2005年7月28日(木)「しんぶん赤旗」
地底からニュートリノ
世界で初観測
東北大などグループ
地球の熱源解明に期待
地球深部の放射性物質の崩壊で発生した素粒子「地球ニュートリノ」を、岐阜県神岡鉱山の地下にある東北大学の観測装置「カムランド」が世界で初めてとらえました。将来はこの方法で、地球を内部から温め続けている放射性物質の量を直接測定できるようになるかもしれないといいます。研究成果は、二十八日発行の科学誌『ネイチャー』に発表されました。
カムランドは、同じ神岡鉱山の地下にある「スーパーカミオカンデ」よりエネルギーの小さなニュートリノを観測できるのが特徴です。これまで、原子力発電所の放射性物質の崩壊にともなって発生する反電子ニュートリノ(電子ニュートリノの反粒子)の観測で成果をあげています。
東北大学ニュートリノ科学研究センター(鈴木厚人センター長)を中心とする国際研究グループは、カムランドが稼働を始めた直後の二〇〇二年三月から〇四年十月まで約七百五十日間の観測データを解析。その結果、地殻やマントルなどに存在する放射性物質のウラン238とトリウム232が崩壊する際に発生したとみられる反電子ニュートリノは、90%の信頼度で四・五―五十四・二個とらえられていたことがわかりました。
これまでの隕石(いんせき)の研究をもとにした予測値は十九個で、この値と矛盾していないといいます。
研究グループの井上邦雄・東北大学教授の話 今回の結果はまだ誤差が大きい。今後、カムランド自身の精度をあげるとともに、より地球内部の情報を得るのに適したハワイなどで観測をおこなうことで、地球物理学的に意味のあるデータを得たい。

