2005年7月27日(水)「しんぶん赤旗」
警察の方針めぐり揺れる英国
ブラジル人青年射殺事件
疑問、「行き過ぎ」と批判
【ロンドン=西尾正哉】英警察当局がテロ容疑者と誤ってブラジル人青年を射殺した事件が、連続した同時テロの脅威に直面する英国社会を揺さぶっています。警察の方針をめぐって、メディアや政治家らが疑問や行き過ぎとの批判の声を上げる一方で、警察の最高責任者は方針を改めないとしています。
議論の対象となっているのは、自爆テロを防ぐために容疑者の頭部を撃つという方針。スティーブンス警視庁前総監がイスラエルを視察し採用したもので、同氏は「自爆テロの実行を確実に止めるには一つの方法しかない。脳を即時に、完全に破壊することだ」(英紙ニューズ・オブ・ザ・ワールド二十四日付)とのべました。
この方針に対し、ブレア政権与党の労働党議員らは異を唱えています。
警察・治安問題を扱う下院の内政問題委員会に所属するアン・クライアー議員は「われわれは、射殺する道を自動的に取るべきでない。それをすれば、われわれがテロリストのマントを着けることになる」とフィナンシャル・タイムズ紙二十五日付で指摘しました。
しかし、ロンドン警視庁のブレア警視総監は、「今後も、新たな犠牲者が出るかもしれない」とこの方針を継続する姿勢を示しました。
英紙タイムズ二十五日付社説は、「英国は理性や抑制に従わない脅威に直面している。(頭部を撃つという)方針は不可避である」と指摘しました。
一方、英紙ガーディアンは二十五日付社説で、この方針を支持しながらも、「マイノリティー(少数派)の間での警察に対する信頼、これはテロリストを特定する上でカギとなるが、ひどく揺さぶられている」と誤射事件を批判し、ブラジル人男性が射殺されるに至った状況には疑問が多いと強調しました。

