2005年7月24日(日)「しんぶん赤旗」

どうみる人民元切り上げ


 中国人民銀行(中央銀行)は21日、これまで米ドルとの間で事実上固定していた中国の通貨、人民元の為替レートを対ドルで2%切り上げました。ユーロや円など複数通貨の動向も参考にする「通貨バスケット制」を採用しました。そのしくみ、背景や影響などについてみてみました。


■新たな仕組みとは

 中国が新たに導入した為替制度は、「通貨バスケット制を参考に調整し、管理された変動相場制」だとされます。

 「管理された変動相場制」は、変動制のもとで、通貨当局によって管理される為替制度です。変動制のもとで相場が乱高下すると、貿易取引や経済活動に混乱が生じるので、変動幅を一定の範囲にとどめる管理を行うのです。

 今回の中国の為替制度では、人民元とドルの相場は、基準値の上下0・3%の幅の変動にとどめられます。ドル以外の通貨の場合は、上下1・5%の幅で変動します。

 中国人民銀行(中央銀行)は毎日、当日の銀行間取引の終値を公表し、これを翌日の基準値とします。

 人民元と米ドルの相場は七月二十一日午後七時(日本時間同八時)、一ドル=八・一一元に調整されました。従来は、一ドル=八・二七六〇―八・二八〇〇元の範囲に固定されていたため、約2%の人民元切り上げということになりました。

 この相場が翌二十二日の基準値です。二十二日には、一ドル=八・一一一一元と、わずかに人民元安となりました。これが二十三日の基準値となります。

 そして、こうした人民元の変動は、「通貨バスケット制を参考に調整」して、決まります。

 通貨バスケットとは、複数の外国通貨を入れた「かご」です。そして、それらの通貨の加重平均を一つの通貨のようにみなして、それと人民元を連動させるのです。

 例えば、ドルとユーロが50%ずつのバスケットを想定します。ドルがユーロに対して10%上昇しても、人民元は、バスケットのなかの比率に連動するため、ドルに対する下落の幅は半分の5%となります。ドルと直接連動している場合は、10%の下落です。

 実際には、こんなに単純ではなく、中国の通貨当局も、どんな通貨がどんな割合で入っているかを明らかにしていません。

 また、変動を小さく抑えるため、従来と同様に、ドル買い人民元売りの市場介入を行うのか、行うとすれば、どの程度の規模なのかも、不透明です。

■ドル離れの可能性も

 中国が導入した「通貨バスケット」は、その中身によっては、中国のドル離れが進むと指摘されています。

 一九七一年八月、米国はドルと金の交換を停止しましたが、ドルは、米国の経済力や軍事力を背景に、基軸通貨の地位を維持してきました。

 しかし今では、米国の財政赤字と経常収支の「双子の赤字」が膨大になり、世界にたれ流されたドルの暴落という「ドル不安」がつきまといます。

 一方、欧州では、欧州連合(EU)の共通通貨ユーロが誕生し、国際的な貿易・金融取引にも使われ始め、ドル一極体制が弱まっています。

 自国通貨をドルだけに連動させるのは危険だという考えが出ています。ドルなど外国通貨の大きな変動から自国通貨を守る方策の一つが、今回、中国が採用した通貨バスケットです。

 中国の通貨バスケットにどの通貨がどの割合で入っているかは発表されていません。

 しかし、ドル連動でなくなったことで、ドル離れの可能性が生まれています。また、バスケットの採用で、中国が七千百十億ドルにものぼる外貨準備を、ユーロなどドル以外にも分散する可能性も指摘されています。

 東南アジア諸国は一九九七年のアジア経済危機の教訓から、過度のドル依存を避ける方策を探っており、域内貿易で域内通貨を使用する試みも始めています。

 その流れともあいまって、中国の為替制度変更は、将来のアジアのドル離れの可能性を含んでいるといえます。

 (北川俊文)


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