2005年7月27日(水)「しんぶん赤旗」

道路公団「官製談合」

回り回って被害は国民に


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 日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事をめぐる談合事件は、公団ナンバー2で技術系トップの副総裁逮捕で官製談合事件に発展しました。浮かびあがったのは見返り癒着の構図です。官製談合による工事発注―天下り―不当利得から政治献金―談合課徴金引き上げに政界の圧力――。そんな構図で大きな被害を受けるのが国民です。(山本豊彦)

■「天下り」=ワイロか

 「『天下り』の受け入れは工事発注の“ワイロ”ではないのか」。今回の事件で検察当局は当初から、天下りと工事受注には密接な関係があるとみて捜査を進めてきました。

 実際、本紙の調べでも、橋梁メーカーが公団OBの天下りを受け入れているかどうかで公団発注工事の受注額に大きな違いがあります。

 例えば大手メーカーでつくる談合組織「K会」加盟社の昨年度までの五年間の公団発注工事の受注額。十七社中天下りを受け入れた十五社には百億円台の受注がある一方、天下りを受け入れなかった残りの二社は約三十億円、約十七億円と一ケタ低い受注額です。

 天下りと工事発注の関係をシステムとして保証していたのが官製談合です。今回のケースでも、橋梁メーカーに天下りした元理事の依頼を受けた公団副総裁の内田道雄容疑者(60)は、受注機会を増やしたいという業界側の意向にそった分割発注を部下に指示していました。

 公団による天下りは鋼鉄製橋梁メーカーだけではありません。コンクリート製橋梁メーカー、さらにはトンネル工事などをする大手ゼネコンまで広がっています。しかもコンクリート製橋梁工事やトンネル工事の落札率(予定価格にたいする落札価格の割合)は、談合が指摘されている鋼鉄製橋梁工事以上に高い。公団発注工事すべてで官製談合がおこなわれている重大な疑いがあります。

■不当利得3000億円超

 今回の事件で検察当局は、業界の意向を受けて分割発注にした結果、内田容疑者は、五千万円の不要な支出を生じ公団に損害を与えたとして背任容疑も逮捕容疑に加えました。これも国民の負担になります。

 公正取引委員会が過去の入札談合事件をもとに、談合による不当利得の平均値を推定しました。受注額の18・6%。公団が昨年度までの五年間に発注した鋼鉄製橋梁工事だけで計算すると、不当利得額は千四百三十五億円。日本共産党の仁比聡平参院議員の試算によるとコンクリート製橋梁やトンネル工事を含めると総額は三千億円をこえる巨額なものとなります。

 公団発注工事の原資となっているのは、通行料や財政投融資など。談合により橋梁メーカーは巨額の不当利得を得る一方、国民は被害者となっているのです。

■正副7大臣にも献金

 談合により橋梁メーカーが得た不当利得の一部は政界にも流れます。

 日本共産党の井上哲士参院議員の調べでは二つの橋梁談合組織の加盟企業から自民党の政治資金団体「国民政治協会」への献金は、〇三年までの十一年間で約十六億円にも。小泉内閣の大臣・副大臣計七人も総額八百六十四万円(〇三年までの四年分)の献金を受けていたことが同党の穀田恵二衆院議員の調査で判明しています。

 公団工事に政治家関与の疑いも本紙の取材で浮上しています。

 先に逮捕された公団元理事は在職中、政治家陳情の窓口で、二〇〇〇年ごろまで自民党の有力建設族議員事務所が「天の声」を出すシステムがありました。これも官製談合を温床にしています。

■低い日本の課徴金

 日本経団連の有力会員である橋梁メーカーなどが長年にわたり談合を続けてきたのは、欧米と比べて日本の課徴金があまりにも低いからです。

 独占禁止法に違反した業者への課徴金は現行、違反対象商品の売上高の6%(来年一月に10%に引き上げる予定)。

 これにたいし米国では対象商品の売上高の15―80%の罰金。欧州連合(EU)の課徴金は、違反対象商品だけでなく総売上高の10%以下です。

 昨年までの三年間の課徴金額(一社平均)では、EUは日本の約七十三倍です。

 談合の取り締まり強化策だった課徴金の大幅引き上げをめざした独禁法の改正では財界から圧力がかかりました。

 昨年の通常国会では、財界側の意向を受けた自民党独占禁止法調査会が改正案の国会提出見送りを決定。その後の臨時国会では、課徴金を現行6%から10%に引き上げる独禁法改正案が提出されたものの、民主党がより甘い対案を出し時間切れで継続審議に。この民主党案はマスコミから「民主党案は日本経団連が出した案に似ている部分が目立ち、国会で与党から『政治献金ほしさの対応』という発言も出て一時、紛糾した」(「日経」昨年十二月三日付)と書かれるほどでした。

 日本共産党は課徴金を現行の三倍にする修正案を提出しました。


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