2005年7月31日(日)「しんぶん赤旗」

郵政民営化

参院審議で問題点次つぎ

国民へのサービス低下
米国の「関与」も鮮明に


 郵政民営化法案をめぐり、与党は八月五日にも参院本会議での採決を目指すとしています。しかし、参院での日本共産党議員の質問を通して、法案の欠陥と反国民的な問題点が次々に浮上。参考人質疑や地方公聴会でも、サービス低下など民営化の問題を指摘する声が続出しています。採決など、とてもできる状況にはありません。(遠藤誠二、矢守一英)


■郵便局が使えなくなる

 「私たち離島に住む人間にとっては、もう郵便局が使えなくなるといっても過言ではありません」。二十六日の参院郵政民営化特別委員会の参考人質疑で、長崎県議会の末永美喜議長はこう発言しました。

 現行の郵便局の数が維持されなくなることへの憂慮です。「民間の銀行もない。農協、漁協も撤退して残っているのは郵便局だけ。銀行に預けようとしたら一日に二回か三回かバスに乗って、一日仕事なんです」

 県議会は「郵政事業は(郵便、郵便貯金、簡易保険の)三事業一体化した経営形態が最善」として、民営化に反対する意見書をあげています。

 民営化そのものには賛成という石川県の谷本正憲知事も、郵貯・簡保に全国一律サービスが義務付けられていないことに言及。「年金の受け取りなど高齢者にとっても重要なサービスが安易に切り捨てられることのないようにしてほしい」と注文を付けました。

 二十八日に京都と盛岡両市で開催された地方公聴会でも、多くの公述人から「民営化で過疎地には悲惨な結果が予想される」など批判が噴き出しました。

■やはりアメリカいいなり

 日本共産党の大門実紀史議員は二十五日の特別委員会で、米国政府自身の文書で、郵政民営化法案の骨格が米国の要求に基づき修正された事実を暴露、アメリカいいなりの深刻な実態を浮かび上がらせました。

 この文書は、米国の通商分野を一括して管轄する米通商代表部(USTR)が三月に出した「通商交渉・政策年次報告書」です。昨年八月に保険をめぐる日米協議が東京で開かれ、「その後、内閣の設計図(郵政民営化の基本方針)には米国が勧告した次のような修正点が含まれた」と記述。修正点は、郵政公社への納税義務、郵政公社の保険商品に関する政府保証打ち切り―などで、これらを盛り込む書き換えが米国の要求通り行われていたのです。

 大門議員の追及に竹中平蔵郵政民営化担当相は、郵政民営化準備室と米国関係者が昨年四月以降十八回も協議を重ね、そのうち五回が保険関係者の会合であることを明らかにしました。米政府のみならず、米保険業界の圧力がかかったことが容易に想像できます。

 日本共産党の小池晃議員が十五日の特別委員会で行った質問では、同準備室百六人のスタッフのうち、十三人が民間から“天上がり”し、うち八人が日本銀行や全国銀行協会、日本損保保険協会など金融関係者で占められていることが判明しました。

 結局、郵政民営化の狙いが、郵貯・簡保にある三百四十兆円にのぼる国民の財産を、日米の金融、保険業界に明け渡すことにあることがはっきりしました。小泉内閣が、国民には「百害あって一利なし」の郵政民営化にしがみつく理由がそこにあることがいっそう浮き彫りになっています。

■小口サービスばっさり

 民営化の最大の問題は国民サービスの低下をもたらすことです。参院での審議では、新たな角度から問題が次々と明らかになり、法案はボロボロになりつつあります。

 民間銀行並みになれば庶民向けの金融サービスはどうなるか―。小池議員は、店舗や行員を減らす大銀行の実態とその「経営戦略」を告発しました。(十五日の特別委員会)

 みずほグループの場合、預かり資産額に応じて客を分類し、一千万円以上にはきめ細かいサービスを提供する一方、一千万円未満は「マス顧客」と区別。郵政民営化は、収益至上主義で、利用者・国民の利便などおかまいなしという民間銀行の「戦略」のもとに郵便局を追いやり、サービス切り捨てが進むのは必至です。

 日本共産党の吉川春子議員は、過疎地の命綱でもある簡易郵便局の存続ができなくなる問題や、口座手数料の発生により口座が持てなくなる「金融弱者」を問題にしました。(十九日、二十日の特別委員会)

 大門議員は、分社化で生じる委託手数料の経費が増える問題を示し、一体経営で成り立つ郵便、郵貯、簡保の三事業を無理やりバラバラにする民営化の矛盾を突きました。(二十一日の特別委員会)

 矛盾だらけ、国民そっちのけで進められる郵政民営化。国民犠牲の本質もいよいよ鮮明になっています。


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