2005年7月17日(日)「しんぶん赤旗」

「つくる会」教科書 子どもに渡せない

母 立ち上がる

採択めぐり東京・杉並


■“戦前にあと戻りするよう”

■知らせるビラ14万枚配布

 侵略戦争を正当化する「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書(扶桑社発行)をめぐって緊迫している東京都杉並区では、幅広い区民でつくる「杉並の教育を考えるみんなの会」を中心に市民・保護者・教師が連携して、「つくる会」教科書の採択に反対する運動を活発に繰り広げています。小・中学生を持つ母親たちが「教科書を読む会」に参加し、「こんな教科書を子どもたちに渡すわけにはいかない」と立ちあがっています。


 同区では前回、二〇〇一年の教科書採択のとき、五人の教育委員のうち二人が「つくる会」教科書を支持。三人がほかの教科書を推し、きん差で扶桑社は不採択に。その後、自民・公明・民主などが与党となっている山田宏区長は扶桑社を推さなかった一人である教育長を入れ替えています。

■他社と読み比べ

 「教科書を読む会」は今年四月から始まりました。毎回、元教員や母親たちなど十人程度が参加。お茶を飲みながら、「つくる会」教科書を他社の教科書などと比較して読み、歴史の事実を学んだり、疑問を出し合ったりしています。

 中学二年生と小学五年生の子を持つ女性(46)は、PTA活動を通じて知り合った知人に誘われて「読む会」に参加するようになりました。

 「つくる会」の歴史教科書に「日本人はすごいとばかり書いていて、おかしい。アジアの人たちのことをべっ視している感じ。日本が戦争をしたことがよかったみたいに書いている」と思いました。「教育勅語についても詳しく書いていて戦前の復活のよう。これが検定を通ったことにびっくりしました」といいます。

 「子どもたちに歴史の真実を伝えたい。そのために何かしなければ」と採択反対の宣伝に参加したり、周りの人にビラを渡して話したりしています。

 中学生から大学生まで三人の子を持つ中村ひろみさん(49)は「つくる会」の公民教科書が憲法九条は押しつけられたもので、変えるべきだという書き方をしていることに驚いたといいます。「戦争を不安に思う子どもたちに日本は憲法九条があるから大丈夫といってきました。こんな教科書で教育されたら子どもはどうなるのかと思います」

■教育委に申入れ

 「つくる会」教科書の採択を危ぐする区民らは教育委員会への申し入れなどを活発に展開。杉並区と友好都市である韓国ソウル市・瑞草区の区長らを招いてのシンポジウムも開きました。教職員組合も、全教加盟の都教組杉並支部と日教組系の杉教組、都高教第三支部が共同して集会を開くなど、一致協力して運動しています。「みんなの会」は連日、駅頭宣伝に取り組んでいます。「つくる会」教科書の内容をわかりやすく知らせるビラ十四万枚を配布しています。

■おとなの責任と

 中村さんはいま、中学校のときの社会科の先生に「歴史は過去のことから、これからどうやっていい世の中をつくっていくかを学ぶ道しるべなんだ」といわれたことを思い出しています。「『つくる会』の教科書は歴史から学ぶどころか、戦前にあと戻りするようなもの。これが使われたら国への忠誠心を植えつける教育にされてしまいます。私たちの声で不採択にしなければ。おとなの責任だと思います」

 採択を決定する教育委員会は八月四日。「みんなの会」では八月一日に区庁舎前での集会を予定しています。


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