の不可欠な存在意義があるとして、地中貫通核の開発を推し進めようとしています。その際、地中貫通核は地下で爆発するので周辺住民に及ぼす被害が少ないと強調。この核兵器が「きれいな核」であるかのように宣伝しています。

 これに対し沢田氏は、米国の地中貫通核兵器開発で、核爆発のさまざまな影響に加え、内部被ばく問題がまともに考慮されていないと指摘。地中貫通核が使用されれば、広島、長崎への原爆投下以上の規模の内部被ばくが引き起こされると指摘しています。

 広島、長崎の場合は、地上五百―六百メートルの空中で核兵器が爆発したため、放射性降下物の影響は幾分緩和されました。しかし「地中貫通核が地下数十メートルの地点で爆発した場合、核爆発によってできる火の玉が、強力な放射性物質を含む熱い岩や灰からなる火砕流を生み出す」と沢田氏は指摘しています。

 「広島、長崎が『二十世紀の地獄』を引き起こしたように、地中貫通核は『二十一世紀の地獄』を引き起こす」―沢田氏は警告します。

 沢田氏はペーパーで、広島、長崎への原爆投下での、放射性降下物による内部被ばくの深刻な影響を詳しく解明しています。米国が内部被ばくの影響を隠そうと画策し、それが日本政府にも影響を及ぼしてきたことを告発。現在、日本全国で取り組まれている原爆被害者の原爆症認定集団訴訟で内部被ばく問題が中心的争点になっていることを紹介しています。

図

 ▼内部被ばく 呼吸や飲食を通じて体内に摂取した放射性物質が出す放射線による被ばくを内部被ばくといいます。

 原爆による被ばくとしては、爆発に伴って放射される初期放射線による被ばくのほか、爆発でばらまかれる放射性降下物と初期放射線によって誘導放射化された物質からの被ばくがあります。被ばくの影響は、体の外部からの放射線による外部被ばく線量と、内部被ばく線量によって左右されます。

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