2005年7月21日(木)「しんぶん赤旗」

ニセ旧1万円札事件で実刑

偽造組織が一括製造か

暴力団の資金源に


 年末年始に全国で大量に偽の旧一万円札が使われた一連の事件。偽造通貨行使の罪に問われていた暴力団員に、札幌地裁は十五日、懲役四年六月の実刑判決を言い渡しました。各地で暴力団幹部らの摘発が相次ぎ、偽札の記番号は十数種類にのぼるなど、偽造組織の存在を含め、全容解明が必要です。

■公衆の信用

 今回、実刑判決を受けたのは、福島市の指定暴力団山口組系組員、鈴木道生被告(29)。

 判決などによると、鈴木被告は、福島県内で暴力団関係者から入手した偽一万円札二百枚のうち、八十三枚を、今年元日、初詣でで混雑する札幌市中央区の北海道神宮で、仲間四人とともにお守りなどの購入に使い、釣り銭を詐取しました。昨年十二月にも宮城県内のスーパーなどでも偽一万円札二枚を使ったといいます。

 札幌地裁は、「通貨に対する公衆の信用が著しく害された」と断じました。「通貨偽造および同行使の罪」は、無期懲役または三年以上の懲役という重い刑です。

■釣り銭とれ

 全国的に出回った偽一万円札の記番号は、十数種類。偽造組織が一括して製造し、暴力団がいろんなルートで売りさばいたとみられています。

 「年末年始の神社など人で混雑しているところで使え」「女の店員のところを狙い、釣り銭をだましとれ」

 東京・浅草の浅草寺の露店で元日に偽一万円札を使ったとして逮捕された暴力団稲川会系三本杉一家幹部の箕輪秀樹容疑者(34)は、東京・渋谷区円山町の本部事務所に傘下の組長ら約二十人を集め、こう具体的に指示していたといいます。

 タクシーの支払いに偽札を使ったのは、横浜市中区、指定暴力団双愛会系組員の小谷俊明容疑者(27)。仲間にタクシーで使わせ、釣り銭は小谷容疑者が七、仲間に三の割合で分けたとしています。

■偽札の値段

 箕輪容疑者が傘下の組長らに渡した偽札は計数百枚とされています。同容疑者から「偽札三百三十枚を買った」と供述している三本杉一家山岸組組長、山岸義幸被告(63)は、偽札一枚を三千円で購入しました。

 今回、実刑判決を受けた鈴木被告の初公判(三月十七日)で、検察側は「昨年十二月暮れ、知人の組員から偽札二百枚を四十万円で買った」と一枚二千円だったことを明らかにしました。

 パソコンやカラーコピー機などの進歩にともない、愛知県内の小学生が偽一万円札を偽造して文房具店で使おうとして補導されるといった偽札事件も急増しています。しかし、大半の偽札は暴力団の資金源になっていたことが浮き彫りになっています。


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